September 2018  |  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

デジタル・ゲームデー・プログラム

試合を観に行くと、会場でよく「ゲームデー・プログラム」を配っていたり売っていたりしますよね。当日の対戦相手の戦績とか選手情報などが整理されているやつです。 

でも、あれってなかなか試合会場でじっくり読む気にもなりませんよね。試合前はいろいろ施設内を見て回ったり、食べ物や飲み物を買いに行ったりで忙しいです。で、試合観ている間に何だか邪魔になって「今度じっくり見よう」と思って(絶対見ないけど)カバンの中にしまったり(結局捨てるはめになる)、シートの下に捨てたりってことになりがちです。環境保全的にも良くないです(笑)。 

そうしたら、NHLニューヨーク・アイランダーズから「デジタル・ゲームデー・プログラム」なるものがメールで送られてきました。


読んで字のごとくで、「ゲームデー・プログラム」のオンライン版です。かなりユーザ・フレンドリなインターフェイスになっていて、画面上部のメニューボタンや画面下部にあるサムネイルをクリックすればサクサク読み進めて行くことができます。


これなら、試合に行く前にじっくり読めますし、ゴミも増えないし、紙媒体+アルファの露出という意味から協賛企業も喜ぶでしょう。

最後の白人スポーツ?

先週、クライアント(日本から来た大学生と教授)とNY視察を行っていたのですが、MSGでのNBA(ニックス)とNHL(レンジャーズ)の試合を2夜連続で観戦する機会がありました(最近は広い意味のスポーツ界の人材育成という意味で、大学生向けの視察学習体験ツアーを行っています)。また、これに合わせてMSGのアリーナ視察も行ったのですが、「灯台下暗し」というか、歩けばオフィスから10分くらいのMSGですが、意外と知らないこともたくさんあり、「目からうろこ」といった感じでした。

まずMSGですが、アリーナ自体が9階建てのビル構造になっているんですね。しかも、MSGはペンシルバニア駅という長距離電車(Amtrak)が止まる東海岸で乗降客が最も多い駅の真上に位置しています。例えるなら、新宿駅の真上に9階建てのアリーナが立っているようなイメージです。

ニックスやレンジャーズの試合が行われるアリーナ(収容人数約1万8000名)は5階より上の部分が使われており、その直下にはWaMuシアター(金融機関のWashington Mutualが命名権を持つ。同5600名)があり、アマチュアボクシングの試合や、スタンドアップ・コメディー、NBAドラフトなどもここで行われます。MSGでは年間400のイベントが開催されるということで、アリーナとMaMuシアターが同時並行で使われることも珍しくないらしいのですが、両者は完全防音構造になっているので、例えば昨年はアリーナでACDCのコンサートが、シアターでシルク・ドゥ・ソレイユが同時並行で行われていたそうですが、苦情は全くなかったそうです。

アリーナは主にニックス(NBA)、リバティー(WNBA)、レンジャーズ(NHL)がホームアリーナとして用いているほか、大学バスケなども用いています。バスケとアイスホッケーが併用するということで、リンクの管理をどうしているのか疑問に思う方もいるかと思いますが、基本アイスリンクは張りっぱなしで、その上にバスケのコートを設営するんだそうです。

確か、アイスリンクを張るのに12名のスタッフで18〜20時間かかるといっていました。いちいち氷を溶かしていると次のイベントに間に合わないので、リンクの張替えは年間5回くらいしか行わないということです。面白かったのは、絶対氷を溶かさないとできないイベントが1つだけあるということ。何だと思いますか?

実は、ドック・ショーなんだそうです。嗅覚が鋭い犬は、氷があるとその上を歩こうとしなかったり、或いは氷を掘り起こそうとしてショーどころではなくなってしまうんだとか。

まあ、こんな解説を聞きながらMSG視察を終えた後で、NBAとNHLの試合を観戦したのですが、連夜で観戦すると前の試合のイメージが残っているので、会場の設営の違いとか、観客層の違いがよく分かります。

会場の設営で言うと、バスケコートよりアイスホッケーリンクの方が広いので、観客動員数はバスケが最大になります。それと面白かったのは顧客層で、NBAは選手も黒人が多いですが、観客も黒人が多く、ストリート文化を大きく受けているのがよく分かりました。一方のNHLは選手も白人ばかりですが、観客も白人ばかり。「最後の白人スポーツ」といった印象でした。MLBもNFLも観客にはいろいろな人種が混ざっているのが普通で、ここまで白人ばかりというのは4大スポーツでは他に類を見ないですね。

それと、ちょうどNFLタンパベイ・バッカニアーズのチアリーダー小島さんが、元ダラス・カウボーイズのチア檀上さんとNYに遊びに来ていたので、ツアーにも顔を出してもらいました(小島さん、檀上さん、ありがとうございました)。最後はお約束の記念撮影です。美女に挟まれていささか緊張してます(左が檀上さん、右が小島さん。3人で信号機のようです)。

コヨーテス売却問題のメッセージ

昨日のポストでコヨーテスが最終的にMLBに売却されることが決まったことに触れました。

この辺の経緯は、「コヨーテスの移転問題が決着」でも触れましたが、もともとこの買収案件にはNHLに嫌われているRIMのCEO、ジム・バルシリー氏に加え、NBAシカゴ・ブルズとMLBシカゴ・ホワイトソックスのオーナー、ジェリー・レインズドルフ氏と、別の投資家グループIce Edgeが買収に名乗りを上げ、三つ巴の様相を呈していました。しかし、レインズドルフ氏とIce Edgeが「シーズン開幕に間に合わない」という理由で相次いで買収提案を取り下げ、慌てたNHLが入札期日ギリギリに自ら買収者に名乗りをあげ、バルシリー氏との直接対決に発展。しかし、最終的に両者の買収提案は破産裁判所により却下されてしまいました。

結局、バルシリー氏は嫌気がさしてしまったのか、再入札には参加せず、最終的に唯一の買い手となったNHLへの売却が決まった形になったわけです。

それにしても、バルシリー氏の買収提示額は2億1250万ドル、NHLの買収額が1億4000万ドルですから、コヨーテスのオーナーであるジェリー・モイズ氏にしてみれば、差額の7250万ドル(約70億円)が目の前から消えていった感じでしょう。NHLが横やりを入れてなければ、バルシリー氏にチームを売っていたわけですから。

これだけ見ると、NHLの行為は個人投資家の利益に反するように見えます。これからNHLのチームを買いたいと思っていた投資家は、二の足を踏むかもしれません。なぜなら、買った後でチームを売ろうと思った時に、今回の騒動を見ると「必ずしも売りたい時に売りたい人に売れないのでは??」と思ってしまうかもしれないからです。

NHLもこうしたリスクを承知の上での行動だったと思いますが、NHLが守ろうとしたのはリーグ共存共栄の思想だと思います。金さえ積めば誰にでも売るのではなく、リーグの共存共栄の思想に資する買収でなくてはならないということでしょう。

実際、バルシリー氏は、チームを購入したらカナダ、オンタリオ州ハミルトン市に移転する腹積もりでした。しかし、同市のわずか70km隣には、NHL球団価値でトップだったトロント・メイプルリーフスが本拠地を置いています。移転が実現すれば、マーケットの食い合いになることは明らかでした。フェニックスにアイスホッケーチームを置くのは、日本でいえば沖縄にアイスホッケーチームがあるようなイメージですが、マーケットを食い合って縮小均衡するよりは、是が非でもフェニックスにチームの残して置きたかったのでしょう。たとえそこが灼熱の地であろうと、その方がNHL全体としてのパイは大きくなるからです。

ただし、今回のNHLの判断が絶対的な正義かというと、そうも言いきれないのは確かです。リーグにフランチャイズ移転を審査する一定の権利は認められていますが、何をやってもよいというわけではありません。これは、「合理の原則」(Rule of Reason)に則った司法審査の対象になり、「競争抑制的側面」と「競争促進的側面」を比較して、前者が後者より大きい場合は違法となります。

ですから、今回の件もバルシリー氏もしくはモイズ氏はこの「合理の原則」を盾に裁判所に訴えるという手は残っていたはずです。しかし、チャプター11申請の間隙をぬってチームを買収しようとしたバルシリー氏にしてみれば、最初から合理の原則では勝ち目がないことが分かっていたのかもしれません。また、モイズ氏も、裁判でチーム売却が長引いて赤字を垂れ流すよりも、売れるうちに売ってしまえという、ある意味「損切り」のような感じだったのかもしれません。

いずれにしても、今回のコヨーテス売却問題からは、チームの利益よりもリーグ全体の利益が優先するというNHLのメッセージが読み取れます。

2009年NHL球団価値ランキング

先日、フォーブス誌が今年のNHLの球団価値ランキングを発表しました。NHL平均は2億2300万ドルで、前年比で300万ドルの増加。トップはトロント・メイプルリーフスの4億7000万ドルでした。



今年はまだNBAは発表されていないのですが、NFLの平均が10億4300万ドル、MLBが4億8190万ドルですから、ざっくりみるとNHLはNFLの4分の1、MLBの半分くらいの球団価値ということになります。

ちなみに、最下位は今年5月にチャプター11を申請したフェニックス・コヨーテスでした。

コヨーテスは結局NHLが一旦買収することで落ち着き、今月破産裁判所がリーグによる買収を承認したばかりです。買収額は1億4000万ドルでしたから、このフォーブスの球団価値はおおむね正確だと言えるかもしれません。NHLは年内にもフェニックス残留を条件に売却先を探すようですが、これは以前MLBがモントリオール・エクスポズを買収してワシントン・ナショナルズ誕生まで一時保有した形と似ていますね。

【関連情報】
NHL Team Valuations(Forbes)
Bankruptcy judge approves sale of Coyotes to NHL(USA Today)

コヨーテスの移転問題が決着

5月5日に連邦破産法第11章(チャプター11)を申請後、チームの買収・移転を巡って激しい攻防が続いていたフェニックス・コヨーテスの問題にようやく決着がつきました。

破産裁判所は、6月にバルシリー氏による買収・移転提案は「Boba-fide Dispute」(誠実な議論)を欠くものだとして、チーム買収を認めず、再度入札をやり直すように指示していました。NHLはこの後すぐに理事会を開催して同氏の買収提案を却下し、バルシリー氏はNHL理事会の決定は無効と泥仕合を展開していました。

その後、バルシリー氏に加え、NBAシカゴ・ブルズとMLBシカゴ・ホワイトソックスのオーナー、ジェリー・レインズドルフ氏や、別の投資家グループIce Edgeが買収に名乗りを上げ、三つ巴の様相を呈していました。しかし、レインズドルフ氏とIce Edgeが相次いで買収提案を取り下げ、慌てたNHLが入札期日ギリギリに自ら買収者に名乗りをあげ、バルシリー氏との直接対決に発展していました。と、これが今までの経緯です。

注目された破産裁判所の判断ですが、バルシリー氏とNHLの買収提案を吟味した破産裁判所は、結局両者の買収提案を却下しました。“元の木阿弥”に戻ってしまったわけです。

経営破たんしたチームの移転にリーグの権限が及ぶのかが争点だったのですが、破産裁判所は「破たんしたからと言って何から何まで破産裁判所が勝手に資産整理できるわけではなく、NHLの利害を適切に保護しなければならない」とし、「今回のケースではNHLによるチームオーナー決定権とフランチャイズ移転の審査権を奪う法的根拠は見当たらない」としてNHLによるバルシリー氏買収案却下を支持したのです。一方、リーグによる買収提案についても、債権回収計画に不備があるとしてこれを却下しました。

結局、シーズン開幕直前までドタバタした挙句、結局何も変わらなかったという不毛な結末となりました。とはいえ、バルシリー氏の買収提案を阻止したという意味では、NHLの実質的な勝利と言えると思います。

泥仕合の続くコヨーテス移転問題

先日「NHL理事会はアリゾナ残留案を承認」にて、全月末に開催されたNHL理事会でMLBシカゴ・ホワイトソックスとNBAシカゴ・ブルズのオーナーであるジェリー・レインズドルフ氏のアリゾナ残留を基本とするコヨーテス買収案が承認された一方、ジム・バルシリー氏による移転を前提とした買収案が却下されたことをお伝えしました。

NHLは、早速破産裁判所にバルシリー氏の買収提案を正式に却下するように求めたのですが、バルシリーさんも負けていないようです。その数日後に逆に破産裁判所に対して、NHL理事会の決定の根拠を調査することを認めるとともに、NHL理事会の決定に関わらず、自分のチーム買収案を承認するように求めたのです。

NHLが10月頭にシーズンが始まることを考えると、開幕まであと1ヶ月ちょっとしかない今の時点でチームを移転することは事実上不可能のようにも思えるのですが、このバルシリーさんは諦めないですね(笑)。

恐らく、レインズドルフ氏の買収案で決まりになるとは思いますが、決着するまでもう少し時間がかかりそうです。

【関連情報】
NHL asks court to dismiss Balsillie's bid for Coyotes(USA Today)
Balsillie wants to probe NHL's rejection of him(USA Today)

NHL理事会はアリゾナ残留案を承認

このブログでも何度かお伝えしているNHLフェニックス・コヨーテスの買収問題ですが、7月29日に開催されたNHL理事会で、RIM共同経営者ジム・バルシリー氏や、MLBシカゴ・ホワイトソックスとNBAシカゴ・ブルズのオーナーであるジェリー・レインズドルフ氏等による3つの買収提案が審議され、結果的にチームの米アリゾナ州残留を約束するレインズドルフ氏の買収案が満場一致で承認され、移転を前提としたバルシリー氏の提案は却下されました。

この理事会による審査は、破産裁判所の求めに応じて実施されたものですが、NHLがバルシリー氏の提案を認めるわけがないですから、まあ予想通りの動きと言えそうです。

それにしても、バルシリー氏の買収提示額は2億1250万ドルと、1億4800万ドルのレインズドルフ氏を大きく上回るものだっただけに、NHLはリーグ規約が認めているオーナーシップ審査権を最大限活用してその力を誇示した形になりました。NHLコミッショナーのゲーリー・ベットマンは、「審査は移転の有無を問わず、純粋にオーナーとしての適格性が審議されたもの」という模範解答的な答弁をしていますが、リーグによる審査権を破産裁判所に認めさせた時点で、勝負あったと言えます。

これに対して、現オーナーのジェリー・モイズ氏は破産裁判所に「NHLの審査結果は無効だ」とする異議申し立てを行っています。異議申し立ての根拠は現時点で明らかになっていませんが、この案件は落ち着くまでにもう少し時間がかかりそうです。

【関連情報】
Reinsdorf bid for Coyotes approved; Balsillie rejected(USA Today)
Owner Moyes challenges Reinsdorf's bid for Coyotes(USA Today)

破綻したアイスホッケーチームなら強奪できるのか?(下)

日経ビジネスに最新コラムがアップされました。

NHLフェニックス・コヨーテスのチャプター11申請下の移転騒動で、注目の破産裁判所の判断が下されました。結論からいうと、今回、移転を前提としたチーム買収は認められませんでした。買収提案をしていた、ブラックベリーを開発するRIMの共同経営者、ジム・バルシリー氏にとっては“三度目の正直”も叶わなかった形となりましたが、まだ買収・移転の可能性が閉ざされたわけではなく、この問題もう少し尾を引きそうです。

■破綻したアイスホッケーチームなら強奪できるのか?(下)
 〜バルシリー氏、またもや敗戦だが・・・


 前回のコラムでは、経営破たんした北米アイスホッケーリーグ(NHL)に所属するフェニックス・コヨーテスの米連邦破産法11条(いわゆる「チャプターイレブン」)申請が、チーム売買におけるリーグ機構による買い手審査をかいくぐる“抜け道”になってしまう恐れがあることを書きました。この件については、対岸の火事のように感じる読者も少なくないと思います。しかし、実は、日本のスポーツ界にとって、あまり他人事ではないのです。

 2004年、大阪近鉄バファローズが実質的に経営破たんしてオリックス・ブルーウェーブに吸収・合併されたことをご記憶の方も少なくないと思います。この際、堀江貴文社長(当時)が率いるライブドアがバファローズ救済(買収)に名乗りを上げたものの、「私の知らない人は入れるわけにはいかない」という球団オーナーの発言もあって、バファローズ買収は門前払いされた形になりました。

 しかし、今回のコヨーテスの一件でチーム移転が認められてしまえば、リーグ機構による移転の審査機能は有名無実化します。多少強引な例えかもしれませんが、もしこの裏技が2004年の日本野球界再編騒動で使われていたら…。つまり、「大阪近鉄バファローズが民事再生法を申請していたら、大阪ライブドア・バファローズが誕生していたかもしれない」という話になってしまうのです。

 その注目の判決が6月15日に下されました。(続きはこちら
 

破綻したアイスホッケーチームなら強奪できるのか?(上)

日経ビジネスに最新コラムがアップされました。

今回は、先日「コヨーテスの破産申請が投げかけるフランチャイズ移転への波紋」でもお伝えした、NHLフェニックス・コヨーテスのチャプター11申請について書いています。クライスラーやGMのチャプター11申請は日本でも大きく報道されていますが、コヨーテスの破綻については、日本ではあまり報道されていないようですね。でも、日本のスポーツ界にとっては、実はこの件はあまり他人事ではないんです。

以前、近鉄バファローズが実質的に経営破たんしてオリックスに吸収されました。この際、ライブドアがバファローズ救済(買収)に名乗りを上げたものの、某氏の「私の知らない人は入れるわけにはいかない」という発言もあって、球団買収については門前払いされました。その後、新球団の設置が決まり、楽天とライブドアの一騎打ちになったのは皆さんご存知の通りです。

この発言の品位はともかくとして、チームの売買について、リーグ機構が審査するというプロセス自体は理にかなっているものだと思います。リーグ全体の共存共栄を考える視点と、一球団の発展だけを考える視点は異なります。球団売買は、当該球団の売り手と買い手の都合が優先されますが、それがリーグの共存共栄に反するというケースもあるわけです。その意味で、リーグ機構が球団売買を審査するプロセスには、一定の合理性が認められると思います。

今回のコヨーテスの一件は、このリーグによる球団買収審査機能が及ばない“抜け道”になってしまう可能性があり、米スポーツ界ではかなり注目されています。

■破綻したアイスホッケーチームなら強奪できるのか?(上)
 〜リーグが怯えるチャプター11という裏技

 最近、日本でもニュースなどで「チャプター11(イレブン)」という言葉を耳にする機会が増えていると思います。正式には「米連邦破産法11条」と呼ばれるこの法律は、会社の再生を目的としたもので、日本の民事再生法に近いイメージです。原則として、事業を停止することなく会社の再建を図ることに主眼が置かれており、この点で同じ連邦破産法でも会社を清算することが前提となる7条(いわゆる「チャプター7(セブン)」)とは異なります。ちなみに、こちらは日本で言えば破産法に相当するイメージでしょう。

 米ゼネラル・モーターズ(GM)やクライスラーの例を見ても分かるように、チャプター11の申請は会社再建プロセスでは非常に一般的な手続きと言えるでしょう。前回のコラム「世界最大エアラインを引きつけたVIP獲得戦略 クラブシートの魔力(下)」でも触れましたが、米航空業界などは一時大手7社のうち5社が経営破たんしてチャプター11の適用を申請するという事態に陥っていました。

 チャプター11の申請は、米スポーツビジネス界にとってもそれほど珍しいことではありません。実は、今年5月5日に北米アイスホッケーリーグ(NHL)に所属するフェニックス・コヨーテスがチャプター11を申請し、経営破たんしました。これ自体、NHL機構はおろか、チーム職員にも寝耳に水の発表だったそうですが、関係者をもっと驚かせたのは、破たん後のチーム買収に基本合意している人物の名前でした。

 売却先が決まることはいいニュースのはずです。しかし、その名はジム・バルシリー氏。携帯端末「ブラックベリー」を開発するリサーチ・イン・モーションの共同経営者で、億万長者としても知られるカナダ人です。そして彼は、NHL関係者が顔も見たくないと思うほどの過去を持つ人物だったのです。従ってNHLはこの売却を認めず、米ナショナル・フットボールリーグ(NFL)や米大リーグ機構(MLB)、米プロバスケットボール協会(NBA)もこの売却に反対する共同声明を発表しており、コヨーテスのチャプター11申請は、米4大メジャースポーツリーグを巻き込んだ大騒動に発展しています。

 灼熱の地アリゾナに生まれたアイスホッケーチームに、一体何が起こったのでしょうか?(続きはこちら

コヨーテスの破産申請が投げかけるフランチャイズ移転への波紋

タイトルだけ読むと意味が分からない方がほとんどだと思いますが(笑)、NHLフェニックス・コヨーテスが5月5日に連邦破産法11条(チャプター11)を申請し、経営破綻しました。チームの経営破綻自体はそれほど珍しいことでもないのですが、今回注目を浴びているのは、破産申請時に新オーナーJim Balsille氏への売却契約が結ばれていた点です。

チームの引き取り先が決まっているのは嬉しいニュースのはずなんですが、実はこのJim Balsille氏はNHLが顔も見たくないような?問題アリの人物なのです。というもの、実は同氏は過去に同じくNHLのナッシュビル・プレデターズやピッツバーグ・ペンギンズの買収を試みたことがあり、その際「フランチャイズを移転しない」ことを条件にチーム買収の許可をNHLから受けていました。しかし、契約書にサインする土壇場になって「やっぱり移転できないなら買わない」と前言撤回を1度ならず2度までも繰り返した人物だからです。同氏はカナダへのチーム移転を希望しています。

で、今回問題なのは、通常時とは異なる破産法申請下でのチーム売買であるという点です。通常時なら、リーグ機構の許可なくフランチャイズの移転を行うことはできませんが、破産法の支配下にある場合、破産裁判所が「株主利益の最大化」の原則の元で(例えリーグが異を唱える移転推進者であっても)売却先を決めるため(通常は買収に最高額を提示した者が選ばれる)、面子をつぶされたNHLが忌み嫌うJim Balsille氏であっても、お金次第で(リーグの審査を受けずに)オーナーになれてしまう可能性があるのです。

しかし、もしJim Balsille氏にチームが売却されてしまえば、「破産法を申請すればリーグの許可を受けずにチーム移転ができる」という悪しき前例になってしまうのです。そのため、NHLはこれを全力で阻止する構えを見せており、NBA、NFL、MLBもNHLを支援する共同声明を発表しています。
123>|next>>
pagetop