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米国大学スポーツの不都合な真実

BROKE(なぜスポーツ選手は一文無しになるのか?)」などでも触れましたが、ESPNの良質ドキュメンタリー「30 for 30」はテレビでまとめ撮りしておいて時間がある時に見ています。最近見てとても面白かったのが「One and not done」。

 

これは、現ケンタッキー大学バスケ部ヘッドコーチJohn Calipariのライフストーリー。CalipariはNCAAバスケ界で最高報酬をもらうHCの一人で、その年俸は800万ドル(約8億8000万円)。ケンタッキーといえば大学バスケの名門で、全米ランキング1位になることも珍しくありません。そんな名門バスケ部のHCであるCalipariは「プロになる可能性があるなら、大学なんて卒業する必要はない」と公言する米大学スポーツ界の異端児です。

 

少なくとも「教育がスポーツに優先する」という建前のあるNCAAでは、彼の発言はPolitically Correctではありません。しかし、実質的に米国ではバスケとフットボールで大学がプロのマイナーリーグ(人材育成機関)となっており、特に「Power 5」と言われる上位カンファレンスの実態はプロスポーツそのものです。HCはプロ同様に勝敗だけで評価され、勝てばインセンティブでボーナスも増えます。口には出さなくとも、本音ではCalipariと同じように考えている勝利至上主義のHCは少なくないでしょう。

 

番組の中でも特に衝撃的だったのは、部員に2ドルの宝くじを実際に手に取らせ、「いいか、普通の人間は2ドルの宝くじで当たることのない夢を買う。でも、お前たちは宝くじを買う必要はない。なぜなら、お前たち自身が宝くじそのものだからだ。それも、今手にしているくじよりもよっぽど確率の高い。この大会で活躍すれば、お前たちはプロになれる。そうすれば、普通の人が稼げない大金を手にできるんだ」と発破をかけるシーンです。

 

トップアスリートの中には、スラムやプロジェクト(低所得者用の住宅街)出身の選手も珍しくありません。彼らが貧困の連鎖から抜け出せるのは、スポーツしかないのです。ある選手が大学1年で活躍後、2年目も大学に残りたいとCalipariに相談しに来た時、「本気で勉強したいなら、大学なんて後からでも卒業できる。でも、プロになれるのは今しかない。馬鹿なこと言わずにプロに行け」と選手を追い返してしまったのです(結局彼は大学を中退してNBA選手になった)。

 

Calipariが周りに敵を作ることを恐れずにこう喝破できるのは、彼自身の生い立ちにあるのかもしれません。彼はイタリア移民の3世で、移民1世の祖父は炭鉱で働き(肺病で若くして亡くなる)、2世の父親は炭鉱や飛行機の燃料入れなどの職を転々として貧乏暮らしだったそうです。彼自身が貧困から抜け出すために選んだ手段がスポーツだったのです。彼の場合、それは選手としてではなくコーチとしてでしたが。

 

個性が強いCalipariの評価は分かれます。Calipariが嫌いな人は調和を乱すトラブルメーカーと評します。しかし、教え子たちからは絶対の信頼を得ている毀誉褒貶の激しい人物。彼は教え子に対しては一切手を抜かず、高校までスター選手であっても本音で罵倒し、挑戦し、能力以上の存在に引き上げていくのです。そして、数々のNBAプレーヤーを世に輩出しています。

 

NBAは2005年からドラフトに年齢制限を導入し、19歳(高校を卒業して1年経過)にならないとドラフト指名できないルールを導入しました。当初、ルール上有資格になるのは19歳とはいえ、大学に進学した選手は卒業までプレーするのが常識とされていました。しかし、この常識を覆したのがCalipariでした。選手に大学で1年プレーさせたあと、躊躇なくプロ入りさせて行ったのです。これを俗に「One and done」(1年で終わり)と言います。

 

彼は2009年からケンタッキーのHCとして指揮を取っていますが、名門大ですから全米中から選りすぐりの人材が集まります。彼らをプロに通用するレベルまで引き上げ、バンバンNBAに送り込んでいるのです(実際、昨年までの8年間でケンタッキーから48名のNBA選手を送り出している)。そんな彼の指導法は、“教育を隠れ蓑にしたビジネス”として度々批判されるNCAAの欺瞞を象徴する行為として糾弾されますが、彼はそれを一ミリも気にする素振りを見せません。

 

彼が気にするのは、選手の将来だけです。バスケットボール選手としての能力を最大に引き上げることこそが、彼らの人生に最も大きな変化をもたらすことだと確信しているのです。彼は育て上げた選手を惜しげもなく在学中にNBAに送り込んでいきますが、そんな彼の指導を求めて全米から選手が殺到しているので、批判にさらされながらも、このモデルは回り続けています。ケンタッキー大バスケ部は今や完全にNBAのマイナー球団になっています。

 

番組内では、Calipariの教え子たちの多くがインタビューに答えていますが、彼らは「本気で取り組むことでどんな困難でも打開できることをCoach Caliから学んだ」と異口同音に答えているのが印象的でした。心からそう思っているようでした。そして、プロ志望の学生に形だけ単位を整えて大卒資格を手渡すより、こうした揺るぎない信念が得られる方がよっぽど意味のある教育と言えるのではないかという印象を私は持ちました。

 

このドキュメンタリーのタイトルは「One and not done」(1年で終わりじゃない)。これは、現在のNCAAに対する痛烈な批判であるようにも見えます。

 

現在、NBAは年齢制限を撤廃するためにNCAAと意見交換をはじめました。これは、今年発覚したNCAAバスケ界のスキャンダルにより生まれた動きです。プロ入りが有望視される高校生のトッププロスペクトに、有名大学やアパレルメーカーなどから賄賂が贈られていたことが明らかになり、FBIが捜査を開始したのです。

 

米国大学スポーツで収益を生んでいるのは、バスケとフットボールだけなのですが、これは両競技にはプロリーグ(NBAとNFL)のドラフトに年齢制限があるためです。そのため、高卒で即プロ入りできないため、ある意味で大学スポーツの利権が守られてきたのです。

 

しかし、NBAで年齢制限が撤廃されれば、トップ選手は大学に行かずに直接NBAに行くことになるでしょう。NBAもこれを見越して、今年更改された労働協約では傘下のマイナーリーグであるGリーグの選手待遇を改善していますし、最近はメキシコなど海外にもGリーグ球団を拡張する動きを見せています。これは、年齢制限撤廃後のNCAAとの人材獲得競争を見越した動きの様にも見えます。

 

大学スポーツのあるべき姿とは?」でも書きましたが、来年7月には18-22歳を対象にしたプロフットボールリーグ「Pacific Pro Football」も開幕する予定です。今後、今まで稼ぎ頭だった2競技でNCAAとプロリーグが直接的に競合していくことになるわけですから、米国における大学スポーツの在り方も変わっていくのではないかと思います。

米学生スポーツのアマチュア規定は幻想?

ルイビル、女子は残念ながら負けちゃいましたね。やはりUCONNの強さは圧倒的でした。ただ、決勝でも30点も点が開くとちょっと興ざめしますね、正直。

さて、日経ビジネスに最新記事がアップされました。古くて新しい話題ですが、「NCAAは学生選手を搾取して巨額の利益を上げている」「NCAAは学生選手にも適切な対価を支払うべきだ」とする批判は以前からありました。今年の全米バスケットボールトーナメント中に、そのような意見を後押しすることになる“事件”が起こりました。バスケファンの方にはご存知の方も多いかと思いますが、ケビン・ウェア選手の怪我です。

さらに、男子が女子決勝戦の前日に優勝を決めたルイビルですが、そのご褒美に女子決勝を大学とコーチがスポンサーして応援に駆け付ける(男子決勝はアトランタ、女子はニューオリンズだったので、飛行機での移動が必須)という粋な計らいがあったのですが、これをNCAAが認めませんでした。何でも、これが学生選手への「不適切な利益供与」というのです。

一体、NCAAは誰のために何を守ろうとしているのでしょうか?果たして、NCAAが規定するアマチュアリズムはもうすでに幻想なのでしょうか?

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■米学生スポーツのアマチュア規定は幻想?
 〜「学生選手にも報酬を」という意見が急増する背景(上)

 学生スポーツは巨額のマネーを動かします。以前、「なぜ米国は「スポーツバカ」を戒めるのか(下)〜大学スポーツが大リーグより儲かるカラクリ」でも解説しましたが、全米大学スポーツを統括している全米大学体育協会(NCAA)や1200以上ある所属大学が生み出す米国大学スポーツ全体の市場規模は約80億ドル(約8000億円)に達すると言われており、米メジャーリーグ(MLB)や英プロサッカーリーグのプレミアリーグを凌駕します。 

 (中略) このように、NCAAは「学生スポーツ」を標榜していますが、その実態はビジネスです。一方、先のコラムでも指摘したようにNCAAは、半世紀以上も前に「学生選手(Student-Athlete)」という魔法の言葉を作り出すことに成功し、「学生の本分は勉強であるため、彼らはスポーツ選手である前に学生である」という建前から、プロ選手のように報酬を得ることを固く禁じています。  

 しかし、半世紀以上も前に作られたこの「アマチュアリズム」は、NCAAがビジネスとしてその規模を拡大するにつれて、実態と合わなくなってきています。多くの面で、広く一般に許容されている社会的・法的常識との間に不整合を生み出しています。  

 これにより、「学生選手にもきちんと報酬を払うべきではないか」とする意見が最近急増しています。こうした意見自体は半世紀前からもあったのですが、その存在感が近年特に高まっているように感じます。果たして、NCAAが規定する「アマチュアリズム」はもう幻想なのでしょうか?

 今年の「3月の狂気」の全米トーナメントにて、「学生選手にも報酬を払うべき」という意見を強くサポートすることになる“事件”が起こりました。

(続きはこちら
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ルイビルの熱狂(現地報告)

いやー、昨日のNCAAバスケ男子決勝は凄い試合でしたね。ミシガンも健闘しましたが、最後は地力に勝るルイビルが押し切った感じです。

ところで、うちでインターンしたまきまきがちょうど今ルイビルの博士課程にいるので、現地レポートをお願いしたら、以下の動画を送ってくれました。
 

なんでも、大学キャンパス内には午後4時以降は立ち入りできないようになっていて(試合開始は午後9時半)、しかも予めポリスが大学の寮の近くの一区画を仕切って、「騒ぐならここ」とスペースを用意していたんだそうです。

5時間以上前に入場制限するなんて、タイムズスクエアの大晦日のカウントダウン並みです(笑)。

今晩は女子決勝(ルイビル大は男女ともに決勝進出)。相手は強豪コネチカットですが、女子も優勝したらまたえらい騒ぎになるのは間違いないでしょう。男女同時優勝になれば、2004年にコネチカット大が成し遂げて以来9年ぶりだそうです。

名門コネチカット大バスケ部が学業不振で来季のMM出場権を喪失

大学バスケットボール界に激震が走っています。名門コネチカット大学バスケ部が、部員の学業不振により来季の全米トーナメント(March Madness)の出場権を失ってしまったのです。

以前、日経ビジネスでも「なぜ米国は「スポーツバカ」を戒めるのか(上) 〜大学バスケ優勝チームが受けた、「学業不振」による厳罰」で書きましたが、NCAAは選手の学業成績をモニターする「アカデミック・パフォーマンス・プログラム」を設置しており、この中で学生の成績や卒業率がNCAAの定める最低ラインを下回った場合、チームに厳しい処分を科すことになっています。

NCAAは、昨年10月、更にこのルールを厳しくし、ポストシーズン参加のための学業成績(APR=Academic Progress Rate)の引き上げを決めたばかりでした。4年平均のAPRが900、もしくは2年平均で930を越えなければポストシーズンでプレーする権利を失うのです。

ハスキーズは、一昨年のリクルーティング違反や昨年の部員の学業不振で3つの奨学生枠(スカラシップ)を失うという非常事態に陥っていたのですが、さらにこの新ルールに引っ掛かり、来季のMM出場権を失ってしまいました。ちなみに、ハスキーズのAPRは4年平均で888.5、2年平均で900.5だったそうです。

ただ、アメリカらしい?と思ったのは、コネチカット大も黙ってペナルティーを受け入れたのではなく、大会収益の放棄などを条件にNCAAに特例措置(ペナルティーの免除)を掛けあっていたところでした。男子バスケの全米トーナメントはNCAAバスケ収入の9割を叩き出すお化けイベントです。そこに名門ハスキーズが出場しないとあっては、その人気に水を差すことにもなりかねません。

しかし、NCAAは今月10日、ハスキーズからの免除要請を却下し、来季の出場権喪失が決まってしまいました。バスケファンとしては残念なニュースですが、NCAAはマーク・エマートがトップになってから矢継ぎ早にこうした改革を推進しています。

NCAAは、見方によっては選手をマクドナルド以下のバイト料で雇って巨額なビジネスを手掛けているわけで、その手法に批判はつきものです。穿って見れば、こうした学業とスポーツの両立は、アマチュアリズムというブランドを守るための戦略とも考えられるわけですが、「やらぬ善よりやる偽善」ではないですが、日本でもこうした取り組みは少し参考にできるのではないかと思います。

【参考情報】

NCAAが究極の“空母クラッシック”を開催

明日、米国は「退役軍人の日」(Veteran's Day)なのですが、NCAAがそれに合わせて究極の試合?を開催します。その名も“空母クラッシック(Carrier Classic)”。

これは、何と航空母艦「USSカール・ビンソン」の上でバスケの公式戦を開催してしまうと言う前代未聞の試みなんです。この空母はオサマ・ビン・ラディンを水葬したことでも知られており、特設コートには7000名の観客を収容できるんだそうです(主に退役軍人の方を招待するようです)。

ちなみに、これがカール・ビンソン君。


何度かこのブログでもお伝えしましたが(「屋外ゲームがちょっとした流行に」「流行する屋外ゲーム(続報)」)、アイスホッケーをMLBやNFLスタジアムでやったり、バスケをテニス会場でやるなど、室内スポーツが屋外で特別試合をやることがここ数年はやっていたのですが、このトレンドもここに極まったという感じでしょうか(笑)。

試合は午後7時からESPNが生中継します。対戦カードはミシガン州立大対ノースカロライナという古豪どうしの対決。雨が降らないことを祈ります。

ちなみに、ESPNは「スポーツ・サイエンス」という番組でこの試合のことも取り上げています。

なぜ米国は「スポーツバカ」を戒めるのか?(下)

日経ビジネスオンラインに最新コラムがアップされました。米国大学スポーツのアマチュアリズムの話(後編)です。

日本ではあまり知られていないかもしれませんが、米国大学スポーツのマーケットは約80億ドルと言われています。これはNFL(90億ドル)に次ぐ大きさで、MLB(70億ドル)を上回り、英プレミアリーグ(約35億ドル)の倍以上の市場規模なんです。

今回のコラムでは、知られざる米国大学スポーツのプロスポーツとは違うビジネスシステムと、それを「アマチュアリズム」というブランディングが陰で支えている現実を解説しています。

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■なぜ米国は「スポーツバカ」を戒めるのか?(下) 
 「学生だから、カネは払いません」〜大学スポーツが大リーグより儲かるカラクリ

 前回のコラムでは、米国の大学スポーツが、学業を怠ると厳しい制裁を受けることを紹介しました。最近でも、全米大学体育協会(NCAA)が学業不振を理由に全米チャンピオンとなったバスケ部の奨学生(スカラシップ)枠を減らしたり、5年以上前の学生の規律違反により名門フットボール部に“死刑判決”にも等しい罰則を科しています。

 なぜ、こうした厳罰が必要なのでしょうか? 本当に「学生の本分である学業をおろそかにさせない」ことが狙いなのでしょうか?

 今回のコラムでは、巨額のマネーが動く米国大学スポーツの「知られざるビジネスシステム」に迫ってみようと思います。

 現在、NCAAには「ディビジョンI」から「ディビジョンIII」までの3つのレベルに1200校以上の大学が加盟しており、23の競技で88の大会が開催されています。その中でも特に有名なものの1つが、前回のコラムでもご紹介したバスケットボール決勝トーナメント「3月の狂気」(March Madness)なのですが、全ての競技を合わせると合計4万人以上の学生選手がNCAAの競技大会に参加していると言われています。

 こうした大会を主催するNCAAの経営規模(2010-2011年予算)は7億5700万ドル(約605億円)です。ただし、これは監督機関であるNCAAに関する予算規模なので、1200以上もある大学の数字は含まれていません。以前、「プロより儲かる大学スポーツ」でも解説したように、スポーツ名門校ともなれば、運動部が稼ぎ出す収入が1億ドルを超えることも珍しくありません。

 米スミス・カレッジ教授(経済学)のアンドリュー・ジンバリスト氏は、所属大学の売り上げも含めた米国大学スポーツ全体の市場規模は約80億ドル(約6400億円)に達すると計算しています。

 NFLの売り上げが約90億ドル(2010-11年)、MLBが約70億ドル(2010年)と言われていますから、米国大学スポーツが作り出す市場規模はNFLやMLBと同等ということになります。また、サッカーの英プレミアリーグの収入(2010-11年)が約22億ポンド(約35億ドル)と試算されていますから、その倍以上の市場規模を誇ることになります。

(続きはこちら
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なぜ米国は「スポーツバカ」を戒めるのか(上)

日系ビジネスオンラインに最新コラムがアップされました。

今回は、NCAAが厳しい罰則を伴う学業規定などを設置・実施することで作り上げる「アマチュアリズム」というブランディングが、どのようにNCAAのビジネスに役立っているのかについてみてみようと思います。

このコラムを書きあげた直後、名門オハイオ州立大学フットボール部の名称ジム・トレッセル監督が辞任したというニュースが飛び込んできました。これは、昨年来騒がれていた部員による不祥事の責任をとったものです。

もともと、現役選手がカンファレンス優勝リングなどを売って不当な対価を得ていたことが判明したという不祥事が発端でした。選手は処分されたのですが、実はトレッセルもこれを知っていたけれどNCAAに報告しなかったというのが辞任に至った理由です。

NCAAは運営はプロスポーツとなんら変わりませんが、選手が給与をもらえない学生選手であるという点で「アマチュア」というステータスを堅持しています。そして、そのために様々な規定を作り、そのブランドを守ろうとしています。

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■なぜ米国は「スポーツバカ」を戒めるのか(上)
 〜大学バスケ優勝チームが受けた、「学業不振」による厳罰

 「野球特待生を容認」

 5月末、日本高校野球連盟がついに議論の的だった「野球特待生」を正式に容認したと報じられました。1学年に5人以内ならば、野球技能に優れた生徒の入学金や授業料を免除していいわけです。

 ただ、罰則規定はなく、特待生の高校における学業成績についても、満たすべき統一された基準は何もないようです。

 ですから、甲子園優勝校が、後になって「野球特待生の学業成績が悪い」と指摘され、厳罰を食らうことはないでしょう。

 しかし、米国の学生スポーツでは、体育協会が選手の学業を常に厳しくチェックし、水準以下だと厳罰を下しています。

 これから、日米のあまりにも違う「学生選手」の学業問題について考察し、それが学生スポーツビジネスにも大きく影響していることを見ていきましょう。

(続きはこちら
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これは凄い!特撮じゃないよね?

目隠しパスくらいなら真似できそうだけど・・・。 


分かりにくいBCSシステムを解説してみる

昨日のブログ「公式シーズンの重みとは?」で、アメリカ人はプレーオフ慣れしているということを書いたのですが、 それに対して読者の方から「なぜ大学フットボールにPOはないんですか?」というご質問を頂きました。

至極ごもっともなご指摘だと思います。そして、実はオバマ大統領を含む多くのアメリカ人が同様の疑問を持ち(オバマさんはPO推進派)、現行のBCS(Bowl Championship Series)システムの分かりにくさに閉口しています。

ちょうどいい機会なので、今日は分かりにくいBCSシステムを解説するとともに、その問題点やPO導入への障害などについて書いてみようと思います。

米国カレッジフットボールでは、公式シーズンが終わった12月から年明けにかけて数多くの「ボウルゲーム」(対抗戦)が実施されます。この中で、特に権威と伝統ある以下の4つのボウルゲームと事実上の優勝決定戦となるBCSナショナルチャンピオンシップを加えた5つの試合は「BCSボウルゲーム」と名づけられています。

1)BCSナショナルチャンピオンシップ(ランキング1位と2位が対戦)
2)ローズボウル
3)シュガーボウル
4)フィエスタボウル
5)オレンジボウル

まあ、全米トップ5のボウルゲームというイメージです。

アメリカの大学フットボール部は地域によって所属するカンファレンス(地域リーグのようなもの)をつくっているのですが、その中でも特に強豪校が集う以下の6つの主要カンファレンス(BCSカンファレンス)があります。

1)ACC
2)Big Ten
3)Big 12
4)Big East
5)Pac 10
6)SEC

で、問題なのは、先のBCSボウルゲームに出場できる10校の決定方法です。主要6カンファレンスの優勝校は自動的に進出が決まるのに対して、残りの4つの枠を残りのカンファレンスに所属する“その他大勢”の大学が争う形になっています。つまり、圧倒的にBCSカンファレンスに所属する大学の方が有利なのです。

BCSカンファレンス所属校なら、1敗してもBCSボウルゲームに出場できる可能性がありますが、それ以外のカンファレンスはまず全勝しないと出場できません。また、仮に全勝しても“味噌っかす”扱いされてしまうのです。

例えば今シーズンは全勝チームがオーバーン大(SEC)、オレゴン大(Pac 10)、テキサス・クリスチャン大(Mountain West)の3校あったのですが、同じ全勝にも関わらず、マイナーカンファレンスに所属するTCUはBCSナショナルチャンピオンシップには出場できず、ローズボウルへの出場に留まりました。

どうしてこんなことになるかというと、そのランキング決定システムが複雑で、かつ勝敗以外の要素も加味されてしまうからです。BCSランキングは以下の3つの投票システムを総合して決定されます。

1)ハリス・ランキング
 チーム・メディア関係者114名で構成される投票パネルが決定

2)USA Todayランキング
 D1所属大学のコーチ63名で構成される投票パネルが決定

3)コンピューターランキング
 6種類のコンピューターランキングを総合して決定

BCSカンファレンスに所属しないTCUのような学校は、公式シーズンの対戦相手がそれほど強くないことを理由に、例え全勝していても、BCSカンファレンス所属校よりランキングが下になってしまうのです。つまり、単なる数字としての勝敗以外の要素が投票で加味されてしまうのです。

実際、こうした方式に異議を唱える人も少なくありません。

BCSナショナルチャンピオンシップでオーバーンがオレゴンを破って優勝を決めた直後に、USA Todayが「オーバーンはあなたにとってチャンピオンと言えるか?」といった投票を行ったのですが、オーバーンがチャンピオンだと思う人は約56%しかいません(EST2011年1月13日午後5時半時点。投票数9569)。

また、最近ユタ州の上院議員、オリン・ハッチ氏がBCSの選出方式は反トラスト法(日本の独占禁止法)に違反するとして、司法省に捜査を求めています。実は、2008年シーズン、ユタ大学は唯一の全勝校だったのですが、マイナーカンファレンスに所属していたため、BCSナショナルチャンピオンシップに出場できませんでした。そんな背景もあります。

じゃあ、PO制を導入したらという意見も当然あるのですが、なかなか一筋縄ではいかないようです。考えられる理由を以下に整理してみます。

1)トーナメントにしても不公平感は残る
例え8校なり16校で優勝決定トーナメントを実施するにしても、結局その参加枠を巡って同じような不公平感は残る。マイナーカンファレンス所属校はやはり全勝しないとトーナメントに参加できない。

2)スケジュールと体力的な負担
8校でトーナメントをするにしても、最大3試合が追加されます。野球やバスケと違って試合での体力的負担の大きく、さらに戦術的な準備が必要なアメフトでは、試合間のインターバルは少なくとも1週間は必要です。試合数が増えれば怪我のリスクも高まります。

3)既得権保有者の抵抗
トーナメントを実施すれば、数多くある現行のボウルゲームへの影響は避けられません。ボウルゲームの位置づけが変わったり、統廃合が起これば、それは収益の変動に直結しますから、その辺の利害調整はものすごく大変でしょう。

さあ、毎年物議をかもすBCSシステムが今後どう進化して行くんでしょうかね?

“3月の狂気”はデューク大の優勝で閉幕

NCAA大学バスケットボールトーナメント(通称“March Madness=3月の狂気”)は、コーチK率いるデューク大がバトラー大を61対59で下し、4度目の全米チャンピオンに輝きました。

いやー、しかし手に汗握る大熱戦でした。15回もリードが変わり、最大の点差も6点(しかも、20秒だけ!)と、40分の試合中、文字通り息つく暇もない大接戦でした。「March Madness On Demand」でアーカイブ映像も見ることができますので、見逃した方は是非見てみて下さい。「今年もMMODに「上司ボタン」登場」でご紹介したBoss Buttonは今年も健在ですので、仕事しながらこっそり見ることもできます(笑)。

(NCAAだけに教育的配慮なのか、ヘッドコーチが審判にプレッシャーをかけるシーンや、フリースローの際にファンが手を振って邪魔するといったシーンが意図的にテレビに映らないようにされている点はちょっと偽善的だなあと気になったのですが)

試合後のESPNの「Sports Center」で、アナリストのボブ・ナイト(元インディアナ大HC)が「バトラーは2点差で負けたのではなく、ほんの1プレーだけデュークに及ばなかった」というようなコメントをしていましたが、ああなるほどと感心してしまいました。僕はバスケは本格的にプレーしたことがないので、テレビで見ているとついその時々の点差ばかり気にしてしまうのですが、やはり1つ1つのプレーの積み重ねが大切な繊細なスポーツなんだと再認識しました。

「2点差で負けた」と言ってしまえばそれまでですが、「ほんの2点差分だけプレーの積み重ねが及ばなかった」と理解すれば、勝者と敗者の差がほとんどなかったことがよく分かります。

試合後のコーチKのコメントも素晴らしいものでした。その第一声は「まずバトラー大の健闘を称えたい。彼らは素晴らしいプレーをしていた」というものでした。稀に見る大接戦だからこその指揮官の本音だったのかもしれませんが、相手を称える姿勢は立派です。アメリカでは、プロでもアマでもこうした姿勢は徹底されている気がします。

ところで、ファイナル4が開催されたのはLucas Oil Stadiumなのですが、これはNFLインディアナポリス・コルツの本拠地でもあり、2012年のスーパーボウルの開催地として決まっているフットボールスタジアムです。フットボールでは、観客収容人数は約6万3000名なのですが、バスケの場合、フィールドに仮設スタンドを設けるので約7万人に増えます。昨日の決勝戦の観客数はまだ確認できていないのですが、恐らく満席の7万人のファンが詰め掛けていたはずです。

実は最近米国では屋内のプレミアイベントをフットボールスタジアムなどの大規模施設で開催するのが流行っており、例えばNBAも今年2月のオールスターゲームをNFLのダラス・カウボーイズの新スタジアムで開催し、バスケットの観客動員新記録10万8713名を達成したばかりです(バスケの試合に10万人以上の観客が入るなんて凄いことです)。高額なスタジアム使用料を支払っても、多数の観客動員を実現すれば更なるアップサイドが取れるという目論みなんでしょう。

このLucas Oil Stadiumの建設費用は7億ドルなのですが、うち6億ドルは市と州の税金から拠出されています。なので、このスタジアムのオーナーは、インディアナ州政府(Indiana Stadium and Convention Building Authority)で、この組織がスタジアムへのイベント招致の責任を負っています。ファイナル4はISCBAが招致している数あるイベントの1つで、この他にも大学フットボールやマ-
チングバンドの州決勝戦や高校のマーチングバンド大会などが開催されています。

以前日経ビジネスの「スポーツで実現する地方再生(上)」でも書きましたが、インディアナポリスは米国で初めてスポーツコミッションを設立し、スポーツを用いた地域振興を図った街として有名です。このNCAAファイナル4は、見方を変えれば地域振興を図りたい地方自治体と、収益のアップサイドを狙いたいスポーツ組織の思惑が一致したイベントとも言えるわけです。
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