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“カムデニゼーション”のルーツ

運よく出張が入ったので、以前から行こう行こうと思っていたCamden Yardsにようやく行くことができました。このCamden Yards(正式にはOriole Park at Camden Yards)は1992年に建設されたボルチモア・オリオールズの本拠地で、間違いなく米国スポーツビジネス史にその名を残すことになる、スタジアム経営におけるビジネスモデルに革命をもたらした球場です。



米国では、1960年代・70年代に「第一次スタジアム建設ブーム」と呼ばれる公的資金を投入したスタジアムの建設ラッシュが起こりました。この時期に建設されたスタジアムには、野球とフットボール兼用で、観客収容人数が6万前後と多く、左右対称形のいわゆる「クッキーカッター」(クッキーの形をしたような)スタジアムといった特徴が見られます。メッツのShea Stadiumなどは、この代表例です。しかし、この第一次ブームのスタジアムには、野球とフットボール兼用だけに座席のフィールドに対する角度が悪い、ファールグランドが広い、(年間162試合も行う野球にとっては)収容人数が多すぎる、外観が人工的で味気ないなどの欠点がありました。

この第一次ブームに建設されたスタジアムが老朽化すると、1990年代から「第二次スタジアム建設ブーム」と呼ばれるスタジアム建設ラッシュが始まります。そして、この第二次ブームの火付け役となり、そのトレンドを決定付けたのが、何を隠そうこのCamden Yardsだったのです。

Camden Yardsは1950年代に建設された野球専用スタジアムを参考に、スタジアムを野球専用とする、座席からフィールドまでを近づける、外野フィールドを非対称形にする、地元のランドマークを球場の一部として保存する(ライトスタンドの奥にある建物は、東海岸最大の倉庫だった建物。今はこの建物内に球団事務所が設置されているほか、パブやオフィシャルショップなどもあり、試合中に訪れることもできる)といった「古き良きベースボール」を思い起こさせる数々の工夫を施しました(こうしたトレンドを「Camdenization=カムデニゼーション」と呼ぶ人もいます)。





また、こうした外観上の工夫だけでなく、観客収容人数を4万ちょっとまで減らすことで相対的に観客収容率を上げ、チケット購入に対する飢餓感を作り出す(「チケットが売り切れるかもしれない」という状態を作り出すことがチケット販売上最高のマーケティングとなります)、ラグジュアリースイートやクラブシートといった席単価の高い高付加価値シート(プレミアム・シート)を思い切って増設し、座席数を減らしながらも、収益性は逆に高まるというビジネスモデルを作り出したのです。

その後、今日に至るまでに建設された新球場は、ほとんど例外なくこの“カムデニゼーション”を踏襲しています。それだけ、このCamden Yardsが提示したスタジアム経営におけるコンセプト・シフトのインパクトが大きかったということでしょう。そして、僕もようやく念願かなってこの“カムデニゼーション”のルーツであるCamden Yardsに行き、その息吹を肌で感じることが出来たわけです(笑)。予想通り、素晴らしいスタジアムでした。

ただし、忘れずに付け加えておきたいのは、このCamden Yardsにも大量の公的資金が投入されているという事実です。Camden Yardsの総建設費は2億3500万ドルですが、その約94パーセントに当たる2億2000万ドルは公的資金でまかなわれています。そして、この背景としては、先日から解説している「反トラスト法免除法理」によりMLBがその独占力を駆使し、移転をちらつかせながら自治体を「脅迫」することができるからなのです。

【関連記事】
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comments

いつも興味深い記事、ありがとうございます。

ひとつ質問があります。

球場を作るにあたりMLBは公的資金でかなりの部分をまかなっているようですが他のスポーツ(NFL,NBA)はどうなっているのでしょうか?
前の記事でNYG,NYJの新スタジアムの資金にサラリーキャップの一部が使われるということでしたのでNFLは機構がある程度資金を出すのでしょうか?

もしご存知でしたら教えてください。

  • T.K
  • 2007/05/26 10:30 PM

通りすがりのものに過ぎませんが、以下のペーパーはどうでしょうか。
http://www.clair.or.jp/j/forum/c_report/html/cr152/

あと、アメリカの経済学者であるroger nollとandrew zimbalistの共著に『Sports,Jobs,Tax』(1997)という研究書があります。ただしこれは入手が困難なようです。

  • passenger
  • 2007/05/27 11:00 PM

T.Kさん、passengerさん
コメント、情報ありがとうございます。米国では、MLBに限らずNFLやNBAのスタジアム/アリーナには程度の差こそあれ多額の税金がつぎ込まれています。通常、スタジアム建設においてリーグがチームの代わりに資金を提供するということはありませんが、リーグが窓口となり銀行からお金を借り、チームに低利で融資を行う「信用供与」という枠組みはかなり一般的に活用されています。俗に言う「リーグによるスタジアムローン」というものです。

  • tomoyasuzuki
  • 2007/05/29 2:56 AM

tomoyasuzukiさん、passengerさん
ご返答ありがとうございます。
提示いただいたペーパー、回答共に興味深く拝見いたしました。

欧州方面で自前のスタジアム建設の話題がいくつか挙がっておりこの問題には前から興味を持っていました。
調べたところアーセナルのエミレーツスタジアムはある程度クラブの資金で建設を行っています。財政面でそれほど苦労していないアメリカのスポーツクラブが何故こんなにも自治体を頼りにするのか疑問を感じていました。
アメリカのクラブは負債を持つことに抵抗があるんですかね?それとも買収を懸念して資産を持ちたくないのでしょうか?




  • T.K
  • 2007/05/29 11:59 PM

T.Kさん
コメントありがとうございます。現在、スタジアムを1つ建設するのに約5億ドル(=600億円)以上の総建設費が必要になっています。以前ブログでもお知らせしたとおり、NYは新スタジアムの建設ラッシュですが、例えばメッツの新スタジアムCiti Fieldの建設費(予定)は8億ドル(=960億円)、ヤンキースの新スタジアムは12億ドル(=1440億円)、NFLジャイアンツ/ジェッツの新スタジアムに至っては16億ドル(=1920億円)となっています。一方、4大スポーツリーグにおけるチームの経営規模は1〜2億ドルが一般的ですので、建設費を全てチームが負担するのは経営上リスクが大きすぎることになります。また、自治体側もチームを失いたくないという心理から、「喜んで」建設費を拠出する傾向があり、チームが自治体を頼りにしているというよりは、むしろ自治体がチームに留まってほしいと考えるパワーポリティクスが働いています。こうした背景もあり、チームは自治体を「打ち出の小づち」として活用しているというのが、アメリカの現状です。

  • tomoyasuzuki
  • 2007/05/30 1:11 AM

tomoyasuzukiさん
ご返答ありがとうございます。
よくよく考えてみるとサッカーの場合「移転」という交渉カードは実質上存在しないんですよね。(あるとしてもスタジアムの「移転」くらい)
そういった前提条件が違うからほぼ自前で建設するか自治体の好意にすがる他ないということですね。了解しました。

*そういえばサッカーの場合赤字補填策を自治体にすがる傾向があります。(特にイタリア、スペイン)
関わり方が違うだけという見方もできますね。

  • T.K
  • 2007/05/31 11:35 PM
   

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