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保留制度が日本でも法廷闘争へ

すみません、先週末より出張でNYを離れており、ブログの更新が滞ってます。

久しぶりにパソコンに向かう時間が取れたので、ちょっと気になった話題について書いてみようと思います。

ついにプロ野球選手会が提訴へ

 労働組合・日本プロ野球選手会(宮本慎也会長=ヤクルト)は20日、東京都内で臨時大会を開き、フリーエージェント(FA)権取得期間の短縮や、FA選手を獲得した球団に対する補償金の撤廃など、選手の保留制度の改善を求めて訴訟を起こすことを全会一致で決議した。

 遅くても年内には提訴する方針で、係争中でも日本プロフェッショナル野球組織(NPB)との労使交渉は継続する。宮本会長は「球界の構造改革を言っても進んでいない。交渉の中では、いいものを勝ち取ることができない。この手段(訴訟)しかない」と、司法に判断を委ねる理由を説明した。

 今回の決議案について、NPB側は27日に選手会から報告を受ける予定になっている。長谷川一雄コミッショナー事務局長は「話を聞いてから、どうするかということ」と話すにとどめた。

 選手会は、肖像権の帰属をめぐっても経営者側を訴えており、現在は知財高裁で争っている。

 ▼宮本慎也・日本プロ野球選手会会長の話 大リーグ(の選手会)も裁判を起こして勝ち取っている。むちゃな要望は出していない。若い選手の将来のためにも、いま動かないといけない。

 ▼根来泰周コミッショナー代行の話 何も聞いていない。裁判をやるというなら、権利があるんだからしょうがない。 [ 2007年07月20日 20:06 速報記事 ](スポニチ)

報道では、プロ野球選手会(JPBPA)が20日に臨時大会を開催し、FA権の取得期間短縮とFA補償金の撤廃を求めて民事訴訟を起こすと言われています。しかし、上記記事に「NPB側は27日に選手会から報告を受ける予定」とあるように、選手会側からの正式なリリースはなく、選手会公式HPにも「対話を継続しながらも、構造改革を促進させるためには、根本的な活動方針の変更もやむなしとの結論が確認されました」とのみ報告されており、具体的な訴訟方針などについては触れられていません。

保留制度とは、簡単に言ってしまえば、入団から一定期間選手から転職の自由を奪うもので、MLBでは今からさかのぼること100年以上前の1879年にその起源を見つけることができます。これは、優勝の望みのなくなった球団から次々に選手が出て行ってしまい、公正なリーグ戦が成立しないようになってしまったために設置された制度でしたが、 MLBでは公正なリーグ戦の担保という本来的な目的をよそに、時がたつにつれオーナー側が選手をあたかも奴隷のように縛り付けるようになったことから、別名「奴隷条項」とも呼ばれていたものです。

フリーエージェント(FA)権とは、この保留条項からの解放を意味し、つまりFA権を取得した選手には転職の自由が認められることになります。ちなみに、FA権の取得期間は、NPBは9年、MLBは6年の一軍登録が必要となります。

訴訟大国アメリカでは、この保留条項も訴訟(反トラスト法)の対象となりましたが、1972年に最高裁は「先例拘束性の原理」(先に出された判決が有効となる原則)を理由に結果的に保留条項を容認する判断が下されました。そのため、MLB選手会(MLBPA)はMLBの内部制度である調停制度にこの問題を諮った結果、現在のFA制度が確立されたという経緯があります(この辺の詳しい事情については、以前「週刊ベースボール」に寄稿したコラムに書きましたので、興味があればご参照ください)。

蛇足ですが、NPBにも調停制度は存在しますが、メンバー構成が公平性を担保できないものとなっており(リーグ側の人間で占められている)、JPBPAがMLBのように調停制度を用いてこの問題の是非を諮ることはないでしょう。

保留条項は、戦力均衡の根幹をなすものですから、白か黒かという判断にはならず、程度問題としてどこまでの制限が妥当であるかが争点となるように思います。アメリカでは、こうした戦力均衡のための施策が裁判で争われた際は、「Lease Restrictive Form」(必要最低限の規制)に限り認められるという流れにあります。

この問題はコメ問題と一緒で、自国の産業力をどの程度と評価し、他国市場との力関係の中でいかに競争力を確保するかという戦略的な観点が不可欠です。今後この問題がどのように展開していくのか注目したいと思います。

【関連情報】
ついにプロ野球選手会が提訴へ(スポニチ)
[プロ野球選手会]NPBや12球団相手に民事訴訟へ(毎日新聞)
戦力均衡を中心に考えられたMLBのFA権と未整備が多いNPBのFA権(週刊ベースボール)

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comments

60億を投資できるMLBのからくり をひととおり読ませていただきました。というより難しくて目を通したという感じで、さらに何度か読み直す必要があります。でも米国大リーグの裁判には日本と違ういろいろな背景があることは何となくわかりました。
 米国で地元の人に混ざって少年野球を経験することで、野球そのものの日米の違い、プロスポーツの日米の違いなど、が見えて来たような気がします。
 米国大リーグを引き合いに出すときにその背景をよく理解して、それからNPBの存在意義に照らし合わせたアプローチが重要だと思います。まさにコメ問題に似ているかもしれません。

  • Kazuma
  • 2007/07/27 9:57 PM
   

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