年度末ということで仕事がたまっており、今日は休日出勤しています。4月になったら少しゆっくりできそうなので、もう少し頑張ろうと思います。
さて、NYもやっと少し春めいてきました。オフィスの近くの公園でも、芝生の上でリスが走り回ったり、小鳥が休んでいたりしていて、そうした動物たちの躍動感から季節の移り変わりを実感しています。
冬の眠りから覚めて動き出すのは、人間も同じかもしれません。学生なら卒業、社会人なら4月から入社○年目に突入と、春は区切りの時期なのかもしれません。そして、こういう背景もあってか、毎年この時期になると、僕のところに来る進路相談の数も結構増えることになります。
一応、スポーツマネジメントの分野での海外留学に関する本も書いているので(といっても、手放しで海外留学を薦めているわけではありませんが)、基本的にこうした進路相談には全て乗ることにしています。これは、僕が2000年に留学した時から自分の中で決めていたことで、僕のような人間でも人の役に立てるのであれば、しかもそれがスポーツの分野であれば、間接的には日本のスポーツ界に寄与しているということにもなるので、そのようにしています。
今まで恐らく100人以上の方とメールや電話や会って話をしましたが、これから書くことは特定の方からの相談について言及しているものではなく、こうした経験全体からの僕の感想であることを誤解なきよう予め断っておきます。
さて、こうした進路相談の多くは「一刻も早くスポーツに関する仕事がしたい」という動機によって転職や留学を考えているというものが多いのですが、スポーツ業界に何とかして辿り着こう、という意識が強い反面、その後どうサバイブしていくかについてはあまり意識が向いていないことが多いです。
何を隠そう、僕自身も今思えば半分勢いで留学して勢いで起業してしまったフシもあり、とても苦労したし、色々な方から知恵や力をお借りし、また不本意ながらご迷惑をかけてしまい今に至るという反省もあるので、自分のことを棚において(あるいは、反面教師として)このように思ってしまうのです。
スポーツ業界でサバイブしていくために、多くの人が忘れがちなのが、スポーツ組織は中小企業ということです。日本のプロ野球球団なら、年間売り上げは100億前後、Jリーグなら30億前後くらいでしょうか。利益だけで2兆円出してしまうようなトヨタとは違うのです。即戦力とならない人材を囲い込んでおく余裕などないのです。
誤解を恐れずに言えば、ビジネスとしてやっている以上、組織の中で何らかの形でお金を生みだすことに貢献することができなければ、やはり中小企業の経営者としてはそのような人材を採用することはできないのです。小さい組織であれば、より直接的な貢献が必須となってきます。スポーツを愛しているし、性格もいい。でも、それだけじゃ駄目なんです。趣味でやっているわけではないのですから。
もちろん、これは短絡的に「スポーツで金儲けしろ」と言っているのではなく、お客様に対してどのようなバリューを提示でき、価値を認めてもらい、その対価を回収できるか、その実力ということです。だから、安易に「留学して本場のスポーツマネジメントを学べばどうにかなるだろう」とは思ってもらいたくないのです。厳しく言えば、留学で得た知識だけで商売できるほど甘い世界ではないということです。
これからスポーツ業界への転職や、それを見据えた大学院への入学などを考えている方は、「何とかなるだろう」「何とかしてくれるだろう」という甘えを捨てて、「自分で何とかする」力が自分にあるのかどうか、なければどうすればそれが身につくのかを是非考えて下さい。かく言う僕も、「どうしたら何とかなるのか」を日々悶々としながら考えています。
comments
はじめまして。現在20歳の大学二年生です。
ブログを拝見させて頂いきました。
現代は、アメリカでスポーツビジネスをしている方の話をリアルタイムで知る事ができて、本当に素晴らしい時代だと感じます。
実際にアメリカにスポーツ留学をして、厳しい文章も拝見させて頂きました。
それを理解したうえで僕はアメリカに留学を考えています。
理由はスポーツエージェントになりたいからです。英語もまだ半人前ですし、今はどうしても取得したい資格があるので一年先を見越しています。
日本でスポーツエージェントになるには、弁護士になるか、アメリカでスポーツエージェントとして認められた者が主に活動できます。
私は自分がよりよい環境で勉強になるのは、アメリカでスポーツエージェントになる事だと思いました。
伺いたい事はたくさんあるのですが、Mailでは書ききれません。
ですから、どんな些細な事で構いませんのでアドバイスを頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします。
success-story24@docomo.ne.jp taisuke
taisukeさん
コメントありがとうございます。アメリカでスポーツエージェントになることは簡単ではありません。そもそも、今すぐにアメリカに留学することが本当にスポーツエージェントになるために必要なのかをよく考えた方がいいと思います。
ご参考までに、興味がありましたら拙著「スポーツ経営学ガイドBOOK」(ベースボールマガジン社)をご覧下さい。留学の良い点・悪い点を整理しています。
エージェントになるのは本当に大変なんですね!!
自分でもエージェントまでの道のりで、どの道が一番最短距離なのかは全く知らないので、困ってます。
自分の考えは、それほど甘かったのですか…。
はい。ぜひ読ませて頂きます。もしよろしければ、他にもエージェントまでの道のりに役立つ本や情報があれば、教えてもらえませんか??積極的に取り入れたいと思います。
taisukeさん
以下もエージェントに関する本、もしくはエージェントとして知っておかなければならない知識に関する本です。もし興味があれば併せて読んでみて下さい。
「ショウ・ミー・ザ・マネー」(升本喜郎著 ソニー・マガジンズ)
「日出づる国の奴隷野球」(ロバート・ホワイティング著・松井みどり訳 文藝春秋)
「スポーツ・エージェント」(梅田香子著 文藝春秋)
「スポーツ代理人」(ロン・サイモン著・武田薫訳 ベースボール・マガジン社)
「プロスポーツ選手の法的地位」(川井圭二著 成文堂)