October 2020  |  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

アメリカン・ニードル訴訟の最高裁での口頭弁論が開始

昨日(13日)から、アメリカン・ニードル訴訟の最高裁での口頭弁論が始まりました。

訴訟の概要については、「忍び寄る「合理の原則」が崩壊する危機」で解説したのでここでは省略しますが、この裁判は米国スポーツビジネス関係者の間では「カート・フラッド訴訟の再来」「スポーツ訴訟のスーパーボウル」などと言われている位非常に大きく注目されている裁判です。裁判の判決いかんによっては、現在の米国スポーツ界が立脚しているビジネスモデル自体が大きく揺らぎかねない訴訟です。

この裁判では、第1審、控訴審ともにシングルエンティティ抗弁を用いたNFLが勝訴しており、その流れで「最高裁でも認めてもらおう」と勝訴していたNFL側が最高裁に審理を求めたものです。

口頭弁論に先立って、原告(アメリカン・ニードル社)、被告(NFL)双方の利害関係者が「Friend-of-the-court」(裁判の友)と呼ばれる意見陳述書(要は、この人たちの主張は真っ当だから認めてあげて下さいという陳情)を出しているのですが、その顔ぶれが露骨でちょっと笑えます。

■原告(アメリカン・ニードル社)側の主なFOTC
・NFLPA/NHLPA/NBPA/MLBPA
・NFL Coaches Association
・Office of the Solicitor General
・Merchant Trade Association
・American Antitrust Institute

■被告(NFL)側の主なFOTC
・NBA/NHL/NCAA/ATP/NASCAR/WTA/MLS
・MasterCard/Visa
・Electronic Arts

原告側(アメリカン・ニードル社)を応援しているのは、シングルエンティティが認められると困る人たちです。その筆頭が各スポーツリーグの選手会で、労働争議に際して仮に選手組合を一旦解散(Decertify)しても、反トラスト法訴訟でリーグを訴えて勝つ見込みが著しく低くなってしまうからです。あとは、独占に反対する立場の人たちですね。法務長官とか、貿易振興会などです。シングルエンティティは独占を助長しますから。

一方、被告(NFL)側を応援しているのは、シングルエンティティが認められると嬉しい人たちです。各スポーツリーグは、シングルエンティティが認められれば、反トラスト法の訴追対象から外れるので、選手やチーム、政府などからいちいち口出しされずに好き勝手なビジネスができるようになるし、労使交渉でも選手会に対して強気に出ることができるようになります。

ここで面白いのは、MLBが名前を連ねていない点です。MLBは、既に反トラスト法から免除されていますから、「我関せず」という立場なわけです。

あとは、リーボックと同様にリーグと独占契約を結んでいるクレジットカード会社とかテレビゲーム会社といったスポンサー企業です。彼らも、基本的にはリーボックと同じビジネスモデルで契約を結んでいるから、敗訴したら困るワケです。

今回の訴訟のインパクトは多くの領域に及びますが、時期的に特に注目されているのは、労使交渉に対する影響です。米4大メジャースポーツの労使協定は、いずれも2012年に失効します。そのため、どのリーグも既に下交渉は開始されているのですが、どのような判決が出るかで交渉戦略に大きな影響を与えます。特にNFLは3月1日までに交渉がまとまらないと、来シーズンのサラリーキャップがなくなるわけで、労使双方としても裁判の行方を注目していることでしょう。

また、4大メジャーではないですが、MLSは今月いっぱいで現行の労使協定が失効します。ご存知の通り、MLSはシングルエンティティとして設計されたリーグなので、反トラスト法の訴追対象から免除されているという前提で(完全に免除されているわけではないのですが)、他のリーグでは見られないような選手に不利な契約が結ばれていたりします。

例えば、ギャランティー(年俸保証型)契約を結んでいる選手は2割ほどしかおらず、他の選手は解雇されるとサラリーがもらえなくなったり(つまり、出来高型契約。4大スポーツなら、怪我をしても解雇されてもギャランティー部分は支払われる)、選手の同意なく勝手にトレードに出せたり、契約が満了しても自由意思で移籍先を選べないなどが挙げられます。

こうした現状に対して、MLS選手会も契約状況の改善を求めて交渉を進めているのですが、難航しているようです。FIFPro(国際プロフットボール選手協会)は、FIFA基準に従うようにMLSに勧告を出しているのですが、リーグ側は態度を硬化させており、2月からのロックアウトの可能性にも触れています。

仮にアメリカン・ニードル訴訟で、NFLのシングルエンティティ抗弁が広い範囲で認められてしまうと、極端な話、選手との契約もMLSのように選手に不利になってもそれに抵抗する術がなくなってしまうのです。そして、各リーグの選手会側はこれを恐れているのです。もちろん、選手契約だけでなく、ドラフトやFAなどスポーツのビジネスモデルを支える主要施策にも影響を与える恐れがあり、裁判の行方が注目されています。

スポンサーサイト

comments

   

trackback

pagetop