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エージェント活動の規制とそのジレンマ

忙しさにかまけてブログの更新を滞っていました。反省。

最近知人と話したりメディアからの情報に接する中で、エージェント活動を規制する大きな流れが欧米で共通して見られるようになっているように感じます。

例えば、ヨーロッパではFIFAが現行の認定代理人制度を廃止し、来年以降に新制度を導入する意向を示しています。現在の海外移籍のうち、認定代理人を通じた移籍は約3割しかなく、制度自体が機能不全に陥っていることがその理由のようです。

また、アメリカでも代理人事務所間での選手の引き抜き競争が激化し、トラブルが増えているようです。小規模な代理人事務所を経営する知人の話では、最近大手の代理人事務所の選手引き抜き活動が目に余るようになってきているということで、「若者にこの業界に入ることはあまりお勧めできなくなってきた」とこぼしていました。

知人によると、大手事務所の「手口」は、10人ほどのインターンを雇い、彼らに他の事務所とその事務所に所属する選手のリストを渡し、インターンの間で選手の引き抜き競争を行わせるのだそうです。インターンはあの手この手で選手を誘惑し、より多くの選手を「寝取った」インターンが正社員になるんだそうです。まあ、全ての事務所がこうした悪質な手口を行っているわけではないようですが、もう一昔前のような節度や倫理観は失われてしまいつつあるようです。

こうした背景もあってか、MLB選手会も今月に入ってエージェント規則を改定しました。改定の趣旨はエージェント活動の可視化を図るという点だと思われますが、主な変更点は以下の通りです。

1)代理人認証
代理人以外でも選手へのサービスを行う者は選手会から認可を得なければならない

2)勧誘活動
選手勧誘に関するコミュニケーションは可能であれば48時間前に、遅くとも24時間後までに選手会に告知しなければならない

3)金品の授受
代理人のいない選手への金品の授受の禁止。また代理する選手へは1500ドルを上限とする

4)代理人の交代
FAもしくは年俸調停権取得直前の代理に変更には、選手会への届出が必要

5)選手の引き抜き
代理人が所属事務所を辞めて別の事務所に移る、あるいは独立する際に、旧事務所からの選手の引き抜きを禁止する

6)調停義務化範囲の拡大
現在義務化されている代理人と選手間の紛争の調停利用を、代理人間の紛争処理にも拡大する

「エージェント活動」と一言で言っても、その範囲は多岐に渡ります。狭義での「エージェント」は、球団と年俸交渉を行う契約エージェント(Contract Agent)を指すのですが、通常はこの他にCMやエンドースメントなどのマーケティング契約を担当するマーケティングエージェント(Marketing Agent)やファイナンシャルプランナー、税理士、トレーナーなどの多くの人物がチームを組んでいます。

で、従来までは選手会に代理人登録する必要があったのは、いわゆる契約エージェントだけだったのですが、今回の改定によりそれ以外にエージェント活動を行う者(広義での「エージェント」)全てが選手会から認可を受けなければならなくなりました。その上で、選手勧誘活動の可視化のための手続きが新たに定められたわけです。

また、最近NFL選手会もマーケティングエージェントとの会合を開いたようですね。

ただ、選手会にとってジレンマなのは、エージェント活動を厳しく取り締まり過ぎると選手に不利益が生じる可能性があることです。どういうことかと言うと、スター選手を抱える大手代理人事務所が球団に対して強気の契約交渉を展開してくれるお陰で選手年俸が上昇するという事実があるためです(もちろん、選手年俸が上昇する要因はこれ以外にもありますが)。つまり、必要以上に大手事務所を規制し過ぎると、年俸の上昇を妨げることにつながりかねないわけです。そのため、「選手会は大手事務所に甘い」という批判が小規模事務所から出たりもしています。

大金を稼ぐ選手の周辺業務には多くの人が集まり、多くの新しい職業が生まれるようになってきています。場合によっては「選手が試合に集中できる環境を整備する」という代理人の存在意義と逆の結果をもたらすケースもでてきてしまいます。選手会は、代理人を上手く活用して選手の利益を守りつつ、代理人の不祥事から選手を守るという微妙なかじ取りを迫られるようになってきました。

【参考情報】

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