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“テレビ放映権のボスマン裁判”のインパクト

今、ヨーロッパで“テレビ放映権のボスマン裁判”とも呼ばれる裁判が進行中です。争っているのは、英プレミアリーグとポーツマスでスポーツバーを経営するカレン・マーフィーさん。

マーフィーさんは、バーで放送するサッカー中継でSky Sportsによる高額のプレミアリーグテレビ購読料を嫌い、ギリシャの衛星放送NOVAが提供する安価なテレビパッケージに切り替えました。しかしプレミアリーグは「イギリスで認められているテレビ放送事業者はSky Sportsだけだ」として、英著作権法(UK copyright law)違反でマーフィーさんを訴えたのです。結局、裁判ではプレミアリーグの訴えが認められ、マーフィーさんに8000ポンドの支払いが命じられました。 

しかし、この判決に納得のいかないマーフィーさんは、「自分の行為はEUの通商の自由(freedom of trade)により保証されている」として、この事案を欧州司法裁判所(ECJ)に持ち込んだのです。

実はこの構図は、サッカー界を震撼させたあの“ボスマン裁判”と似ているのです。

ベルギーリーグ2部のRFCリエージュの選手だった、ジャン=マルク・ボスマン選手は、契約終了後、オファーのあったフランス2部のダンケルクに移籍しようとしたのですが、リエージュが同選手の所有権を主張して移籍を阻止しようとしました。そのため、ボスマン選手が所有権の放棄を求めてベルギー国内で裁判を起こしたのです。

裁判自体はボスマン選手の勝訴に終わったのですが(ここは今回のマーフィーさんの件とは違うところかもしれませんが)、これに満足しなかった同選手は、UEFAを相手取って「選手の移籍はEUの労働の自由(freedom of movement for workers)により保証されている」としてECJに訴え、これが認められたのです。

この判決により、クラブは契約の切れた選手の所有権を主張できなくなり、サッカー界の移籍金ビジネスは再考を余儀なくされたわけです。

そして、最近、この“テレビ放映権のボスマン裁判”に関して注目すべき動きが出てきました。

8名いるEC法務官のうちの一人が「テレビ放送の地理的独占権はEU法に違反する」との意見を表明したのです。EC法務官の意見はECJでの判断に大きな影響を与えることは必至です。もしECJがこの法務官の意見のようにテレビ放映権の地理的独占の違法性を認めれば、国ごとに独占権を販売することで多額のマネーを手にすることができている現在のテレビ放映権ビジネスは崩壊することになります。

この影響はプレミアリーグに留まらず、ワールドカップやオリンピックなどヨーロッパ全体を相手にするスポーツ全てに及ぶことになるでしょう。また、テレビ放映権だけでなく、スポンサーシップなど独占権を前提とするビジネス領域には、“第3のボスマン”が現れる可能性もあります。

ヨーロッパは「EUが1つの国」という発想でできていて、EU内では自由競争が前提となっているので、その部分が従来のスポーツビジネスの仕組みと不整合を起こしているようです。

【参考情報】

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