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再販サイトは悪か?

先日、MLBはチケット再販サイトStubHubとの公式パートナーシップ契約を5年間延長しました。今年が5年契約の最終年で、その後の展開が注目されていたのですが、結局その契約は2017年まで延長されることになりました。

個人的にはStubHubとの契約は解消されるか、延長されても2年前後の短期になるものと予想していました。というのは、再販市場(Secondary Market)が一次市場(Primary Market)を侵食しており、長期的に再販市場はリーグ(あるいは球団)自身が管理していくものになると予想していたからです。

今後、チケットは全てペイパーレスでデジタル化されていくのは間違いないでしょうから、その流れを考えても、第三者にいつまでも再販市場を任せておくことはないと思ったのです。もしかしたら、MLBAMは将来的にStubHubを買収するつもりなのかもしれませんが。

「再販市場が一次市場を侵食する」とはこういうことです。例えば、ヤンキースタジアムでの火曜日のマリナーズ戦など平日の弱いチームとの試合は、空席が目立つ試合でチケットを売るのが大変です。シーズンシートを持っているファンも、全試合を見に来るわけではありませんから、こうした人気のない試合は観に行かずに、再販サイトでチケットを転売してしまうんです。

すると、本来20ドルする外野席が5ドルで売られていたりするんですね。これは実際今年ヤンキースで起こっていたことなのですが、こうなるとファンは球団(一次市場)からではなく、StubHub(再販市場)からまずチケットを買うように条件付け(Conditioned)されてしまうのです。

ここで次の2つの問題が起こります。

1)球団がチケット価格をコントロールできなくなる
2)シーズンシート保有者(STH)の顧客満足度が低下する

1)について。当然ですが、球団はチケット価格と価値を厳密に管理しており、収益性の高い顧客(STH)が最大の付加価値を得るように設計しています。付加価値は割引率だったり、追加特典だったりするのですが、割引という意味では、額面20ドルの席でもSTHは15ドルだったりするわけです(25%割引)。

どの球団もSTHが最大の割引率を享受するようにチケット価格を設定しているのですが、再販市場では価格設定は売り手が自由に決められるので、価格構造が破壊されてしまうのです。その結果、ただの通りすがりの購入者がSTHを上回る割引率でチケットを入手できるようになってしまうのです。

2)については、再販市場は売り手からチケット価格の15%、買い手から10%の手数料を徴収します。つまり、STHは既にチケット料金を支払っているにも関わらず、さらに転売するのに手数料を取られてしまうのです。「だったら面倒くさいし割に合わないからシーズン席はやめてハーフシーズンでいいや」ってなってしまいますよね。

こうなると、せっかく球団が設計した顧客育成エスカレーターは台無しです。そのため、球団のチケット販売担当者は往々にしてStubHubを敵視しています(笑)。今年7月にSBJ主催のチケッティングカンファレンスに出席したのですが、その際、ラウンドテーブルに出席していた球団関係者は、誰一人として同席していたStubHubの関係者に目も合わせませんでした。

こうした経緯もあってか、今回のMLBとStubHubとの契約更新においては、球団にこの契約に乗るか降りるかの選択権が与えられたようで、ヤンキース、カブス、エンジェルスの3球団はOPT-OUTしました。

確かに、球団の立場から見れば自分達のビジネスを荒す悪者に見えるのでしょうが、再販サイトは本当に「悪」なんでしょうか?

顧客の視点から見れば、チケット購入先が球団だろうがStubHubだろうが関係ありません。安くて便利ならそれでいいわけです。StubHubは売り手と買い手が勝手に価格を設定する完全オープンマーケットですから、チケットの額面価格はどうであれ、本来の市場価値に近づくのはこちらです。

つまりStubHubがビジネスになるということは、球団の設定するチケット価格が硬直的で需給バランスを適切に反映していないとも考えられるわけです。本来5ドルの価値しかないシートに20ドルの値段をつけているから売れなくなるという見方です。

こうした球団とチケット再販業者とのせめぎ合いもあり、近年、多くの球団が価格変動制チケット(Dynamic Pricing Ticket)を導入し始めています。これは、「対戦相手」「試合日」「先発投手のマッチアップ」「天気」など様々な要因からチケット価格を算定して販売するというもので、買うタイミングにより価格が変動します。いわゆる「時価」ってやつです。

こうなると、一次市場と再販市場の価格差は極小化されますから、前述の1)2)の問題を未然に防ぐことができるという訳です。

今後は、「一次市場と再販市場の統合」+「デジタルチケッティングへの移行」+「価格変動制の導入」の流れをスポーツ組織が主体的に行っていくことになるのではないかと見ています。その中でのMLBとStubHubとの契約延長。水面下での動きが気になるところですね。

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