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新国立の事業設計は大丈夫か?

新国立競技場の建設について、その建設費の高騰や設計の変更、工期の実現性などがここにきて大きな議論になっています。こうした議論はこれまでも水面下であったんだと思いますが、東京都の舛添知事が文科省に求められた500億円の都の無条件負担を留保し、その根拠を求めたことがこうした議論の呼び水になったようですね。  

僕は施設設計の専門家ではないので、どのようなプロセスがあるべき姿なのかについて、専門知識はおろか、自分の見解と呼べるような知見は持たないのですが、1点気になることがあります。それは、新国立の事業設計についてです。  

事業設計と言うと、「建設後」にどのようなテナントやイベントを集めて収益計画を立てるのかという事業計画に焦点が当たりがちですが、実はこれよりも重要なのが、「建設前」に事業を想定したデザイン・導線を施設設計に反映させることです。  

日本のスポーツ施設(特に税金で建設される施設)では、建設前にテナントや協賛企業の意見を踏まえることは稀なようです。これは、公共性を重視する日本の行政の特徴なのですが(要は、税金を使っている以上、特定の企業だけに配慮した設計はできないという考え)、この建前が事業的に使い勝手の悪いスポーツ施設が日本中に量産される大きな理由になっています。  

米国では、スポーツ施設建設に際しては10社程度の「共同創設パートナー」(Founding Partner)を募り、10〜20年程度の長期的なコミットメントを求める代わり、施設内での独占的な事業機会を提供する形でパートナーシップを組むのが一般的です。要は、リスクを共有する事業パートナーとして、施設設計時から事業者にコミットしてもらい、よりビジネスのやりやすい施設を自治体と共に創り上げて行くのです。  

例えば、自動車会社が創設パートナーになるのなら、自動車の展示スペースや搬入を踏まえた設計が行われますし、ITソリューション会社であれば施設インフラとしてその会社のハード・ソフトウェアがインストールされるといった具合です。こうした協賛事業を踏まえた設計は、施設建設後に考えても遅いわけです。  

昨年、クライアントとともにスポーツ施設の運営管理を行っている米国のある自治体にヒアリングに行ったことがありました。その際、施設設計に事業者が主体的に関与しない日本の現状を説明すると、「例えば、工場を作るとしましょう。その工場で何を作るかを決めずに、あなたはその工場を建設しますか?自動車を作るのか、アパレルを作るのかによって、施設のレイアウトは大きく違ってくるはずです」と言われて一同言葉を失った経験がありました(笑)。 

新国立建設の議論では、そのデザインについては侃々諤々の議論が展開されているようですが、事業設計の話が全くと言っていいほど表に出てきません。水面下でちゃんと話が進んでいるとよいのですが。 

確かに、オリンピックは国を代表するイベントであり、そのデザインは重要です。でも、見栄えばかりの議論を続けて、肝心な収益性の議論が万が一後回しになっているようなら、僕はそちらの状況の方がより致命的だと思うわけです。毎年何十億円もの維持費を垂れ流すような施設だけは避けるできだと思います。

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