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スポーツ経営における「Value Proposition」の重要性

なでしこジャパンのワールドカップ準優勝を受け、選手の待遇改善を訴える記事などが増えていますね。同じ大舞台で戦っているのに、男子に比べると待遇が悪いとか、同じ女子サッカーでも米国に比べると環境が整っていない、といったものです。

ただ、多少言葉じりを捉えるようで申し訳ないのですが、準優勝した「のに」待遇が悪いのはおかしい、といった主張には多少違和感を感じます。競技レベルが高いことと、ビジネスで成功することは、別のものとして考えるべきだからです。

もちろん、両者は相互依存関係にあるので、競技力が上がれば集客がやりやすくなるのは事実です。もしくは、事業的な成功により手にした資金で競技力向上に投資できるようになります。

でも、競技力が高ければ必ず事業的に成功するわけではありませんし、逆に競技力が低ければ例外なくビジネスで失敗するというわけでもありません。例えば、米国には同じ「野球」という売り物を提供しているビジネスでも、最高レベルのMLBだけでなく、マイナーや独立リーグといった様々な競技レベルの「商品」が混在しています。

最高レベルのプレーを提供するMLB球団でも事業的にうまく行っていない球団は少なくないですし、逆にプレーのレベルが低い独立リーグ球団でも毎年確実に黒字を出しているところもあります。

この成否の違いを読み解くキーワードになるのが「Value Proposition」(バリュー・プロポジション)です。

成功しているマイナー/独立リーグ球団のオーナーや経営者と話していると、会話の中に必ずといっていいほどこの「Value Proposition」という言葉が出て来ます。最近では、MLB球団でも聞くようになってきました。

「Value Proposition」は、日本語に訳すのが難しい言葉なのですが、イメージとしては「提供されている価値」といった意味です。マーケティング的に言うなら、4P(Product, Price, Place, Promotion)によって作り出される総合的な商品価値のことです。

特に、競技レベルで勝負できないマイナー/独立リーグ球団経営者は、4Pの中でも「Product」について徹底的に考え抜いており、分解された複数の訴求価値から市場に合った総合価値を創り出す努力をしています。そして、ここが日米で大きな差を感じる部分です。

競技軸が強い日本では、「Product=競技だけを見せる場」という意識が強く、それ以外の訴求価値を追い求めることが邪道のように見なされる雰囲気があります。これはこれで1つの文化の在り方だとは思うのですが、事業的に考えると「Product=競技だけを見せる場」と定義した瞬間から、「Value Proposition」で柔軟性を失うことになってしまいます。

「同じ競技なのになぜ?」と考える前に、競技のフィルターを外し、それぞれ固有の「Product」としてどのような「Value Proposition」を生み出しているのかを考えるべきでしょう。

「男子サッカー日本代表チームはFIFAランキングで女子代表より下なのに、なぜスポンサーが集まるのか?」
「なぜ競技レベルで落ちる独立リーグ球団でもMLB球団より利益を生む球団があるのか?」
「なぜワールドカップでは男女で優勝賞金が違うのに、USオープン(テニス)は同じなのか?」

競技の軸から離れ、「Value Proposition」という思考の補助線からこうした問いを深めて行くと、違った景色が見えてくるのではないかと思います。

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