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スポーツの「見えざる大陸(金脈)」に気付くためには

「アスリートファースト」という言葉は最近日本でもオリンピックの文脈で良く耳にする言葉になっています。しかし、(ツイッターでもつぶやきましたが)日本での「選手第一」は、非常に視野の狭い、顧客視点を欠いた独善的な使われ方をしているケースが多いように感じています。

これは、小池東京都知事が立ち上げた都政改革本部で特別顧問を務める上山信一慶応大学教授が、東京五輪にかかる予算見直しを行っている調査チームの報告から見えてきた事実を説明しているご自身のブログでも触れている点です。

ちなみに「アスリートファースト=立派な施設建設」という勘違いは日本特有です。なぜなら日本では建設費はもちろん運営費や維持費の大半を役所が税金で負担してきた。だから甘えがあるのです。でも海外では受益者がコストを負担するのがふつうです。

日本でも、今後は競技団体に受益者負担を求めていく、つまり大会後の施設運営コストを分担していただく時代になるでしょう。また、それに向けて都庁は施設建設費のみならず、大会後の施設の維持運営費、利用見通し、大規模改修費などを前広に都民に情報公開していくことが大事です。

僕もスポーツ業界で飯を食っている人間なので、できれば東京オリンピックも成功してほしいし、それを機にスポーツ界が健全に拡大成長していくことを願っています。ですから、あまりネガティブなトーンを投げかけたくはないのですが、少なくともスポーツ界は当事者としてこうした真っ当な疑問に対して、情ではなく、論理と数字で答えなければならないと思います。

そんな政治ゲームの中で、日本のスポーツ界の存在感は薄い。ボートとカヌーだけではなく、バレーボール会場、水泳会場として新設される予定の有明アリーナ、オリンピックアクアティクスセンター(ともに東京・江東区)も建設中止を含む見直しの対象となっている。ボート、カヌー、水泳、バレーボールだけでなく、施設を利用する可能性のあるさまざまな競技関係者が声をあげてはいるが、いずれもお願いばかりなのだ。

26日も団体球技の各リーグが参加する日本トップリーグ連携機構が会見し、有明アリーナの計画通りの整備を訴えた。川淵三郎会長をはじめ、日本バレーボール協会、日本バスケットボール協会、日本ハンドボール協会や各リーグのトップが顔をそろえたものの、主張する内容は「スポーツの発展のため、世界に誇れるアリーナをつくることが絶対に必要だと確信している」「(後利用では)われわれも最大限活用する」。声は大きいのだが、抽象的で客観性のない内容ばかり。国民みんながスポーツ好きで巨額の税金投入を支持しているわけではない。この程度の理屈でそんな人まで納得させることはとても無理だと思った。

会見では首都圏のアリーナの利用状況の調査結果も明らかにされた。1万7000席の横浜アリーナでは年間104件のイベントが開催されるが、スポーツでの使用はわずかに1件しかない。2万2500席のさいたまスーパーアリーナは年間130件のうちスポーツは13件。どういう意図でこのデータを示したか分からないのだが、大きな器は使用料金が高いため、それに見合う集客力のあるイベントをスポーツ側が用意できていない現実がうかがえる。これでは有明アリーナを建設したところで、同じ結果になるのではないか。アリーナ建設の必要性を訴えるための根拠にもなっていない。

競技団体の決まり文句は「レガシー(遺産)を残して」。レガシーとは何だろう。五輪後に維持管理費で毎年億単位の赤字を垂れ流す施設をレガシーとは呼べない。施設自体がレガシーではない。残された施設を真のレガシーとなるように有効活用する責任はそれを利用する競技団体や各リーグにある。ならば、負のレガシーにしないための具体的な利用プランをスポーツ界が都民や国民に説明するのが筋だろう。

スポーツは日本を再興するか?」でも書いたように、政府はスポーツをアベノミクスの成長戦略の柱の1つに据えており、東京オリンピックを機に成長産業として拡大していくことが期待されています。しかし、そのためには、各競技団体は「選手第一」「レガシー」を金科玉条の合言葉に助成金を陳情するだけの組織から脱却しなければいけません。それができなければ、サステナブルな産業にはなりません。

明治になってスポーツが日本にもちこまれた際、学校教育制度をその受け皿にしてしまったのが、日本におけるスポーツの基本的なDNAになっています。日本独特の武道の精神と相まって、スポーツは主に自身の身体や精神を高める自己研鑽のツールとして活用されることになりました。

スポーツでは、「プレー(Play)する」という言葉が文字通り示すように、やる本人が楽しむ、そしてそれを見る人も楽しむというのが基本的な発想です。しかし、教育と結びついた日本では、その部分がカットされてしまいました。この考えが、今の「アスリートファースト」という言葉のルーツなのかももしれません。

スポーツの産業化を考える時、この「選手第一」の考え方は様々な弊害を生みだす恐れがあるので、気を付けて使う必要があると思います。

まず、顧客(見て楽しむ人)を想定していないので、「誰に」「どのような価値」を提供することにより「どうマネタイズするか」という発想が希薄です。その結果、いきおい「強いチームを作り、結果を残せばお客さんは入るだろう」という強化一辺倒の罠に陥りがちになります。そうなると、組織の幹部は元選手や元メダリストで占められるようになり、組織から成長に不可欠なダイナミズムが失われてしまいます。

確かに、強化は重要ですし、チームや選手が強ければ注目されますが、チームや選手のパフォーマンスは完全にコントロールできません。勝つ可能性を高めると当時に、勝利から得られる好循環でキャッシュを生み出す事業の備えが不可欠です。「強化」と「事業」の両輪がなければ、せっかく勝利を掴んでも、それをマネタイズし組織の拡大再生産に生かす機会を逸することになります(泥縄式)。

選手の意識も「競技場で最高のパフォーマンスを出すこと」に先鋭化してしまうため、ファンサービスや地域貢献活動、広報活動などは「練習や試合の合間に行う面倒くさい活動」のように理解されてしまい、ビジネスチャンスを逃してしまいます。プレーすることだけが目的となるため、当然引退後のセカンドキャリアへの備えも遅くなります。

スポーツが武道的な文脈でたしなまれ、それが学校の部活カルチャーに強固に取り込まれているため、競技間の壁も厚くなります。同時に複数のスポーツをプレーすることはタブーとなり、1つの競技を1年中プレーすることになります。1つの競技に特化すると、複数スポーツを同時に行う場合に比べて、スポーツによる怪我やバーンアウトのリスクが高まったり、運動選手としての能力開発が限定的になることが知られています。

また、基本的に野球出身者は野球しか、サッカー出身はサッカーしか見ないし応援しないため、ファン基盤も競技ごとにタコツボ化してしまいがちです。結果、市場も狭くなります。競技団体の経営にも、基本的にその競技出身者が多数を占めることになり、「日本スポーツ界の成長阻害要因であるドグマ主義的経営をどう解きほぐすか?」でも書きましたが、経営方針もドグマ化しやすくなり、ダイナミズムが失われがちになります。

僕は、武道や教育と結びついたスポーツのあり方を一概に否定する者ではありません。それはそれであっていいと思います。しかし、本気でスポーツの産業化を目指すのであれば、今までの発想を大きく変える必要があると思います。

しかし、逆説的ですが、顧客視点に発想を転換すると、今まで見えなかった大陸(金脈)が見えて来るはずなのです。「選手第一」(プロダクトアウト)から「顧客第一」(マーケットイン)に視座を変えると、「スポーツの価値は競技をプレーすることから生まれる」という前提からひっくり返るかもしれません。そして、実はこれが今世界のスポーツ界で起こっていることなのです。

例えば、顧客視点から見えてくるスポーツの新たな付加価値の例として、スポーツCSVが挙げられます。米国では、NBAを筆頭にスポーツの持つ公共性や社会性といった特性を生かし、それを事業の主軸に据えるという動きが生まれてきています。プレーするだけがスポーツの価値であるという時代は終わりを告げています。しかし、残念ながらこのパラダイムシフトは「選手第一」という視点からは見えません。

僕も10年くらい前から米国でこうした動きをみるにつけ、日本のスポーツ界は本当にもったいないな、まだまだ大きな可能性が眠っているな、いつか同じようなムーブメントを起こしたいなと思っていました。そして、ついに東京オリンピックが大きな引力になり、日本でもスポーツの社会における存在感がかつてないほど高まっている今、まさにこうしたパラダイムシフトが起こる兆しが見えてくるようになりました。

是非、世界のスポーツ界に出現した「見えざる大陸」を日本の多くの皆さんにも知ってほしいと思います。そして、世界に前例のない少子高齢化社会を迎えるにあたり、スポーツが社会課題を解決する主体になりえ、ソーシャルセクターとスポーツが共に持続的な成長を果たせる仕組みをもっと深く学びたいと思っています。

幸運にも、ここ1年くらいで様々なご縁に恵まれ、こうした志を共にする仲間に出会えたことで、12月16日(金)に以下のカンファレンスを開催させて頂くことになりました。是非、この機会にスポーツの新たな可能性を共有し、その有効活用の方法を一緒に考えていくきっかけにして頂ければと思っています。

場所は渋谷の国連大学で、入場無料です。昨日から告知を始めたのですが、あっという間に100名近い方からご応募を頂いています。個人的にはライツホルダーや代理店などスポーツの「中の人」にも是非来て頂きたいと思っています。師走で忙しい時期ですし、ご興味のある方は是非お早めにお申し込み下さい!

スポーツは日本を再興するか?

アベノミクスでは、2020年までに名目GDPを600兆にする計画を立てています。2015年度の名目GDPが約500兆円でしたから、あと5年間で100兆円を積み増す計画ということになります。

アベノミクスの詳細は「日本再興戦略2016〜第4次産業革命に向けて〜」をご覧ください。しかし、第4次産業革命とはすごいですね。。。

日本再興戦略2016では、10の「官民戦略プロジェクト」が掲げられていて、その1つがスポーツなんですね。ちなみに、10のプロジェクトは以下の通りになっています。

‖4次産業革命の実現

∪こ最先端の健康立国へ

4超エネルギー制約の克服と投資拡大

ぅ好檗璽弔寮長産業化

ゴ存住宅流通・リフォーム市場の活性化

Ε機璽咼校唆箸寮源裟向上

中堅・中小企業・小規模事業者の革新

┨兇瓩稜昔喊綮唆箸療験と輸出促進

観光立国の実現

官民連携による消費マインド喚起策等

「スポーツの成長産業化」のKPIの1つとしては、スポーツ市場規模が使われており、5.5兆円(2015年)の市場を2020年までに10兆円(+4.5兆円)、2025年までに15兆円(+9.5兆円)にするという意欲的なものです。2020年まで100兆円を積み増す計画のうち、4.5兆円をスポーツから捻りだすというわけですから、スポーツ産業の日本再興への貢献度は4.5%ということになります。

で、「スポーツの成長産業化」には以下の3つの大きな柱が示されています。

1)スタジアム・アリーナ改革

  I. スタジアム・アリーナに関するガイドラインの策定

  II. 「スマート・ベニュー」の考え方を取り入れた多機能型施設の先進事例形成支援

2)スポーツコンテンツホルダーの経営力強化、新ビジネス創出の推進

  I. 大学スポーツ振興に向けた国内体制の構築

  II. スポーツ経営人材の育成・活用プラットフォームの構築

3)スポーツ分野の産業競争力強化

  I. 新たなスポーツメディアビジネスの創出

  II. 他産業との融合等による新たなビジネスの創出

  III.スポーツ市場の拡大を支えるスポーツ人口の増加

日本のスポーツ界が長期的に健全に成長していくためには、2020年の東京オリンピックの「引力」をうまく使って「加速」していくことが必要であり、かつ、これが最後のチャンスなのではないかとも思っています。このタイミングで、スポーツが国の成長戦略の1項目に加えられたのは、まさに幸運と言うべきでしょう。あるいは、幸運だったと言えるように自分事として頑張らねばならないと思っています。

以前、日経ビジネスの「米国の常識から考える新国立競技場建設計画の迷走」でも書きましたが、日本のスポーツ産業の成長のボトルネックの1つは、スポーツ施設を運営する「官」に事業性がそもそも求められていない点にありました。1)で国がここにメスを入れようとしていることは、非常に大きなことだと思います(「スマート・ベニュー」という考え方には、個人的に少し危うさを感じるのですが、それはまた別の機会に述べたいと思います)。

また、2)で大学スポーツの産業化や人材育成プラットフォームの構築に言及している点も非常に共感します。これはどのビジネスでもそうですが、最後はやはり人ですよね。僕が荒木さんと一緒にSBAを立ち上げたのも、この思いがあったためでした。

日本のスポーツ界の成長を阻害するもう1つのボトルネックというか、ルートコーズになっているのは、スポーツが教育の文脈で語られることが多く、エンターテイメントとして処理されない点です。ここは根深いところで、学校教育システムを基盤とした部活カルチャーや日本特有の母性社会が相まって、強烈な競技縦割り文化を作っています。

ここで形成される価値観を変えていかない限り、DNAとしてスポーツの産業化を目指すことは簡単ではないと思います。その点、政府がどこまで踏み込んで考えているのか、非常に興味深いです。また、これは「官民」戦略プロジェクトですので、政府も民間からのインプットを求めています。私も何度か意見交換をさせて頂きましたが、スポーツの「中の人」がもっと声を上げないといけないと思っています。そして、声を上げるためには、少なくとも政府の考えを正確に知る必要があります。

というわけで、SBAは明日(11月2日)、スポーツ庁参事官補佐の松山大貴さんをお招きして、このプロジェクトの現状や今後の展望について直接お話を伺う機会を設けました。是非、自分の目で、耳で、自分の血税が使われるプロジェクトを知り、それに意見する機会を活用して頂ければと思います。

松山さんは、こう言うと怒られるかもしれませんが、良い意味で官僚っぽくない人です。むしろ、ぶっ飛んでいる人と言った方が良いかもしれません。この人となら、何かできそうという期待を抱かせてくれる人物です。有意義な時間にするためにも、できれば事前に以下の資料には目を通してから参加されることをお勧めします。僕も参加したかった!

日本再興戦略2016〜第4次産業革命に向けて〜(日本経済再生本部)

平成29年度概算要求主要事項(スポーツ庁)

スタジアム・アリーナ推進官民連携協議会(第1回:2016年7月27日) 配付資料

ファウルボールの代わりに地獄をつかんだ男。彼への贖罪は叶うか

日米ともに野球シーズンが大詰めを迎えています。

日本では広島カープが25年ぶりに日本シリーズ進出を決め、32年ぶりの日本一を目指して日本ハムファイターズと対戦しています。一方、MLBでは、シカゴ・カブスが71年ぶりにワールドシリーズ進出を決め、何と108年ぶり!の優勝を目指してクリーブランド・インディアンズとの対戦を決めています。

優勝から1世紀以上も遠のいているファンからしてみれば、WS進出にかける思いはいかほどのものなんでしょうか。そして、このWS進出を機に、ある男性の免罪がなされるか注目されています。

スティーブ・バートマン(Steve Bartman)

カブスファンなら、この名前を聞いたとたん複雑な思いが去来する、忘れることができない名前でしょう。

“事件”は2003年のNLCSに遡ります。3勝2敗でマーリンズをリードし、リーグ優勝まであと1勝に迫ったカブスは地元シカゴで第6戦に臨みます。3対0で迎えた8回表1アウト2塁、WS進出まであとアウト5つでした。打席に入ったルイス・カスティーヨの打ち上げたレフトのファウルフライを左翼手のモイゼス・アルーが猛然と捕球しに行った際、ポール際に座っていたあるカブスファンがアルーよりタッチの差で先にボールに触ってしまったのです。この事件で流れが変わってしまったカブスは、その後8点の大量失点で敗れ、翌日も連敗してWS進出の望みは絶たれました。

今日ほどソーシャルメディアが普及していなかった当時、球場内のファンは何が起こったのか分からなかったそうですが、テレビを見ていたカブスファンがバートマンを戦犯扱いし、その素性を暴露。実家には度々嫌がらせが行われ、とうとうバートマンはシカゴに住むことができなくなりました。

事態はさらにエスカレートし、彼のお陰でWS進出を果たしたマーリンズの地元フロリダからは、バートマン宛てにフロリダへのバケーションや移住プランのプレゼントが提供されたり(もちろん、広告効果を狙ったもの)、テレビCMのオファーも届くなど、一躍“時の人”になってしまいました。バートマンはCMのオファーを全て断り、バケーションプランなどは商品券にしてもらい、それを寄付したそうです。

その後、件のファウルボールが競売にかけられ、10万ドル以上の値段でレストランオーナーが落札。その後、レストランで“呪いのボール”の爆破イベントなども行われました。ここまで来ると、ちょっと常軌を逸していますね。今では、彼が座っていたレフトポール際の席は観光名所になっているそうです。

ESPNもドキュメンタリー「Catching Hell」(地獄をつかんだ男)というタイトルでドキュメンタリーを制作しています。僕もオンエアを見ましたが、丹念な取材に基づいたストーリー展開は迫力があり、ファウルボールの代わりに地獄をつかんでしまった男のターニングポイントが克明に明かされていきます。ファンの熱狂が方向性を間違うと一人の人間をここまで追い詰め、その人生をこうも狂わせてしまうのかと怖くなったのを覚えています(以下で視聴できます)。

さて、晴れて71年ぶりにWS進出を決め、有名な“ビリーコート(ヤギ)の呪い”とともにこの“バートマンの呪い”を解いたカブスですが、さすがにファンも行き過ぎを認め、贖罪の場を設けようという雰囲気になっているようです。WSは明日からクリーブランドで開催されますが、シカゴでの初戦となる第3戦でバートマンを始球式に招くというプランがあるようです。実際、これを彼が受けるかどうか。勝利は彼のトラウマを癒すことができるでしょうか。

タフネス

実はこの8月にNYの郊外に引っ越しまして、今は片道1時間半近くかけてマンハッタンに電車通勤するようになりました。今までは30分もあれば地下鉄で家に帰れたので、それに比べるといささか不便にはなりましたが、幸い通勤電車は必ず座れるため、移動中はモバイルオフィスだと考えるようにしています。近年は忙しさにかまけてブログも後手後手にまわってしまっていたのですが、この環境の変化でモノを書く時間をうまく切り取ることができそうな予感です。このポストも電車で書いていたりします。

マンハッタンでは地下鉄が24時間走っているので、帰宅時間を気にしたことなどなかったのですが、今は終電(といっても午前2時ごろまである)もあり、時間を気にしながら仕事をしないといけないので、これが良い意味でオフィスでの仕事に締め切り効果を生み出し、集中力を高めてくれています。

アパートから一軒家に引っ越したため、環境も大きく変わりました。田舎暮らしの今は何をするにも車が必要で、引っ越しと同時にスバルとトヨタを1台ずつ買いました(故障の多いアメ車は怖くて買えない)。家族で生活するには2台は必要なんですよ。余談ですが、NYも北の方に行くと雪が多いため、日本車、特にスバルの人気が圧倒的に高いです。駅の駐車場(郊外に住むと、最寄り駅までは車で行くのが普通。これをPark & Rideといいます)でざっと見ても、5〜6台に1台はスバルですね。スバルの次に多いのはホンダ、次いでトヨタでしょうか。それ以外の日本車はあまり見かけません。実は、うちは父親も弟もスバルに勤務しているので、これは鼻が高いのです。

閑話休題。アパートであれば大家がいるので、メンテナンスを自分でやる必要はなかったわけですが、一軒家だと何から何まで自分でやらなければなりません。しかも、引っ越したばかりで勝手がわからず、このストーブはどうやってつけるんだっけ?この照明の配線は?このスイッチは何だ?といった感じで手探りで新居に慣れている感じです。

家電のメンテナンスや故障、季節の変わり目に冷房・暖房器具を初めてつける際は、専門の業者を呼んで見てもらう必要があるのですが、1時間のサービスで100ドル、200ドルがあっという間に飛んでいきます。田舎の一軒家暮らしも楽ではありません。

で、先日家の窓枠が壊れていたので、大工を呼んで修理してもらった時のこと。修理に来た大工と世間話になり、お互い「どこからアメリカに来たんだ?」という話になったのですが、その大工はハンガリーから5年前に来たとのこと。なぜ来たのか聞いたら、ハンガリーでの暮らしが大変で、一度アメリカに観光に来た時に、この国で働いた方が豊かな生活ができそうだから、家族で一緒に来たとのこと。ちなみに、ハンガリーでも大工だったそうです。

もう永住権は取れたの?と何気なく聞いてみたところ、実はビザはない(つまり、観光ビザで入国して、そのまま不法滞在)とのこと。これにはちょっとビックリ。つまり、彼はもう母国には帰れない(帰ったら二度とアメリカには入国できない)んです。なんか、結構壮絶な話を聞いているはずなんだけど、彼はあっけらかんとしゃべるわけです。で、こう続けました。

「でも、アメリカって面白いよね。不法滞在の俺でも会社を作れて社員も雇える。税金だって払ってるし、娘も普通にアメリカの学校に不自由なく通ってるし」。唯一の心残りは両親を母国に残していることだそうです。「まあ、でも彼らがたまにアメリカに観光に来た時に会えるから」とあまり気にしていない様子。

僕もあまり話をしみったれた感じにしたくなかったので、「税金払ってるなら、トランプよりはまともだな」って言ってお互い大笑いしました。

アメリカに住んでいると、こうしたストーリーを聞くことが珍しくないです。特に世界中から人が集まってくるマンハッタンでは多い。母国の内戦から逃れてタクシー運転手やってますとか、そういう話は結構普通に聞きます。そして、生きるために仕事をしている彼らには、自分にはない強さを感じるのです。退路のない中で覚悟を決めて生きている彼らは、本当にタフです。

BREAK THE BORDER

企業は経営者の器以上には成長しないとよく言われますが、スポーツでも、球団経営はオーナーの器以上には成長しないと言えるのではないかと思います。

僕は米国で球団やリーグの経営者や幹部と話をすることが仕事の一部としてありますが、例えばCRMのベストプラクティスを調査していると、全く同じCRMソフトを使っていても、成功する球団と思い通りにうまく行かない球団がでてきます。これなどは、マネジメントの違いが経営の成果に違いを及ぼす端的な例だと思います。同じツールを使っても、社内の位置づけやマネジメントの違いで結果に大きく差が出るのです。

球団のオーナーシップルールの話をすると、NFLでは法人による球団保有が禁止されていますが(個人、あるいは投資家グループでしか保有できない)、これは法人が持つ組織目的と球団経営に利害相反が起こる可能性を排除するためです。球団を保有する企業と、球団経営に主従関係ができてしまうと、健全な球団経営が行えないと考えているためです。MLBも、法人保有は認めていますが、個人保有が奨励されていますし、実際に法人に保有されているのは、マリナーズやブレーブス、ブルージェイズなどごく僅かです。

例えば、オーナー企業の意向により、本来球団がやるべきことができないなどが、この利害相反に当たるところです。あるいは、オーナー企業の収益を伸ばすために、本来球団がやるべきでない仕事を行わざるを得なくなるケースもそうでしょう。

もちろん、法人が球団を保有することにより、逆にシナジーが生まれる可能性もあります。NBAやNHLなどはこちらを志向しており、オーナーにメディア企業が多いのはこれが理由でしょう。球団単体でできなかったことが、オーナー企業のサポートで可能になるケースです。

日本では、基本的に球団は法人に保有されているケースが大多数ですが、日本のスポーツビジネス界の歴史的発展経緯を考えると、これが必ずしもプラスに働かなかったケースが多かったようです。日本のプロスポーツをけん引してきたのはプロ野球ですが、1954年の国税庁通達により、球団の赤字は親会社の宣伝広告費として処理できるようになりました。

戦後の高度成長期で企業の業績が良かった時代は、球団を保有している企業にしてみれば球団経営で30億円の赤字が出ても、30億出してラジオや新聞、テレビで自社の名前が露出されればそれだけで良かったわけです。これは30億払って広告枠を買っている感覚に非常に近い。つまり、少し前の時代まで球団経営はMedia Buyingとほとんど同じだったわけです。

日本球界でも2004年の球界再編騒動を境に球団経営の近代化が急速に進み、後発リーグもプロ野球の悪い点や欧米スポーツリーグの進んだ経営施策を勉強しており、さすがに今では球団の顧客ときちんと向き合った経営を志向するようになってきていますが、球団を取り巻くビジネスには、過去の経緯を引きずったモデルがいまだに色濃く残っています。

例えば、球団経営の根幹とも言うべきチケット販売の業務はプレイガイドに丸投げしています。複数のプレイガイドやコンビニを販路に抱える現行モデルでは、販売情報をリアルタイムに把握することが難しく、球団のチケット販売計画の精度を上げたり、新たなテクノロジーを導入することを難しくしています。また、日本の個人情報保護法は世界一厳しく(基本的に情報取得者しか活用できない)、プレイガイドが取得した顧客情報を球団が活用できないという本末転倒な状況が起こっています。

スポンサーシップも広告代理店に強く依存しており、基本的には代理店が一度枠をすべて買い切り、代理店がリスクを負って企業に営業するケースが多いです。ただ、代理店には代理店の仕事の慣習や都合がありますので、それが必ずしも協賛企業の顧客満足度最大化につながらないケースがあります。

日本の広告代理店は、広告主とメディアをマッチングする媒体介在企業ですから、どうしても露出前提の対応になってしまいます。露出から包括的なアクティベーションに企業側のニーズがシフトする中、この代理店依存モデルでは柔軟な対応が難しくなってきています。

ビジネスで儲ける原則は、自分が胴元になってリスクを負うことですから、リスクを取らずに主な収益源を外注化してしまう今のプロスポーツのモデルでは、アップサイドはどうしても限定的になってしまいます。こうした過去の常識の元に立脚したビジネスモデルをどう変えていくかが、今後の日本スポーツ界の長期的なチャレンジになるでしょう。

さて、いよいよ今週木曜日(20日)に、新バスケットボールリーグ「Bリーグ」が開幕します。Bリーグでは、僕も顧問として関与させて頂いているのですが、まだまだ日本のバスケ界には伸びしろがあるため、守りに入るフェーズではなく、「BREAK THE BORDER」(垣根を壊せ)をスローガンに積極的に日本のスポーツ界にイノベーションを起こしていこうと経営幹部の皆さんと話しています。

今週末にこんなセミナーもやりますので、もしよかったら遊びに来てください!

B.LEAGUE”ビジネス”開幕!次世代スポビズモデルを探る 〜Bリーグは何を壊し、何を創るのか?〜

世界的な広がりを見せるスポーツ界の脳震とう問題

つい先日、飛行機の中で映画「Concussion」(コンカッション=脳震とう)を見ました。

これは、5000名を超える元NFL選手から起こされることになる集団訴訟のきっかけを描いた映画です。NFLは、プレーに起因する脳震とうの危険性を知りながら、選手にそれを周知せずに適切な対応を怠ったとして、2011年に損害賠償訴訟を起こされました。

パンドラの箱を開けてしまったのは、アメリカで永住権を取得したナイジェリア出身のベネット・オマル医師。元NFL選手が原因不明の頭痛やめまいなどから自殺や異常行動を取ることが頻発していたことに気付いたオマル医師は、その原因が現役時代のプレーに起因する脳疾患(後に慢性外傷性脳症=CTEと命名)にあることを突き止め、NFLにその対策を求めて奔走します。

アメリカのスポーツ界に君臨するNFLに喧嘩を売るのは、やはり普通のアメリカ人にはできないことだったんだなぁと映画を見てしみじみ感じました。オマル医師も、一度は追及を諦めようとしたのですが、その時の奥さんの言葉がまた泣かせるのです。これは、マイノリティの立場の人の方がグッとくる場面かもしれません。僕も「自分がなぜアメリカにいるのか」を自問自答するいいきっかけになりました。

このオマル医師役に扮するのが、ウィル・スミス。彼の演技が実に上手い。日本でも今年公開されるそうですが、是非オリジナル音声(日本語字幕)で見て頂きたい。アフリカなまりの英語を話す、芯の強い異国人医師を熱演しています。最後にNFL選手会の会合に招かれて行った彼のスピーチは本当に感動ものです。



僕も仕事柄、この訴訟については提訴された時からずっとフォローしていました。しかし、その裏にこんな人間ドラマがあったとは知りませんでした。また、選手の自殺や異常行動なども、映像で見るとその迫力や胸に訴えてくるものが全然違います。いろいろと書きたいこともあるのですが、ネタバレになるので止めておきます。

奇しくも冒頭で説明した脳震とう訴訟の和解がつい先日(4月18日)に正式に裁判所から承認されました。NFLは、引退後にCTEやパーキンソン病、アルツハイマー病などの脳疾患を患った選手や家族に総額10億ドル(約1000億円)の補償金を支払うことで合意したのです。

同様の脳震とう訴訟は、プロスポーツだけでなく、NCAAのアマチュアスポーツや高校スポーツにも広がっています。「米サッカー協会によるヘディング禁止措置の衝撃」でも書いたように、米サッカー界は提訴された訴訟の和解案として、10歳以下の子供にはヘディングを禁止するなどの安全対策を講じることを決めています。

そして、ついにこの流れが国境を越えてしまったようです。イングランドサッカー協会は4月9日、プレー中の脳へのダメージと引退後の脳疾患の関連性について調査するようにFIFAに対して要請しました。これは、元イギリス代表選手だったJeff Astleが脳疾患により59歳の若さで急逝してしまったことを受けたもののようです。

スポーツがビジネスとして成立するようになってまだ半世紀程度しか経っていません。その間、たくさんのイノベーションが起こされ、ビジネスモデルが進化して行きました。しかし、人間の肉体的能力には限界があります。勝利やビジネスの論理が優先されることで選手の健康が危険に晒されることはあってはならないことです。世界のスポーツ界が正しい方向に進んでくれることを願っています。

日本スポーツ界の成長阻害要因であるドグマ主義的経営をどう解きほぐすか?

突然ですが、スポーツビジネスの「戦略とガバナンス」と聞くと、どう思いますか?ちょっとイメージしづらいかもしれませんよね。

一般的にプロスポーツは「リーグ」と「球団」により構成され、それより1つ上のレイヤーに、その競技を統括する「協会」が存在します。ガバナンスは、この3者の役割分担と考えると、少しは分かりやすくなるかもしれません。

商業化(ビジネス)は「リーグ」と「球団」が担当し、代表チームの組織や普及・育成は「協会」が担当するという整理が一般的ですが、競技や国によりそれぞれの役割分担やバランスには違いがあります。

例えば、日本で言えば、サッカー界は協会の傘下にJリーグがあり、その元で各クラブが経営を行っているというピラミッド型のエコシステムが形成されています。力関係で言うと、やはり協会>リーグ>クラブとなるでしょうか。これは、ワールドカップという世界大会で代表チームが勝つことを日本サッカー界として最大の目標として掲げているためですね。

Jリーグの傘下にも、階層型に地域リーグが構成されており、グラスルーツまで視野に入れた大きなピラミッドが形成されています。開放型モデルの特徴ですね。

一方、日本のプロ野球は全く違うモデルになっています。

まず、「協会」に相当する組織がずっとありませんでした。プロ野球や大学野球、高校野球など、それぞれが別々のエコシステムを有しており、サッカーの様に協会の下に階層型に整理されている訳ではありません。ピラミッド型の階層にならずに、まるで別の競技であるかのように、別々に閉じた世界が作られています。こちらは、閉鎖型モデルの特徴です。

成功するプロスポーツ経営を行うためには、競技レベルを上げるというのは常識ですよね。下手くそなプレーでは、誰もお金を払ってまで見たいとは思えません。少なくとも、一見して「うぉー、スゲー!」と素人を唸らせることができるレベルにないと、プロスポーツの興行としては成り立ちません。

競技レベルを上げるには、普及・育成活動を積極的に行い、競技人口を増やすことが重要です。競技人口が増えれば、競技レベルは上がり、誕生するスター選手の数も増えるからです。

冒頭の整理では、普及・育成は「協会」の役割と言いました。でも、先ほど言ったように、日本のプロ野球には普及・育成を包括的に担当する協会は長きにわたりありませんでした。でも、世界屈指の競技レベルを誇っています。

「協会」が“あるべき役割”を果たしていないのは日本のプロ野球だけではありません。米国の4大スポーツは、協会がそもそも存在しないか、存在しても、無きに等しい程度の存在です。なのに、競技レベルは野球もバスケもホッケーもフットボールも非常に高い。右肩上がりの成長を続け、大いに儲かっています。

これはどう説明すればいいんでしょう? スポーツビジネスの経営において、成功するための「共通解」はあるのでしょうか? あるいは、ビジネスモデルにより、KSF(成功要因)は違ってくるのでしょうか? 成功するビジネスモデルを読み解くための「変数」とは何なんでしょうか?

前置きが大変長くなってしまいましたが、来週末の17日(日)に、こんなテーマでディスカッションを実施します。



先日、SBAのコアメンバーで議論していて、個別のセッションやオムニバス型のスクールでは、それぞれのコマが個別最適になっているため、結果として漏れてしまう視点があるのではないかという話になりました。確かに、例えば各収益領域での効果的な手法やトレンドを知っておくことが重要であるのは間違いないのですが、思考が狭く、先鋭的になってしまいがちです。

しかし、経営者としては、むしろ全体を俯瞰して本質を押さえ、組織の方向性がずれてきたら、柔軟に方向転換していくことの方が重要なのではないか。そして、日本のスポーツ界は、こちらのアプローチがやや不得手なのではないか、という仮説から生まれたセミナーです。

俯瞰してみるためには、自分の組織や競技「外」のことも知っている必要があります。自分とは異なる競技の経営モデルも視野に入れ、自分の組織との比較や、それぞれの長所や短所を踏まえつつ、「現在の経営環境を分析・判断すると、今のモデルが最適である」と常に自問自答を繰り返しながら、最適解を探して変化し続ける、というのが理想かもしれません。

しかし、日本では競技の縦割りの弊害なのか、競技間に大きな壁があるように思います。競技間で人材やノウハウの移転があまり多く見られないように見受けられます。誤解を恐れずに分かりやすく言えば、サッカーの人は野球をあまり知らないし、野球の人はサッカーをあまり知りません(ビジネスモデルという意味です)。

そのため、極端に言えば、盲目的に今のモデルを信奉し、「とにかく言われた目的地まで一生懸命早く走ります」というアプローチが多いような気がします。でも、「本当にこの目的地でいいのか?」「靴を履きかえた方がいいのでは?」といった前提を疑う思考があれば、もっと楽に目的を達成できるかもしれません。

米国のスポーツビジネスは良くも悪くもその点は非常にシンプルで、とにかく「どうすれば一番カネを稼げるのか」が指標になります。カネを稼げない手法や人材はどんどん淘汰され、進化していきます。

一方、日本のスポーツ界は、教育とスポーツが融合しているせいもあってか、米国ほど割り切れない競技が少なくないと思います。それは、良い点ももちろんあるのですが、(カネで序列ができないので)派閥や面子争いが多発したり、自分達が最初に採用した経営上のポジショニングがドグマ(教義)化し、それを軌道修正することを良しとしないような風潮も見られます。

もしかしたら、日本のスポーツ界の最大の成長阻害要因はドグマ主義的な経営なのかもしれません。先日、パネリストと下打ち合わせを行ったのですが、この日本のドグマ主義をいかに解きほぐしていくかが、当日の大きな流れになるかもしれません。

そして、当日はこのテーマにぴったりのパネリストにお越し頂くことになっています(笑)。

まず、FIFAコンサルタントの杉原さん。世界各国のサッカー協会に飛び回り、協会運営やリーグ・クラブのガバナンスのアドバイスをしています。杉原さんの口ぐせは、「コピペはダメ」。上手く行っている他の事例をただ真似しても上手く行かないので、自分の組織が置かれた環境に最適化して進化し続けるしかないということですね。

多くの国の異なるガバナンスモデルを見ている杉原さんだけに、説得力があります。スポーツ組織の俯瞰的なガバナンスを語ってもらうには最強の人でしょう。ここでは刺激が強すぎて書けませんが、日本のスポーツ界が当たり前だと思っている考え方に、いくつも疑問点を持っている視点には、いつも驚かされます。

次いで、弁護士の山崎さん。山崎さんのことは、プロ野球選手会の顧問弁護士やFIFProのアジア支部副代表といった選手の権利を守る側のお仕事でご存知の方は多いと思いますが、実はスポーツ組織のガバナンスの専門家でもあります。

今年、日本のバスケ界には新たにBリーグが設立されましたが、その契機となったのはFIBAからの制裁(活動停止処分)でした。文科省の推薦で混乱下にあったバスケ界に入り、誤解を恐れずに言えば、上手く日本バスケ界の利害が損なわれない形で“大政奉還”し、Bリーグ誕生の下地を作ったのが、他ならぬ山崎さんです。

そして、言わずとしれた荒木さん。日本のプロ野球界のことをこの人以上に知っている人は少ないでしょう。球団経営からリーグ経営まで、酸いも甘いも知り尽くしている?方です。

特に、ガバナンスという文脈では、荒木さんの千葉ロッテ時代の経営改革の話も参考になるのではないかと思っています。というのも、実は日本のスポーツ界で一番環境にうまく適応して進化しているのは、パ・リーグの球団なのではないかと思うからです。それはなぜか? 種明かしは当日に(笑)。

そして、最後に蒔平さん。彼女はbjリーグの千葉ジェッツを立ち上げた創設メンバーの一人で、今はスポーツITベンチャーに勤務しています。バスケと言う、今日本で最も動きのあるスポーツの黎明期をクラブ経営者として過ごし、マイナースポーツの台所事情も肌で知っている人材です。

今は「スポーツ×IT」という視点からアウトサイダーとして様々なスポーツに関わることになり、クラブ経営者の経験を持ちながら、より業界を俯瞰してみることができる数少ない人材と言えるでしょう。

ということで、当日はこんなメンバーから一日あーでもない、こーでもないという議論をやってみようと考えています。きっと今までのセミナーとは一味違った新たな視点や気づきに出会えるのではないかと、司会者ながら期待しています。

解決されつつある代理人の“ダブル・エージェント問題”

March Madnessもついに土曜日にFinal Fourが行われ、名門North CarolinaとVillanovaが決勝進出を果たしました。今晩、いよいよ決勝なのでどちらが勝つのか楽しみです。

ところで、NCAAバスケでは古豪として知られるMemphis大学で、ヘッドコーチの代理人NextLevel Sportsの“ダブル・エージェント問題”が発覚して物議を醸しています。同大学バスケ部は残念ながら最近は低迷を続けており、現ヘッドコーチのJosh Pastnerの手腕が改めて問われることになっています。

実は、同社はMemphis大学のAD(Athletic Director)のマネジメントも行っているんですね。つまり、雇う側(AD)と雇われる側(コーチ)の両方の代理をしていたことが問題視されているのです。実際、Pastnerは現ADのもとで2013年に契約を延長しており、2018年までの5年契約を結んだのですが、この際、大学側が契約途中で彼を解雇する場合は1060万ドルの違約金を支払うというバイアウト条項が付与されていたんですね。

これでチームの成績が良ければ問題にはならなかったのかもしれませんが、近年の成績低迷の上、この妙にコーチに優しいバイアウト条項の存在も明るみになり、ADとマネジメント会社がグルになってコーチを雇ったのではないかという疑惑が浮上してきたという訳です。

大学側はこの代理人とADに利害相反があった可能性があるとして、現在調査を進めています。代理人の利害相反については、今年の2月にNBAも同じ代理人が選手とコーチやGMなどを同時に代理することを禁止するなど、代理人規則の厳格化に着手しており、今後、米スポーツ界ではプロ・アマを通じて代理人の利害相反の排除を徹底する方向に向かっていくのではないかと思われます。

 

米サッカー女子代表が男女の待遇格差是正を求めて不服申立て

米サッカー女子代表チームが、サッカー協会による男女の待遇格差に我慢できなくなりアクションを起こしました。

U.S. women's team files wage-discrimination action vs. U.S. Soccer(ESPN)
「男子との報酬格差に不服」米サッカー女子代表(読売新聞)

ご存知のように米サッカー女子代表はなでしこジャパンの好敵手。FIFAランキングも堂々の1位です。実際、米国内では弱い男子(といっても、FIFAランキングは30位)よりも女子代表の方が圧倒的に人気があります。

そして、日本との大きな違いは、女子代表の方が男子代表よりも稼ぐ点です。2015年では女子代表の方が男子よりも2000万ドル(約22億円)も多く稼いでいたとのこと。それにも関わらず、女子の受け取る報酬は男子の1/4に過ぎないということで、このたび代表チームの主力5選手(日本でもお馴染みのGKホープ・ソロやFWアレックス・モーガンら)が3月31日に米雇用機会均等委員会(Equal Employment Opportunity Commission)に不服申立てを行いました。

この訴え、分かりやすく言えば、日本でも叫ばれている「同一労働同一賃金」を求める争いとも言えます。同じサッカーを職業としてやっていて、しかも男子よりも稼いでいるのに、なぜ報酬が低いのか?という疑問に、これまで米サッカー協会は明確な回答をしてきませんでした。

過激な発言で知られるソロ選手などは、「私たちは世界最高のチームで、ワールドカップで3回、オリンピックで4回優勝した。男子は大会に出場するだけで、私たちが主要大会で優勝して受け取る以上の額を手にしている」という声明を発表するなど、血気盛んです(笑)。

訴状では、
  • 女子は親善マッチ20試合(年間で求められる最低試合数)を全勝しても選手一人当たり9万9000ドルしかもらえないのに、男子は同じ条件26万3320ドルを手にする
  • 男子は全敗しても10万ドルが保証されている(女子の全勝以上の金額)
  • 20試合以上プレーしても、女子の場合追加報酬はないのに、男子は1試合につき5000ドル〜1万7625ドルが支払われる
などの報酬条件を明らかにし、男女の不平等な状況を公表しています。

米国では、USオープン(テニス)などでは完全に男女同一賃金(Equal Pay)が確立しています。つい先日、BNPパリバ・オープンの大会ディレクターが「もし私が女子選手だったら、毎晩ひざまずいて神に感謝するだろう。テニス界をけん引する、ロジャー・フェデラーやラファエル・ナダルが生まれてきたことをね」などと女子が男子の人気・実力に便乗していると発言して大きな批判を浴びたばかりです。

特に米国サッカー界では女子代表の方が男子代表より稼いでいるだけに、この申立ての行方が気になりますね。サッカー協会がどのように反論するかも興味があります。

ちなみに、女子代表チームを弁護するのはNFL選手会やNBA選手会の顧問なども務める大物弁護士のJeffrey Kessler。米サッカー協会は苦戦するでしょう。

しかし、この不服申立てを行った3月31日というタイミングもKessler氏の指示だったのかは知りませんが、かなり練られていたように感じます。というのも、米男子代表チームは3月25日にアウェイのグアテマラ戦にまさかの敗戦を喫し、2018年WC予選敗退の崖っぷちに追い込まれていました。29日に再戦するホームのグアテマラ戦で敗れると、WC出場資格を失うという状況でした。

結果的に29日に勝利して事なきを得ましたが、ここで敗れていれば、「男子代表はWC出場もできないのに、世界ランキング1位の女子代表の4倍の報酬をもらっている」とその格差が際立つストーリーになっていたかもしれません。

いずれにしても、男女の報酬が最終的にどのようなロジックによって決められるべきなのかについて、協会や当局がどのような主張をするのか注目です。男女同一賃金の実現に向け、一石を投じる戦いになるでしょう。

インターン必読書

入社3年目までに勝負がつく77の法則」でも書いたように、うちのインターンには必読書があります。特に社会人経験の少ない、もしくは全くないインターンにはこの本を課題図書として薦めています。

多分、いわゆる「ゆとり世代」や「さとり世代」が増えつつある今の社会の雰囲気や学生気質から考えると、むしろ嫌われるような言葉や価値観満載の本かもしれません。例えば、こんな感じです。

・20代のうちについた差は取り戻せない
・とにかく量をこなす
・叱られたら「ありがとうございます」
・地獄の中でこそ得るものが多い
・守衛のおじさんの名前を覚える
・自分のまわりにはつまらないヤツしかいないのは、自分がつまらないヤツだからだ
・どんな仕事でも、結果が出るまでには10年かかる

ね、嫌ーな感じでしょ。僕が20代の頃にこの本を読んでも響かなかったかもしれません。実際、僕がこの本で指摘されている“法則”の重要性や普遍性に気付けるようになったのは、独立・起業してからです。

そして、最近もう1冊、これもうちのインターンの必読書にしよう!と思った本に出会いました。「コンサル一年目が学ぶこと」です。

この本は若干手前味噌なところもあります。というのも、僕が新卒で入社したアンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)の元コンサルタントの方が書いている本だからです。

今でこそ、「外資系」と言えば巷でももてはやされている感があるようですが、僕が入社した1996年当時、エリートや常識人が外資系に就職するなんて考え方がなかった時代です。親からも入社を強く反対されました(笑)。そんな時代だったからこそ、クライアントにバリューを出すことを徹底的に叩き込まれました。

奇しくも、「入社3年目までに勝負がつく」ではないですが、頭脳明晰・一流コンサルタントでもない自分が、NYで独立起業して10年もやってこられたベースになっているのは、アンダーセンで叩き込まれたコンサルタントとしてのベーシックなスキルや態度があったからだと痛感します。

2冊の本は対照的な内容に見えるかもしれませんが、前者はビジネスパーソンに必要となる普遍的な態度(Attitude)について、後者はどの産業にも共通するスキル(Portable Skill)について書いてあると整理すれば良いと思います。
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