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「スタジアム」と「ボールパーク」の違い

最近、MLBでは「○○スタジアム」という名称がめっきり減ってきています。新設された球場のほとんどが「○○パーク」とか「○○フィールド」といった名称を使っています。これには理由があります。

「Stadium」という単語は、アメリカ人に戦艦とか美術館のような巨大で無機質な建物を連想させる単語なんだそうです。以前「“カムデニゼーション”のルーツ」などでも書きましたが、1960年代からの第一次スタジアム建設ラッシュで作られた球場の多くはNFLとの共用で、観客収容人数が7万とか8万とかいう巨大なもので、まさに「スタジアム」と呼ぶに相応しい建物だったわけです。

しかし、カムデンヤーズが革命を起こしたため、野球場の設計トレンドが大きく変化し、「スタジアム」と呼ばれるにはそぐわなくなってきたんですね。それよりも、「パーク」とか「フィールド」という、何だか行くと楽しそうな遊園地のような名前が増えてきました。

現在、MLB30球団の球場でスタジアムという名称が残っているのは、ロイヤルズの「カウフマン・スタジアム」、エンゼルスの「エンゼル・スタジアム」、ドジャーズの「ドジャースタジアム」、カージナルスの「ブッシュ・スタジアム」、ヤンキースの「ヤンキースタジアム」の5つだけです。うち、前者3つは第一次建設ラッシュで立てられた古いスタジアムです。

以前、新ヤンキースタジアムの設計者と話した時、「ヤンキースは意図的に“スタジアム”という名称を使っている」と語っていたことが印象に残っています。ヤンキースタジアムは、“カムデニゼーションの進化”を拒んでいる例外的な球場なんですね。行ってみると分かるのですが、ヤンキースタジアムでは野球観戦以外の付加価値を提供しようという姿勢は強くありません。

「王者たるヤンキースは、“パーク”とか“フィールド”といったヤワな名称は使わない。どしりと構えて最高の試合を見せる場所こそヤンキースタジアムなんだ」とその設計者は語っていました。だから、今流行りのボールパーク運動に組する気は元からなかったんだそうです。

スタジアムの名称1つとっても、設計者の想いが込められているんですね。

イチローを獲得したヤンキースの皮算用

日経ビジネスオンラインに最新記事がアップされました。

  大物日本人選手がMLB球団に移籍する際は、必ず「経済効果はいかほどか?」「金儲け目的で獲得したのでは?」という議論・憶測を呼びます。まず、MLBに限れば経済効果ありきの移籍というのは聞いたことがありません。今回のイチロー選手のヤンキース移籍もそうでしょう。

  増収効果という意味では、松坂選手のレッドソックス移籍よりはあると思いますが、球団経営へのインパクトという意味では大きくありません。そんな内容を書いています。 

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■イチローを獲得したヤンキースの皮算用
〜日本人選手の移籍を巡ってよくある誤解

日本でも大きく報じられたと思いますが、イチロー選手が7月23日にシアトル・マリナーズからニューヨーク・ヤンキースに移籍しました。  

 メジャーリーグ(MLB)では、毎年7月31日がトレード期日であるため、この時期は大きなトレードがまとまりやすいタイミングではあります。殿堂入りが確実視されている大ベテラン選手がニューヨークにやってくるとあって、地元のヤンキースファンも大歓迎の様子です。  

 イチロー選手は今シーズンがマリナーズとの5年契約の最終年でした。今年の年俸は約1800万ドル(14億4000万円)と報じられていますが、今回のトレードでヤンキースはマイナー選手2人を差し出すだけでイチロー選手を手にできたわけですから、かなりお得な買い物をしたということになります。今季のイチロー選手の年俸は、その7/8をマリナーズが引き続き支払い、ヤンキースが負担するのは225万ドル(1億8000万円)に過ぎません。  

 私はベースボール・オペレーションの専門家ではありませんので、移籍の戦力補強上の評価はその道のスペシャリストにお任せするとして、今回のコラムではイチロー選手の移籍がヤンキースの球団経営にどんなインパクトを及ぼすのかを考えてみようと思います。

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レッドソックスがGiveawayをやらない理由

「鈴木さんが今まで訪問したスタジアムの中で一番良かったのはどこですか?」という質問をよく受けます。 僕は「何が良いのかにもよるけど、球場の雰囲気が良いのはフェンウェイ・パークかな」と答えます。


フェンウェイの雰囲気は独特です。フェンウェイの雰囲気を作り上げている1つの要素は、球場そのものが構造的に醸し出す雰囲気です。ご存知のように、フェンウェイはMLBで使用されている球場としては最古のもので、今年100周年を迎えます。

築100年のスタジアムですよ。これは凄いことです。

日本橋にある日銀本店が1896年竣工とありますから、近い世代です。同じようなイメージです。古い建物を大事に使い続けています。

フェンウェイでは、1階席は昔のままのシートを使っているので、とっても狭くて固く、しかも2階部分を支える柱があって試合が見えない席などもあります(Distracted View Seatとして売られている)。こんな柱のある球場は、今ではなかなかお目にかかれませんが、20世紀前半に作られた球場はこのような形が多かったようです。

「100年前も今と同じようにファンが身を寄せ合って応援していたんだろうなー」なんて思うと、感慨深いです。


そして、フェンウェイの独特の雰囲気を作り上げている2つ目の要素は、観客が醸し出す雰囲気です。

東海岸は西海岸に比べて少し排他的な雰囲気があるのですが、特にボストンはその傾向が強いです。身内には優しいけど、一見さんにはよそよそしい。雰囲気が京都に似ているという人もいます。

ボストンはベースボール・タウンです。僕も5年ほどニューイングランド地方で過ごしたことがあるのでよく分かるのですが、ニューイングランドのナンバーワン・スポーツはフットボールでも、バスケでもなく、やっぱり野球なんですよね。

このような街の雰囲気やスポーツの歴史と相まって、レッドソックスファンは誰も一家言あるコアなファンだらけ。皆、レッドソックスを心から愛していますが、ちょっとだけ気難しい。これがレッドソックスファンの特徴です。

球団もいろいろリサーチを行った結果、こうしたファン気質をよく知っていますから、レッドソックスは他の球場で見られるような定番プロモーションを行いません。

例えば、イニング間にTシャツを投げ込んで盛り上がりを煽るプロモーションが今流行っていますよね。あとは、Giveaway。ボブルヘッドなどは定番アイテムで、週末の集客アイテムとして良く使われます。チャンスには「さあ、盛り上がろう!」(Make Noise)というメッセージをオーロラビジョンに映し出すのもよくある「手」です。

でも、レッドソックスはこうしたプロモーションをやりません。ファンが気分を害するからです。

「俺たちはサーカスの動物じゃないんだ」。「試合の見方を指図される覚えはない」。誇り高きレッドソックスファンは、こう感じてしまうんです。

ファン基盤の特徴は千差万別で、同じということはありません。これは米国内でもそうですし、日本国内でもそうです。10球団があれば、10の異なるファン基盤が存在します。大切なのは、猿まねに陥るのではなく、ファン目線をしっかり意識してファンに受け入れられるプロモーションを行うことでしょう。

細部にこだわり世界観を作り上げる

ツイッターでもつぶやきましたが、今週頭に今年オープンしたマイアミ・マーリンズの新スタジアムを訪れる機会がありました。 外見的には、野球場というより美術館といった雰囲気です。

 

行ってみて驚いたのは、スタジアムの設計がブランドマネジメントの観点からかなり練られて作られていた点です。

マーリンズは今年から球団名を「フロリダ・マーリンズ」から「マイアミ・マーリンズ」に改め、球団ロゴも一新してブランドの抜本的な再構築を行いました。このスタジアムもその一環と言えるでしょう。

ちなみに、ロゴはこんな感じで変わりました。右が新しいやつです。


ロゴがお目見えした時はかなり不評で、僕もいまいちピンとこなかったのですが、マイアミに行ってみるとこれが妙にしっくり来るのですから不思議です。

マイアミはとにかく蒸し暑く、トロピカルで開放的な雰囲気の街です。NYの張り詰めた雰囲気の中にいるとしっくりこないものでも、あの雰囲気にいるとぴったりに思えるんですよね。

最近のロゴは、単にロゴ単体として格好良いかどうかだけでは決めていないように思います。アパレルやキャップに着けたときに売りやすいロゴなのかどうかもかなり大きな判断になっているように感じます。

そういえば、今年からNBAニュージャージー・ネッツがブルックリンに移転するため、先日新しいネッツのロゴが発表されました。新ロゴはオーナーの一人でラッパーのJay-Zがデザインしたものですが、白黒のモノトーンの斬新なロゴで、早くもマンハッタンのNBAストアなどでは一押し商品として売られています。


日本でもそうですが、アメリカでも「ブルックリン」というのは1つのシックなブランドとして認識されているので、スポーツ関係者の間でもネッツのグッズはバカ売れするに違いないという噂でもちきりです。ひょっとしたら、日本でもストリート系の若者の間で人気が出るかもしれませんね。

さて、話をマーリンズに戻します。冒頭の写真をよく見て頂くと、スタジアムに向かう通路がロゴと同じ配色になっていることが分かると思います。拡大すると、こんな感じになっています。


球場の中に入ってみても、青、赤(橙)、黄色、緑を基調としたトロピカルな配色で、ロゴと同じ世界観が保たれています。





この球場の名物で、ホームランが出るとフロリダ名物の魚や鳥、フラミンゴたちが踊りだす左中間のこのオブジェも同じ配色です。


こうした独自の世界観を作り出す細かいこだわりが重要だと思います。球場に来て、グッズを手にし、試合を見て、家に帰るまでどこの顧客タッチポイントでも同じ世界の中にいると感じてもらえる。これが雰囲気づくりで大切なのでしょう。

あ、そうそう、この球場でもう1つの名物をご紹介するのを忘れていました。何だか分かりますか?


そうなんです。バックネットに熱帯魚の水槽が埋め込まれているんですよ(笑)。これぞフロリダって感じですよね。

米メジャーリーグの盤石ネットビジネスに思わぬ暗雲

日経ビジネスオンラインに最新記事がアップされました。

こないだブログで少し触れた、ファンがMLBのネットサービスを反トラスト法違反で提訴した件を、もう少し詳しく解説してみました。

実は、先日触れ忘れた重要な点が1つありました。1961年スポーツ放送法です。これは、リーグ一括のテレビ放映権契約(本来なら取引制限に当たる)を反トラスト法から免除するというものです。

制定された当時は、もちろんインターネットなどなかったわけですから、ネット中継が同法の対象となるのかが大きな焦点となるでしょう。

ちなみに、日本では、リーグ一括のテレビ放映権契約は司法審査を受けていません。

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■米メジャーリーグの盤石ネットビジネスに思わぬ暗雲
 〜ファンがネット中継サービスを反トラスト法違反で提訴

 米国で最もネットビジネスを成功させているプロスポーツはどれでしょうか? それはメジャーリーグ(MLB)です。

 MLBのネットビジネスを統括するMLB Advanced Media(MLBAM)は、2000年に設立されて以来右肩上がりで成長を続け、10年後の2010年には6億8500億ドル(約548億円)の売り上げを記録しています。同年のMLB全体の年商が約70億ドル(約5600億円)ですから、年商の約1割をインターネットから生み出している計算になります。

 実はこれはすごい数字なのです。というのも、現在MLBがリーグとして契約している全国放送テレビ放映権料の合計が約7億ドル(約560億円)ですから、MLBはたった10年でこれに匹敵する規模のマーケットを作り出してしまったのです(これとは別に各球団が独自に結ぶローカル放送テレビ放映権もある)。

 しかし、実は今、盤石と思われたMLBのネットビジネスに暗雲が立ち込めています。「MLBのネットビジネスは反トラスト法(日本の独占禁止法に当たる)に違反する」として、ファンが5月9日にMLBAMらを提訴したからです。

 MLBのネットビジネスが独禁法に違反するとはどういうことなのでしょうか? 今回のコラムでは、MLBのネットビジネスの特徴と、独占との紙一重で築かれたその脆弱性について解説してみようと思います。

(続きはこちら
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ファンがMLBを反トラスト法違反で提訴

大きなニュースが飛び込んできました。5月9日にファンがMLBを反トラスト法(日本の独禁法)違反で提訴したのです。

MLBはアウターマーケット(視聴者の地元以外で開催される)の試合中継をパッケージ販売しており、インターネットなら「MLB.TV」、衛星放送なら「Extra Innings」として売られています。例えば、ニューヨーク在住なら、このパッケージを通じてヤンキースとメッツのホームゲーム以外の全試合を視聴することが可能になります(ホームチームの試合は、ローカル局の放映権を保護するためにブラックアウトされる)。

原告は、こうしたMLBの視聴パッケージにより

1)見たくもないチームの試合まで余計にパッケージ化されている
2)ホームチームの試合がブラックアウトされる

の2点が不当な取引制限に当たるとして、反トラスト法違反で提訴したのです。

この訴訟の見どころ?は2つあると思います。

1つは、アウターマーケット視聴パッケージビジネスに与えるインパクトです。MLBに限らず、米メジャースポーツはネットや衛星放送を通じてアウターマーケットパッケージを販売しており、これが大きな収益源になっています。もしこの販売形態が反トラスト法違反と判断され、抱き合わせ販売やブラックアウトが禁止されれば、パッケージ販売からの収益低下は避けられませんし、何よりローカルテレビ放映権に大きなインパクトがあるでしょう。

MLBは、マーケットによってはローカル市場でのネット視聴権を放映権を持つローカル局に開放しているところもあるので、ブラックアウトルールを基盤に整備されている既存のテレビ・ネット放映権モデルは再考を余儀なくされるでしょう。

かつてCDM訴訟でMLBが敗訴したため、ファンタジーゲーム事業者へのライセンスビジネスが消滅してしまいましたが、それ以上に大きな収益上のインパクトがある訴訟と言えそうです。

2つ目は、MLBの反トラスト法免除法理にどこまでメスが入るのかという点です。

MLBは1922年のフェデラル判決により反トラスト法対象外とされている唯一のプロリーグです(その経緯詳細は、「MLBが享受する反トラスト法免除法理とは?」「MLBが享受する反トラスト法免除法理とは?」参照)。しかし、その後の度重なる訴訟でのMLBの免除法理の解釈はまちまちで、どこまでそれが適用されるのかについて明確な判断はなされていません。今回の訴訟で、この点がどこまで明らかにされるかも大きな焦点でしょう。

実は、今回の訴訟と同じ原告団が今年3月にNHLを相手取って同様の反トラスト法訴訟を起こしています。この辺は、まずは免除法理のないNHLを相手に訴訟を起こし、そのノウハウを難敵MLBへの訴訟に生かすという意図なのかもしれません。考えすぎでしょうか。

【参考情報】

ダルビッシュ効果はどの程度か?

ダルビッシュ選手がいよいよMLBデビューしましたね。本人としてはほろ苦いデビューだったかもしれませんが、勝ちも拾えたし、イチロー選手も活躍したので、日本のメディアとしては一番うれしい展開だったかもしれませんね。

ところで、松坂選手が渡米した時も話題になりましたが、ダルビッシュ選手を獲得したレンジャーズにとって、その経済効果はどの程度あるのでしょうか? 

そもそも、経済効果を目的として海外選手を獲得しているのかどうか、という点が疑問かもしれませんが、現場サイド(Baseball Operation)はそこまで考えていないはずです。「活躍してくれた結果としてビジネスがうまく行ったら嬉しいな」という感じだと思います。少なくとも松坂選手の場合、レッドソックスは単純に戦力補強の一環として考えていました(これは球団幹部に聞いた話なので、間違いありません)。

国際戦力上、外国人選手が活躍してくれることは成功のための必要条件ですが、マネーありきで実力のない選手を無理やりプレーさせるということはないはずです。米国で最も国際戦略を成功させているのはNBAですが、国際的な強化施策の延長線上に外国人選手の活躍があり、その結果、海外マーケットの取り込みがあるわけで、その順序が逆になるということはありません。

ダルビッシュ選手の場合、入札金約5170万ドル+6年総額6000万ドルと言われているので、球団として選手獲得に費やした資金は1億1170万ドルとなります。入札金は、形式的には年俸とは認識されず、課徴金制度にもカウントされませんが、球団から見れば実質的な年俸ですから、平均年俸は1861万ドルということになります。この額は、今年のMLB選手の上位20位にランクインする数字なのですが、要はレンジャーズは投手としてこれだけの評価をダルビッシュ選手に下しているということだと思います。

さて、話を経済効果に戻しましょう。

松坂選手がMLB入りした際、日経ビジネスのコラムで「松坂効果はほとんどない」と書きました。MLB球団の主な収入源は、1)チケット販売、2)メディア権利料(テレビ、ラジオ)、3)スポンサーシップ、4)グッズ・飲食の4つですが、人気球団でチケット完売記録を続けていたレッドソックスには、そもそも1)4)(飲食)のアップサイドはなく、3)もほとんど同様の状況でした。2)と4)(グッズ)はMLBの収入になりますから、球団収入はほとんど上がる余地がなかったのです。

では、ダルビッシュ選手の場合はどうでしょうか?

2)と4)(グッズ)の状況は一緒です。恐らく、松坂選手の場合と比較して一番違うのは、1)でしょう。レンジャーズの場合、昨年の観客収容率は約74%で、平均して約6000席ほどの空席があります。ダルビッシュ選手の活躍により、“ダル・マニア”が球場に押し掛けるような状況になれば、アップサイドは期待できることになります。ただし、野手のように毎日試合に出場するわけではないので、その効果は限定的かもしれません。

3)については、テキサス州には日系企業も多いので、球団公式スポンサーにそうした企業が加われば収入アップということになります。ただし、多くの企業は露出目当てでしょうから、テレビ映りの良いバックネット広告などへの露出を図ることが予想されます(昨日の試合の「ほけんの窓口」のように)。

ただし、リーグが管轄する全米放送、オールスターゲーム、プレーオフ、ワールドシリーズなどにおいては、こうしたテレビに映る内野看板は全て放映するテレビ局の収入になるので、国際放送もそれに準じているのではないかと推測します。つまり、球団の収入にはならないということです。

こうしてみると、現実的にアップサイドが期待できるのは、チケット販売と飲食のみということになりそうですね。昨年のレンジャーズのFCI(4人家族が1試合で消費する平均金額)が約160ドルでした。仮に、ダルビッシュ選手が中4日で30試合に登板し、登板した試合は満席(6000名=1500家族アップ)とすると、年間720万ドルの増収という計算になります。実際はプレミアムシートが入ってきたりして計算はもう少し複雑になりますが。

MLBが推進する国際ドラフト構想のインパクト(下)

日経ビジネスオンラインに最新記事がアップされました。MLBが推進する世界ドラフト構想の最終回です。今回は、MLBに系列化され、骨抜きにされてしまったドミニカ球界の事例を紹介し、日本でも同様のことが水面下で起こりつつあるという話を書いています。

記事には書かなかったのですが、高校、大学のレベルでも高野連や大学野球連盟に加入せずに独立リーグ球団や社会人球団との提携を模索する学校法人も出始めており、もし独立リーグ球団とMLBが提携した場合、より早い段階からMLBに人材流出が始めることになるかもしれません。

日本の独立リーグの現状については、産経新聞の喜瀬さんが詳しくレポートされていますので、興味がある方はそちらも是非ご覧下さい。

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■MLBが推進する国際ドラフト構想のインパクト(下)
 〜日本球界はドミニカの二の舞になるのか?

 前回までのコラムでは、MLBが推進する国際ドラフト構想の概要や、それが日本球界に与えるインパクトをお伝えしました。しかし、世界ドラフトをもう一段大きな視点から眺めると“別の景色”が見えてきます。そして、その景色こそ、世界ドラフトの持つ本当の恐ろしさを象徴するものなのです。

 今回のコラムでは、吸収・拡大をDNAとするMLBが世界ドラフトをツールとしてどのように活用しようとしているのかを概観し、日本球界の“今そこにある危機”について考えてみようと思います。

 MLBでは、2011年シーズン開幕時点で833名の一軍登録選手のうち27.7%に当たる234名が外国人選手でした。国籍別でみると、最も多いのはドミニカ共和国で86名、次いでベネズエラが62名。カナダとプエルトリコは現行のMLBドラフト対象となっているため、日本はドラフト対象外の国としては4番目に多い国ということになります。

 表からも分かるように、一軍登録の外国人選手はドミニカ共和国とベネズエラの選手だけで外国人選手の63.2%(MLB全体の17.8%)を占め、日本人選手(10名)の占める比率は外国人選手の4.3%(全体の1.2%)に過ぎません。

 日本以外のドラフト非対象国トップ5の名前を上から挙げてみます。ドミニカ共和国、ベネズエラ、キューバ、メキシコ、オーストラリア。これらの国に共有する点は何でしょうか?

(続きはこちら
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MLBが推進する国際ドラフト構想のインパクト(中)

日経ビジネスに最新コラムがアップされました。日経ビジネスへの寄稿も早いもので5年目になりました。いつもご愛読ありがとうございます。今年もまた様々なご意見・ご批判を賜れればと思います。

さて、年をまたいでしまいましたが、MLBの国際ドラフトに関するコラムの続編です。今回は、日米の移籍ルートにどのような影響を与え得るのかを少し具体的に考えてみました。

国際ドラフトは、海外選手を一律に「新人選手」としてドラフトにかけてしまおうとする発想なので、日本のようにプロ野球のレベルが高い国にとっては、様々な不整合が生じてしまいます。コラムでは、仮に世界ドラフトがそのまま日本球界に適用された場合どのようなシナリオが考えられるのかを、1つの思考実験として提示してみました。

日本球界にはある程度日米の利害を調整した形で最終的に導入されることになるとは思いますが、その際にはどのような点に配慮すべきなのかを考えてみました。

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■MLBが推進する国際ドラフト構想のインパクト(中)
 〜移籍制度の抜本的な見直しを迫られる日本球界

 読者の皆様、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

 2012年も引き続き米国から最新のスポーツビジネス情報をお届けしたいと思います。私は日本のスポーツ界を健全に発展させる一助になりたいと願う者です。私のコラムが参考情報として、あるいは反面教師として少しでも皆様の創造性を刺激する“考える糧”になることができれば幸いです。

 さて、年をまたいでしまいましたが、MLBが推進する国際ドラフト構想に関するコラムの続編です。前回、私が伝えたかったメッセージを一言で言えば、「MLBが推進する国際ドラフト構想は日米間の選手移籍に大きなインパクトを与え得るもので、その動向を注視した方がよい」というものでした。特に、昨年締結された新労使協定に盛り込まれた世界ドラフトへの布石とも言える動きについては、ほとんど日本では報じられていなかったこともあり、警鐘の意味も込めてその背景等も含めてお伝えしました。

 今回のコラムでは、実際に世界ドラフトが実施された場合、日米間の選手移籍にどのような影響が出る可能性があるのかを、もう少し具体的に考えてみようと思います。米国でも、昨年12月に世界ドラフトのあり方を協議する「国際タレント委員会」が立ちあがったばかりでまだ暗中模索の状況ですが、1つの思考実験として捉えて頂ければと思います。

 現在、日本人トップ選手の日本球界から米球界への主な移籍ルートとしては、日本野球機構(NPB)を経て移籍する【ステップアップ移籍】と、高校・大学・社会人野球などのアマチュア球界からNPBを経ずに移籍する【ストレート移籍】の2つに大別できます(話を簡単にするために、トップ選手を前提として進めます)。

(続きはこちら
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MLB新労使協定トリビア

MLBの新労使協定については、先日日経ビジネスのコラムなどでも触れました。まだCBA全文は公表されていないのですが、要約はMLB選手会のHPにて公開されています。

ところで、先日AP通信がCBAの内容を一部スクープしました。中にはなかなか面白い変更も含まれるので、かいつまんでトリビア的にお知らせしようと思います。

■試合中に選手がマイクをつける可能性がある
これは、こちらではスポーツ中継でどんどん選手やコーチの肉声を取り入れる方向に動いています。その流れを汲んだものでしょう。NFLでもハーフタイムにコーチにインタビューしますし、NBAも試合中の選手の肉声(録音したもの)を後からオンエアしています。MLBでも試合中に監督のインタビューを行うことは今までやられてきましたが、これを選手にも拡大して行くのでしょう。「Player Accessibility」は近年のキーワードです。

■背番号を変更する場合は8か月前までに告知するか、在庫を全て買い取らないといけない
これはちょっと笑ってしまったのですが、ライセンシーに配慮して在庫リスクをなくすということですね。

■意図的にボールやバット等をファンやメディア関係者に投げてはいけない
当たり前です。子供が見ています。

■違法賭博の禁止
これはプロ選手としては言うまでもないことです。Aロッドの事件を踏まえたものでしょう。

■選手が企業ロゴの刺青をすることは禁止
これは確かどっかのボクシング選手がやってましたよね。一応明文化するということでしょう。

これ以外にも記録員に抗議するのを禁じたり、遅延行為への罰則が強まるなどいろいろあるようです。興味がある方は下のAPの記事を読んでみて下さい。

アメリカは契約文化なので、曖昧な部分は全て文書にされます。こうして米国では契約書がどんどん厚くなっていくという見本みたいな話ですね。旧CBAは巻末の別表等も入れて229ページありました。新CBAがどこまで増えるか楽しみですね(笑)。

【関連情報】
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