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日本スポーツ界の成長阻害要因であるドグマ主義的経営をどう解きほぐすか?

突然ですが、スポーツビジネスの「戦略とガバナンス」と聞くと、どう思いますか?ちょっとイメージしづらいかもしれませんよね。

一般的にプロスポーツは「リーグ」と「球団」により構成され、それより1つ上のレイヤーに、その競技を統括する「協会」が存在します。ガバナンスは、この3者の役割分担と考えると、少しは分かりやすくなるかもしれません。

商業化(ビジネス)は「リーグ」と「球団」が担当し、代表チームの組織や普及・育成は「協会」が担当するという整理が一般的ですが、競技や国によりそれぞれの役割分担やバランスには違いがあります。

例えば、日本で言えば、サッカー界は協会の傘下にJリーグがあり、その元で各クラブが経営を行っているというピラミッド型のエコシステムが形成されています。力関係で言うと、やはり協会>リーグ>クラブとなるでしょうか。これは、ワールドカップという世界大会で代表チームが勝つことを日本サッカー界として最大の目標として掲げているためですね。

Jリーグの傘下にも、階層型に地域リーグが構成されており、グラスルーツまで視野に入れた大きなピラミッドが形成されています。開放型モデルの特徴ですね。

一方、日本のプロ野球は全く違うモデルになっています。

まず、「協会」に相当する組織がずっとありませんでした。プロ野球や大学野球、高校野球など、それぞれが別々のエコシステムを有しており、サッカーの様に協会の下に階層型に整理されている訳ではありません。ピラミッド型の階層にならずに、まるで別の競技であるかのように、別々に閉じた世界が作られています。こちらは、閉鎖型モデルの特徴です。

成功するプロスポーツ経営を行うためには、競技レベルを上げるというのは常識ですよね。下手くそなプレーでは、誰もお金を払ってまで見たいとは思えません。少なくとも、一見して「うぉー、スゲー!」と素人を唸らせることができるレベルにないと、プロスポーツの興行としては成り立ちません。

競技レベルを上げるには、普及・育成活動を積極的に行い、競技人口を増やすことが重要です。競技人口が増えれば、競技レベルは上がり、誕生するスター選手の数も増えるからです。

冒頭の整理では、普及・育成は「協会」の役割と言いました。でも、先ほど言ったように、日本のプロ野球には普及・育成を包括的に担当する協会は長きにわたりありませんでした。でも、世界屈指の競技レベルを誇っています。

「協会」が“あるべき役割”を果たしていないのは日本のプロ野球だけではありません。米国の4大スポーツは、協会がそもそも存在しないか、存在しても、無きに等しい程度の存在です。なのに、競技レベルは野球もバスケもホッケーもフットボールも非常に高い。右肩上がりの成長を続け、大いに儲かっています。

これはどう説明すればいいんでしょう? スポーツビジネスの経営において、成功するための「共通解」はあるのでしょうか? あるいは、ビジネスモデルにより、KSF(成功要因)は違ってくるのでしょうか? 成功するビジネスモデルを読み解くための「変数」とは何なんでしょうか?

前置きが大変長くなってしまいましたが、来週末の17日(日)に、こんなテーマでディスカッションを実施します。



先日、SBAのコアメンバーで議論していて、個別のセッションやオムニバス型のスクールでは、それぞれのコマが個別最適になっているため、結果として漏れてしまう視点があるのではないかという話になりました。確かに、例えば各収益領域での効果的な手法やトレンドを知っておくことが重要であるのは間違いないのですが、思考が狭く、先鋭的になってしまいがちです。

しかし、経営者としては、むしろ全体を俯瞰して本質を押さえ、組織の方向性がずれてきたら、柔軟に方向転換していくことの方が重要なのではないか。そして、日本のスポーツ界は、こちらのアプローチがやや不得手なのではないか、という仮説から生まれたセミナーです。

俯瞰してみるためには、自分の組織や競技「外」のことも知っている必要があります。自分とは異なる競技の経営モデルも視野に入れ、自分の組織との比較や、それぞれの長所や短所を踏まえつつ、「現在の経営環境を分析・判断すると、今のモデルが最適である」と常に自問自答を繰り返しながら、最適解を探して変化し続ける、というのが理想かもしれません。

しかし、日本では競技の縦割りの弊害なのか、競技間に大きな壁があるように思います。競技間で人材やノウハウの移転があまり多く見られないように見受けられます。誤解を恐れずに分かりやすく言えば、サッカーの人は野球をあまり知らないし、野球の人はサッカーをあまり知りません(ビジネスモデルという意味です)。

そのため、極端に言えば、盲目的に今のモデルを信奉し、「とにかく言われた目的地まで一生懸命早く走ります」というアプローチが多いような気がします。でも、「本当にこの目的地でいいのか?」「靴を履きかえた方がいいのでは?」といった前提を疑う思考があれば、もっと楽に目的を達成できるかもしれません。

米国のスポーツビジネスは良くも悪くもその点は非常にシンプルで、とにかく「どうすれば一番カネを稼げるのか」が指標になります。カネを稼げない手法や人材はどんどん淘汰され、進化していきます。

一方、日本のスポーツ界は、教育とスポーツが融合しているせいもあってか、米国ほど割り切れない競技が少なくないと思います。それは、良い点ももちろんあるのですが、(カネで序列ができないので)派閥や面子争いが多発したり、自分達が最初に採用した経営上のポジショニングがドグマ(教義)化し、それを軌道修正することを良しとしないような風潮も見られます。

もしかしたら、日本のスポーツ界の最大の成長阻害要因はドグマ主義的な経営なのかもしれません。先日、パネリストと下打ち合わせを行ったのですが、この日本のドグマ主義をいかに解きほぐしていくかが、当日の大きな流れになるかもしれません。

そして、当日はこのテーマにぴったりのパネリストにお越し頂くことになっています(笑)。

まず、FIFAコンサルタントの杉原さん。世界各国のサッカー協会に飛び回り、協会運営やリーグ・クラブのガバナンスのアドバイスをしています。杉原さんの口ぐせは、「コピペはダメ」。上手く行っている他の事例をただ真似しても上手く行かないので、自分の組織が置かれた環境に最適化して進化し続けるしかないということですね。

多くの国の異なるガバナンスモデルを見ている杉原さんだけに、説得力があります。スポーツ組織の俯瞰的なガバナンスを語ってもらうには最強の人でしょう。ここでは刺激が強すぎて書けませんが、日本のスポーツ界が当たり前だと思っている考え方に、いくつも疑問点を持っている視点には、いつも驚かされます。

次いで、弁護士の山崎さん。山崎さんのことは、プロ野球選手会の顧問弁護士やFIFProのアジア支部副代表といった選手の権利を守る側のお仕事でご存知の方は多いと思いますが、実はスポーツ組織のガバナンスの専門家でもあります。

今年、日本のバスケ界には新たにBリーグが設立されましたが、その契機となったのはFIBAからの制裁(活動停止処分)でした。文科省の推薦で混乱下にあったバスケ界に入り、誤解を恐れずに言えば、上手く日本バスケ界の利害が損なわれない形で“大政奉還”し、Bリーグ誕生の下地を作ったのが、他ならぬ山崎さんです。

そして、言わずとしれた荒木さん。日本のプロ野球界のことをこの人以上に知っている人は少ないでしょう。球団経営からリーグ経営まで、酸いも甘いも知り尽くしている?方です。

特に、ガバナンスという文脈では、荒木さんの千葉ロッテ時代の経営改革の話も参考になるのではないかと思っています。というのも、実は日本のスポーツ界で一番環境にうまく適応して進化しているのは、パ・リーグの球団なのではないかと思うからです。それはなぜか? 種明かしは当日に(笑)。

そして、最後に蒔平さん。彼女はbjリーグの千葉ジェッツを立ち上げた創設メンバーの一人で、今はスポーツITベンチャーに勤務しています。バスケと言う、今日本で最も動きのあるスポーツの黎明期をクラブ経営者として過ごし、マイナースポーツの台所事情も肌で知っている人材です。

今は「スポーツ×IT」という視点からアウトサイダーとして様々なスポーツに関わることになり、クラブ経営者の経験を持ちながら、より業界を俯瞰してみることができる数少ない人材と言えるでしょう。

ということで、当日はこんなメンバーから一日あーでもない、こーでもないという議論をやってみようと考えています。きっと今までのセミナーとは一味違った新たな視点や気づきに出会えるのではないかと、司会者ながら期待しています。

解決されつつある代理人の“ダブル・エージェント問題”

March Madnessもついに土曜日にFinal Fourが行われ、名門North CarolinaとVillanovaが決勝進出を果たしました。今晩、いよいよ決勝なのでどちらが勝つのか楽しみです。

ところで、NCAAバスケでは古豪として知られるMemphis大学で、ヘッドコーチの代理人NextLevel Sportsの“ダブル・エージェント問題”が発覚して物議を醸しています。同大学バスケ部は残念ながら最近は低迷を続けており、現ヘッドコーチのJosh Pastnerの手腕が改めて問われることになっています。

実は、同社はMemphis大学のAD(Athletic Director)のマネジメントも行っているんですね。つまり、雇う側(AD)と雇われる側(コーチ)の両方の代理をしていたことが問題視されているのです。実際、Pastnerは現ADのもとで2013年に契約を延長しており、2018年までの5年契約を結んだのですが、この際、大学側が契約途中で彼を解雇する場合は1060万ドルの違約金を支払うというバイアウト条項が付与されていたんですね。

これでチームの成績が良ければ問題にはならなかったのかもしれませんが、近年の成績低迷の上、この妙にコーチに優しいバイアウト条項の存在も明るみになり、ADとマネジメント会社がグルになってコーチを雇ったのではないかという疑惑が浮上してきたという訳です。

大学側はこの代理人とADに利害相反があった可能性があるとして、現在調査を進めています。代理人の利害相反については、今年の2月にNBAも同じ代理人が選手とコーチやGMなどを同時に代理することを禁止するなど、代理人規則の厳格化に着手しており、今後、米スポーツ界ではプロ・アマを通じて代理人の利害相反の排除を徹底する方向に向かっていくのではないかと思われます。

 

米サッカー女子代表が男女の待遇格差是正を求めて不服申立て

米サッカー女子代表チームが、サッカー協会による男女の待遇格差に我慢できなくなりアクションを起こしました。

U.S. women's team files wage-discrimination action vs. U.S. Soccer(ESPN)
「男子との報酬格差に不服」米サッカー女子代表(読売新聞)

ご存知のように米サッカー女子代表はなでしこジャパンの好敵手。FIFAランキングも堂々の1位です。実際、米国内では弱い男子(といっても、FIFAランキングは30位)よりも女子代表の方が圧倒的に人気があります。

そして、日本との大きな違いは、女子代表の方が男子代表よりも稼ぐ点です。2015年では女子代表の方が男子よりも2000万ドル(約22億円)も多く稼いでいたとのこと。それにも関わらず、女子の受け取る報酬は男子の1/4に過ぎないということで、このたび代表チームの主力5選手(日本でもお馴染みのGKホープ・ソロやFWアレックス・モーガンら)が3月31日に米雇用機会均等委員会(Equal Employment Opportunity Commission)に不服申立てを行いました。

この訴え、分かりやすく言えば、日本でも叫ばれている「同一労働同一賃金」を求める争いとも言えます。同じサッカーを職業としてやっていて、しかも男子よりも稼いでいるのに、なぜ報酬が低いのか?という疑問に、これまで米サッカー協会は明確な回答をしてきませんでした。

過激な発言で知られるソロ選手などは、「私たちは世界最高のチームで、ワールドカップで3回、オリンピックで4回優勝した。男子は大会に出場するだけで、私たちが主要大会で優勝して受け取る以上の額を手にしている」という声明を発表するなど、血気盛んです(笑)。

訴状では、
  • 女子は親善マッチ20試合(年間で求められる最低試合数)を全勝しても選手一人当たり9万9000ドルしかもらえないのに、男子は同じ条件26万3320ドルを手にする
  • 男子は全敗しても10万ドルが保証されている(女子の全勝以上の金額)
  • 20試合以上プレーしても、女子の場合追加報酬はないのに、男子は1試合につき5000ドル〜1万7625ドルが支払われる
などの報酬条件を明らかにし、男女の不平等な状況を公表しています。

米国では、USオープン(テニス)などでは完全に男女同一賃金(Equal Pay)が確立しています。つい先日、BNPパリバ・オープンの大会ディレクターが「もし私が女子選手だったら、毎晩ひざまずいて神に感謝するだろう。テニス界をけん引する、ロジャー・フェデラーやラファエル・ナダルが生まれてきたことをね」などと女子が男子の人気・実力に便乗していると発言して大きな批判を浴びたばかりです。

特に米国サッカー界では女子代表の方が男子代表より稼いでいるだけに、この申立ての行方が気になりますね。サッカー協会がどのように反論するかも興味があります。

ちなみに、女子代表チームを弁護するのはNFL選手会やNBA選手会の顧問なども務める大物弁護士のJeffrey Kessler。米サッカー協会は苦戦するでしょう。

しかし、この不服申立てを行った3月31日というタイミングもKessler氏の指示だったのかは知りませんが、かなり練られていたように感じます。というのも、米男子代表チームは3月25日にアウェイのグアテマラ戦にまさかの敗戦を喫し、2018年WC予選敗退の崖っぷちに追い込まれていました。29日に再戦するホームのグアテマラ戦で敗れると、WC出場資格を失うという状況でした。

結果的に29日に勝利して事なきを得ましたが、ここで敗れていれば、「男子代表はWC出場もできないのに、世界ランキング1位の女子代表の4倍の報酬をもらっている」とその格差が際立つストーリーになっていたかもしれません。

いずれにしても、男女の報酬が最終的にどのようなロジックによって決められるべきなのかについて、協会や当局がどのような主張をするのか注目です。男女同一賃金の実現に向け、一石を投じる戦いになるでしょう。

インターン必読書

入社3年目までに勝負がつく77の法則」でも書いたように、うちのインターンには必読書があります。特に社会人経験の少ない、もしくは全くないインターンにはこの本を課題図書として薦めています。

多分、いわゆる「ゆとり世代」や「さとり世代」が増えつつある今の社会の雰囲気や学生気質から考えると、むしろ嫌われるような言葉や価値観満載の本かもしれません。例えば、こんな感じです。

・20代のうちについた差は取り戻せない
・とにかく量をこなす
・叱られたら「ありがとうございます」
・地獄の中でこそ得るものが多い
・守衛のおじさんの名前を覚える
・自分のまわりにはつまらないヤツしかいないのは、自分がつまらないヤツだからだ
・どんな仕事でも、結果が出るまでには10年かかる

ね、嫌ーな感じでしょ。僕が20代の頃にこの本を読んでも響かなかったかもしれません。実際、僕がこの本で指摘されている“法則”の重要性や普遍性に気付けるようになったのは、独立・起業してからです。

そして、最近もう1冊、これもうちのインターンの必読書にしよう!と思った本に出会いました。「コンサル一年目が学ぶこと」です。

この本は若干手前味噌なところもあります。というのも、僕が新卒で入社したアンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)の元コンサルタントの方が書いている本だからです。

今でこそ、「外資系」と言えば巷でももてはやされている感があるようですが、僕が入社した1996年当時、エリートや常識人が外資系に就職するなんて考え方がなかった時代です。親からも入社を強く反対されました(笑)。そんな時代だったからこそ、クライアントにバリューを出すことを徹底的に叩き込まれました。

奇しくも、「入社3年目までに勝負がつく」ではないですが、頭脳明晰・一流コンサルタントでもない自分が、NYで独立起業して10年もやってこられたベースになっているのは、アンダーセンで叩き込まれたコンサルタントとしてのベーシックなスキルや態度があったからだと痛感します。

2冊の本は対照的な内容に見えるかもしれませんが、前者はビジネスパーソンに必要となる普遍的な態度(Attitude)について、後者はどの産業にも共通するスキル(Portable Skill)について書いてあると整理すれば良いと思います。

10周年

明けましておめでとうございます。

お蔭様で、ちょうど本日2016年1月1日をもってトランスインサイト株式会社も10周年を迎えることができました。今日から11年目がスタートします。

会社を作った時はまさか10周年を迎える日が来るとは思っていませんでした。そんな余裕なかったですから。まあ、今もそんなに余裕があるかと言えば、常に全力で突っ走っていないと安心できないんですけどね(笑)。

ここまで来ることができたのは、弊社の仕事に価値を認めて下さるお客様、仕事をサポートして下さるパートナー企業の皆様、離れていても志を共にできる仲間、会社のスタッフ、インターン、そして、仕事ばかりしている自分を支えてくれる奥さんのお蔭です。

この場を借りて心より御礼申し上げます。

10年一区切りとも言いますが、特に11年目から何か変わったことをしようとも思っていません。これまで通り、お客様の期待を常に上回るアウトプットを出し続けることを目指し、その結果として日本のスポーツビジネス界が健全に発展していくことに貢献できたらと思っています。

とはいえ、10年以上もこの仕事をしていると、どうしても発想が固まってきたり、過去の実績に胡坐をかいて新しい挑戦を避けてしまったりしがちになると思います。特に独立してやっていると、そんなことを指摘してくれる人もなかなかいないので、この点は肝に銘じたいと思います。

また、ネットメディアの発達で情報の取得はしやすくなりましたが、それをインプットして深く考える時間が逆に取れなくなってきたように思います。特に2020年の東京オリンピックに向けて日本のスポーツ界はバブルの様相を見せており、玉石混交の情報が更に増えていくものと思います。

これまでの反省として、短期的な情報の取得と拡散に時間を使い過ぎていたように思います。今年は、もう少し長期的な視野から深く考える時間を増やしていこうと思います。

最後に、昨年は縁あってSBAという教育プラットフォームを立ち上げる機会を頂きました。設立してまだ3か月程しか経っていませんが、様々な領域から優秀な方々にご支援頂き、今後とても大きな広がり・可能性を感じることができています。

2020年に向け、人材育成もスポーツ界の大きな課題だと感じていますので、2016年はSBAを通じて様々な挑戦を行っていく予定です。こちらもご期待下さい。

ということで、2016年もどうぞよろしくお願いします。
今年もまだ見ぬ同志との出会いを楽しみにしています。

Trans Insight Corporation
President
鈴木友也

2015年の日米スポーツ界を振り返って

日本は新年を迎えましたが、日本より14時間遅いニューヨーク(米国東部標準時)はまだ大晦日の夕方です。例年12月は比較的静かな月なのですが、今年は年明け早々にリサーチの締切があったり日本からの来客があり、その準備などで珍しく大晦日までバタバタしています。

さて、大晦日ということで、今年1年を振り返ってみることにします。

■米国スポーツ界3大ニュース
業界秩序へのインパクトの大きさという視点から、以下の3つを選んでみました。

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ノースウエスタン大学フットボール部員による労働組合結成の動きはNLRBにより却下され(ただし、学生選手の労働者性そのものについての判断はしていない)、オバンノン訴訟の控訴審により第一審の判決内容が一部取り消さりしましたが、基本的にNCAAがその規約において「プレーの対価として報酬の受け取りを禁止する」こと(いわゆる「アマチュア規定」)は明確に違法(反トラスト法違反)であるという点は司法審査により確認されたのではないかと思います。

これにより、NCAAが「学生の本分は勉強」との建前を取りつつ金儲けにまい進している欺瞞が指摘された形になりました。今後は、NCAAが稼いだ富を学生との間でいかに分配して行くかという「How」の部分の詳細が議論されていくことになると思います。

これにより、大学スポーツビジネスのコスト構造や、大学スポーツの位置づけそのものが多かれ少なかれ変容することは避けられないのではないかと思います。

DFSの隆盛と司法審査
これは最近日経ビジネスでも書きました。今年になり一気に存在感を高め、事業的にも大きく売り上げを伸ばしてきたDFSでしたが、まさに「これから離陸」という時に、例のスキャンダルによってニューヨーク州により提訴され、司法審査を受けることになりました。

MLBやNBAが今年頭からスポーツ賭博合法化に舵を切っていることもあり、最終的にDFSも競馬などと同様に政府・自治体による「公認ギャンブル」として公的機関やスポーツ組織と共存共栄して行く形になるのではないかと思います。

しかし、DFS事業者はちょっと脇が甘かったですね。また、スキャンダルに乗じて一気に司法審査にまで持っていかれてしまったのは、裏で「DFSの合法賭博化」のシナリオを描いていた人が相当いたのではないかと穿って考えてしまいます(笑)。

インナーマーケットのストリーミング開放
ここはちょっと分かりにくいかもしれませんが、RSN(ローカルスポーツ専門局)による試合中継が基礎になっている米国スポーツ界では、動画配信(テレビ+ネット)を「インナー・マーケット」(Inner Market)と「アウター・マーケット」(Outer Market)に分けて行っています。

例えば、MLBを例に挙げると、NYヤンキースとボストン・レッドソックスの試合がローカルでテレビ中継される場合、ヤンキースを放映権を持つYESとレッドソックスのNESNの放送が中継されるエリアを「インナー・マーケット」、それ以外の地域を「アウター・マーケット」と呼びます。

MLBでは、年間2430試合がテレビ中継されますが、うち全国放送が中継するのは約140試合に過ぎません。9割以上の試合はRSNによりオンエアされるのです。つまり、MLBのメディア露出を支えてくれているRSNはMLBにとって最も大切にしなければならないクライアントであり、この権利を守るために複雑な権利処理を行っているのです。

歴史的に、テレビのインナー市場からメディア露出は始まり、1990年代になるとExtra Inningsのようなテレビのアウター・マーケットパッケージが生まれ、2000年代にMLB.TVのようなネット中継のアウター・マーケットパッケージが生まれるという経緯で権利処理が行われてきています。

RSNの権利を守るため、インナーのネット配信は長らく開放されていなかったのですが、4大スポーツでは昨年からNBAがこれを「TV Everywhere権」としてRSNに開放し、来年からMLBも開放して行く方針を先日発表したばかりです。

日本だとまだ地上波テレビ局が良くも悪くも動画配信市場を独占してしまっているので、未だに「カニバライズ」の議論から前に進めないようですが、OTT事業者との競争が激しい米国では、既にカニバライズを議論するフェーズは終わり、OTT事業者への対抗上、TVE権を活用して包括的にユーザを囲い込む方向に来ています。

■日本スポーツ界3大ニュース
日々仕事をする中で感じていることを踏まえ、以下の3つを選んでみました。

.リンピックバブル
僕のところもここ1〜2年でオリンピック関係の案件が急に増えてきましたが、スポーツ界に事業的に参加してくるプレーヤーの顔ぶれも大きく変わってきたように感じます。言い方は悪いかもしれませんが、今まではスポーツ界に見向きもしなかった優秀な個人・組織にスポーツ界へ関心を持ってもらえるようになりました。

今のところ、この地殻変動を牽引しているのは公式スポンサー企業の存在です。少なくとも2020年までのあと5年間に数十億以上の投資を行っていくわけですから、このスポンサーマネーを見込んだ多くの事業者が参戦してきています。ちょっとしたバブルの様相ですね。

逆に、ちょっと気になるのは、こうした祭りへの盛り上がりを見せているのは、アウトサイダー側に多く、スポーツのインサイダーが少し冷めている(乗り遅れている?)と感じる点です。むしろ今までの業界経験がない新規参入アウトサイダーの方が、客観的に日本スポーツ界のオポチュニティを見ることができるのかもしれません。

球団と球場の一体経営の常識化
最近もベイスターズが横浜スタジアムにTOBかけたりするなど、球団と球場は一体経営であるべきという点が日本でも常識になってきました。見方を変えると、収益を追い求めて経営努力している球団とそうでない球団の差がここ5〜10年で大きく開いてきてしまったようにも見えます。

日本のスポーツ界では、経営体力的に一番余裕のあるプロ野球球団がこの動きを牽引していますが、これがJリーグやBリーグなどにも広がっていくとよいと思います。

その中でネックになるのが多くの球場を保有する自治体のスタンスでしょう。日本の公的スポーツ施設は「体力増強」のために建設されているという建前上、エンターテイメントとしての利用を想定していません。こうした中では、ガンバ大阪のように球団自身が球場を作ってしまうような発想力や行動力が必要になってくると思います。

B.LEAGUE設立
すったもんだあった日本のバスケ界がようやくまとまり、新リーグが立ち上がったのは皆さんご存知の通りです。

日本だと、野球とサッカーが事実上の2大プロスポーツリーグということになります。2nd Tier以下には、競技により実業団やアマチュアリーグなどが存在しているわけですが、Jリーグの成功があったからか、そうした競技の関係者と話していると「うちもプロ化できればうまく行くはず」という、盲目的な思い込みを感じてしまうケースがあります。

ただ、いままで実業団あるいはアマチュアだったのをプロ化するということは、サラリーマンが会社を辞めて起業することに等しいわけですから、そんなに生易しい話ではありません。むしろ、実業団という形ででも競技が存続していること自体を有難いを思うべきなのかもしれません。

そんな中、Bリーグには確固とした戦略が描かれています。B2Cにおける競技者DBとの連携や、B2Bにおける日本代表チームとのマーケティング活動の統合などは、プロ野球やJリーグでも未着手の領域です。事務局の人間に知人が多いということもあり、是非今までの日本スポーツ界になかったような斬新な取り組みを期待したいです。

ということで、勝手ながら日米スポーツ界の2015年3大スポーツニュースでした。
皆さん良いお年を!

米国スポーツビジネス界のマネジメントはこう見る

毎年この時期になるとSportsBusiness Journals誌が読者アンケートを行います。SBJは、主に米国でスポーツ関連組織の経営層が読んでいる専門誌なので、これをみると米国スポーツ界のマネジメント層がどのような見方をしているのかが分かります。

SBJの読者アンケートについては、以前「最も価値のないスポンサーシップ資産は看板広告」「米国スポーツビジネスにとって最大の脅威とは?」などでも少し触れましたね。

SBJの最新号で今年の読者アンケートの結果が掲載されていたので、その中で個人的に興味深かった点を拾ってみることにします。

■イケてる(hottest)スポーツリーグを3つ挙げよ
1. NFL(70%)
2. NBA(43%)
3. NCAA(31%)

⇒やっぱりNFL人気は不動ですね。これは予想通りでしたが、学生アスリートへの報酬問題など、何かとネガティブなニュースが多かったNCAAが3位につけているのは興味深いです。まあ、それだけビジネスとして上手く行っているという評価なのでしょう。

■大学フットボールで一番問題なのは?
1. 選手の搾取(32%)
2. 学校間の収益格差(23%)
3. 怪我・脳震とう(16%)
4. 商業化(12%)
5. 観客動員数の現象(11%)

⇒「選手の搾取」と「商業化」は表裏一体の問題ですね。とはいえ、今更商業化を止めるわけにも行きませんから、方向性としては選手に適正な対価を支払う方に向かうのだと思います。問題は「どの程度」それを行うかでしょう。

■賛成?反対?
・学生選手への報酬の支払: 賛成(44%)反対(56%)
・試合中の選手へのマイク着用: 賛成(64%)反対(36%)
・ユニフォームへの広告掲出: 賛成(53%)反対(47%)

⇒まだ学生に報酬を支払うことに対してはアレルギーを感じる人が多いようです。

■次の労使協定更改時に労働争議が起こりそうなリーグは?
1. NBA(39%)
2. NFL(29%)
3. NHL(17%)
4. MLS(9%)
5. MLB(6%)

⇒かつては「世界最強の労働組合=MLBPA」を擁し、労働争議の模範のように言われていたMLBが近年の労使協調路線からMLSを下回っているのに驚きました。NBA、NFL、NHLともに現行の労使協定は10〜11年間の長さで、最も早く更新時期を迎えるNFLでも2020年ですから、まだ少し先の話になりますかね。

■今年スポーツビジネス界で最も大きなニュースだったのは?
1. FIFAのスキャンダル(41%)
2. ファンタジー・スポーツの隆盛(38%)
3. トム・ブレイディとNFLの戦い(37%)
4. カレッジ・フットボールへのプレーオフ制導入(21%)
5. 女子サッカー代表のWC優勝(19%)

⇒アメリカ人がFIFAに関心を払うなんて珍しいですが、フェアであることを金科玉条とするアメリカ人は不正が大嫌いですから、「やっと捕まったか」って感じでしょうか?やぱりフットボールネタが多いですね。

■北米スポーツビジネスの最大の脅威は?
1. チケット価格の高騰(33%)
2. ユーススポーツ競技者数の現象(17%)
2. コードカッティング(有料テレビの解約)(17%)
4. 不正行為(ドーピング、ルール違反など)(12%)

⇒チケット価格の高騰は2年前の調査よりも10ポイント以上増えてますね。例えば、今年のMLBのFCI(4人家族での平均的な観戦支出)は212ドル。これでも4大スポーツの中では最も安い値です。逆説的ですが、米国のマネジメント層にチケット価格が高いという自覚があることを知れて良かったです(笑)。

■スポーツリーグで今後の収益的なのびしろがある領域は?
1. OTT・ストリーミング権(33%)
2. 新たなスポンサーシップカテゴリ・資産(29%)
3. 海外への球団拡張(20%)
4. 周辺イベント(17%)

⇒やっぱりデジタルですよね。テレビ放映権は日米でメディア環境が異なるのですが、デジタルの部分はアメリカの取り組みが大いに参考になると思います。

■最も指導力のあるコミッショナーは?
1. Adam Silver(NBA)(57%)
2. Rob Manfred(MLB)(11%)

⇒NBAは前任のDevid Sternの後光がまだあるからでしょうか。ここ10年くらいはほとんどNBAのコミッショナーがトップです。日本にいるとあまり実感ないと思いますが、「最も革新的な経営を行っているリーグ」と言えばNBAです。「MLB新コミッショナーの驚きの初仕事」で衝撃の仕事始めに触れたマンフレッドさんは、意外に評価が低いです。

■ユーススポーツの最大の脅威は?
1. 1競技への特化傾向(30%)
2. 盛り上がりすぎる両親(24%)
3. 若年層での運動時間の現象(22%)
4. 時間的コミットメントの多さ(11%)
5. 費用(10%)

⇒「専門化が進み、日本化する米国のユーススポーツ」でも書きましたが、研究者の間では複数スポーツを同時並行で経験するより、1つのスポーツに専念する方が選手の肉体的成長が阻害され、バーンアウトのリスクも高まるため、選手として大成しづらいことは周知の事実になっています。しかし、これとは裏腹に、ビジネス化するユースビジネスに親が巻き込まれ、専門化が進んでいる実態がありました。マネジメントレベルでは、この点に既に気づいているのですね。へー、って感じでした。

■どの会社のDFS(デイリー・ファンタジー・スポーツ)をやっているか?
1. DFSはやらない(80%)
2. DraftKings(11%)
3. FanDuel(6%)
4. Yahoo Sports(2%)

⇒これ分かるなぁ。DFSはデイリーと言えども時間取られるから忙しい経営者としては「そんなのやってる暇ない」ってのが本音でしょう(笑)。

とまあ、こんな感じです。アンケート結果を全て見てみたい方はSBJを購読して下さいね(笑)。

米サッカー協会によるヘディング禁止措置の衝撃

今週月曜日、米サッカー協会(USSF)が10歳以下の選手のヘディング禁止などを含む、脳震とうに対する安全策を発表しました。これは、昨年起こされた訴訟に端を発したものです。

訴訟では、協会が脳震とうの危険性を知りながらも適切な対応と取らなかったとしてその責任を問うものですが、米国ではこうした脳震とう訴訟はサッカーに限らず、たくさん起こっています。

特に脳震とうの危険性を早くから指摘されていたのがフットボールで、既にNFLはOB選手らにより起こされた訴訟に和解しており(2013年に公判開始、2015年に和解成立)、その和解金額は7億6000万ドル(約912億円)を超えます。NCAAなどでも同様の訴訟が起こっており、これがアイスホッケーなどにも広がりを見せています。

米国では、こうした脳震とう訴訟がフットボールから他競技に、トップ(プロ)から大学、高校などのアマチュアボトム層に急拡大しています。脳震とうが米国のスポーツ界を変えつつある状況については、過去にYahoo!や日経ビジネスにも寄稿しています。
アメリカの試合から迫力が消える?〜けが防止に走る米スポーツ界の裏事情(日経ビジネス)

これまでスポーツにおける脳震とうの危険性については、医学データもなく検証されずにいたのですが、Yahoo!のコラムにも書きましたが、UCLAによる最近の調査では、脳震とう直後の選手の脳は植物人間の脳と同じ状態ということです。そして、最初の脳震とうが完治する前に再度脳震とうが起こると脳に致命的なダメージを与える「セカンドインパクト症候群」も分かって来ています。

こうした中で、各スポーツ統括組織や学校管理団体などが脳震とうの予防や起こった際の対処(サポート体制の充実や復帰手順の明確化など)について積極的に対応を行うようになってきたのです。米国の場合、危険性を知りつつ対処を怠ると、即訴えられるので、訴訟リスクが大きな原動力になっています。

で、話をUSSFに戻すと、詳細な安全対策は今月末に発表されるようですが、10歳以下の子供はヘディングを禁止とし、11歳から13歳の子供は練習中のヘディングの回数に制限をかけるとのことです。この安全指針は、USSFの傘下にあるアンダーの代表やアカデミー、MLSのユースチームに適用され、傘下にない場合は推奨と言う形になるようです。

米国でのサッカーの競技人口は世界一ですが、その大きな理由の1つは「サッカーは安全」という安全神話が親の間にあったためでした。しかし、データで検証してみると、実はイメージ程安全ではなく、脳震とうは特にヘディングで起きやすく、また男子サッカーより女子サッカーの方が脳震とうリスクが高いことなども分かって来ています

サッカーは協会傘下に全ての関連組織がまとまっているという事情もあったのだと思いますが(USSFが訴えられれば、結果的に米サッカー界全体が変わらなければならなくなる)、米サッカー界は非常に素早い対応を取ったと思います。こうした訴訟が他のスポーツにも広がって行けば、ユースではフットボールでタックルなしになったり、野球でスライディングが禁止されるということも、将来的には大いに有り得るのではないかと思います。

日本のスポーツの潜在力をグローバル視点から検証する

僕がアメリカに拠点を置きながら日本のスポーツ界の成長のために日本のクライアントの皆様にアドバイスをするという、ちょっと変な仕事の仕方を始めて15年が経ちます。
 
僕が「アウトサイダーとしての視点」にこだわっているのは、生活習慣や文化の異なる米国のスポーツビジネスと日本を比較すると、多くの違いがあり、その違いを具体的に知ると、新たな発想が沸きやすくなるからです。

弊社の会社理念のところにも書いていますが、僕はアメリカの取り組みが「正解」で、それを日本にそのまま導入しようとは思っていません。絶対的な「正解」などないですし、あるとしても、それはその国なり地域でスポーツと実際に触れている人が決めるべき話だと思うからです。地域により人は違いますから、自ずと求めるべき打ち手は違ってきます。

違うものを見ることで刺激を受け、今までになかった発想が生まれることは良くあることです。僕が15年もこのような仕事を続けてくることができたのは、そこに価値を見出してくれたお客様がいたからです。

日本を出て初めて分かったのは、想像以上に日本には言語的な断絶があることです。英語ができれば手に入れられる有益な情報は世の中に溢れていますが、日本ではなかなかそれが手に入れにくい。

世界的なトレンドと日本の動きが違っている局面というのは、スポーツビジネスに限らず少なからずあると思いますが、言語的な断絶により、なかなかそれに気づくことができない(気付くのが遅れる)というのは、事実だと思います。今やネット上の情報の約55%が英語ですが、日本語は5%に過ぎません。

別に「海外と日本に違いがある」=「日本は遅れている」とは思いません。違いを知った上で自覚的に歩みを選択していれば良いと思います。しかし、実際は違いを知らずに無自覚に選択しているケースも少なくありません。

ただ、逆に言えば、世界的な趨勢と日本との違いを丁寧に比較・整理すれば、今まで気づかなかった潜在力を発揮できる領域をまだまだ発掘できると思うんですよね。僕はそういう信念で仕事を続けてきました。

そして、ちょっと気の早い話ではあるのですが、こうした「世界の中での日本のスポーツ」という視点で日本のスポーツビジネスを俯瞰的に語れる専門家をゲストに招き、来年の2月にセミナーを開催することにしました。

国際スポーツの現場から見えるスポーツの潜在力とビジネストレンド
 〜日本を出て初めて見えてきた、CSR・アクティベーション時代のスポーツビジネス〜

今回は、ゲストとしてField-R法律事務所の山崎卓也弁護士と、FIFAコンサルタントの杉原海太さんをお迎えします。僕もモデレーターとして対談に参加するので3人でしゃべる感じになります。

このセミナーは個人的にとても楽しみにしているんですよね。山崎さんにお会いしたのはもうかれこれ12〜13年程前になるでしょうか。当時は日本プロ野球選手会の顧問弁護士として活躍されており、今はその活動の幅を更に海外にも広げ、FIFA紛争解決室(DRC)仲裁人や国際プロサッカー選手会(FIFPro)アジア支部副代表として世界中を飛び回っています。

杉原さんは、その山崎さんにご紹介頂いた仲です。世界で10人ほどしかいないFIFAコンサルタント(日本人としては杉原さんだけ)として、世界各国のサッカー協会・リーグ・クラブのガバナンス改善、戦略立案、業務改革のサポートをされています。文字通り世界を股にかけて活躍されています。

僕の知る限り、お二人は日本人で最もグローバルに活躍されているスポーツビジネスパーソンではないかと思います。「世界の中での日本のスポーツ」を語るのには打ってつけのお二人です。

二人とも半分くらいは日本にいないのではないかという位忙しく海外を飛び回っているのですが、意外に日本で3人で良く飲むんです(笑)。で、ふたりとも国境、競技、業界インサイダー/アウトサイダーという枠を超えて様々な知見をお持ちで、3〜4時間くらいあっという間に経ってしまうのですね。しかも、それが無茶苦茶勉強になるのです。

そして、お二人と話すたびに日本のスポーツ界にはまだまだ可能性があるんじゃないかなーという思いを強くするわけです。というわけで、皆様にも同じような視点からスポーツの潜在的価値を知って欲しいと思ったのが、このセミナー開催の趣旨というか、きっかけということになるでしょうか。

以下が、このセミナーに参加する上での思考の補助線になるかもしれません。
 
・勝利がスポーツビジネスの最高の商品ではなくなっている? 〜勝てばいい時代の終焉〜
・一見、スポーツビジネスと関係なさそうなCSRが重要性を増しつつある理由
・巨大スポンサーが国際競技団体にかけるプレッシャー 〜アクティベーション時代のスポンサーシップ〜
・五輪ほかメガスポーツイベントにおける「サステナビリティ・ビジネス」
・グッドガバナンスとスポーツ賭博・インテグリティをめぐる、国家と国際競技団体の世界的攻防
・欧米至上主義からのシフトの可能性 〜多様性の尊重は、アジア人の武器となりうるか?〜
・「自分の頭で考える」時代のスポーツビジネス 〜「体育」を「スポーツ」にするために

僕もモデレーターとして参加しますが、自分にとっても気づきの多いセミナーになるだろうなと今からワクワクしています。

戦力均衡の重要性(その2)

先日、「戦力均衡の重要性」で定期的にファンに「優勝するかもしれない!」という期待感を抱かせることが重要であることに触れました。あれから、メッツはあれよあれよと言う間にワールドシリーズまで上り詰めてしまいました。

今、マンハッタンではスポーツバーやレストランは「メッツ、メッツ」で大騒ぎで、開幕したNBAやNHLの陰が薄く感じるくらいです。もうこの余韻でメッツファンはあと10年位は楽しめるかもしれません(笑)。

ところで、あのポストをきっかけに知人と意見交換したりする中で、戦力均衡に対して少し考える機会ができました。そして、結果的にはスポーツリーグ経営における戦力均衡の重要性は相対的に低下しているのではないか、と思うに至りました。

理由は2つあります。

第1の理由は、近年の米国スポーツビジネスにおいて、「売り物(商品)」の定義が変わってきたためです。従来まで、スポーツビジネスの商品といえば「試合(観戦)」でした。しかし、テレビの大型化・高精細化・低価格化により、テレビ視聴でも十分に迫力ある観戦ができるようになってきたことや、若年層のエンタメ消費形態が変化し、1つの娯楽をじっくり楽しむより、複数の娯楽を並行してゆるく楽しむようになったきた結果、試合に足を運んでくれるコアファンにとって、テレビ視聴と差別化し、若者のニーズにフィットするために試合観戦以外の要素がより重要になってきています。

そのため、もちろん観戦機会の提供は本質的で中心的な提供価値なのですが、2〜3時間の滞在時間中のファン体験を総合的に捉え、ファン体験を構成するあらゆる側面(駐車、入場、観戦、回遊、飲食物・グッズ購入、トイレなど)でのエンタメ性を上げて行く方向に施設のコンセプト設計やサービス提供がシフトしてきています。

これにより、試合観戦がファン体験に占める相対的な比率が下がってきているのですね。極端に言えば、試合に負けても楽しめる(顧客満足度が下がらない)のが究極的なファン体験ということになります。

第2の理由は、ビジネスの国際化の進展です。国内のファンは基本的にフランチャイズを軸にした「地域的な絆」を持つファンが大多数です。そして、そのファンにとっては継続的に応援する上で勝ち負けが大きな要素となります。

しかし、海外のファンは「地域的な絆」を持たないため、応援軸としては最高のパフォーマンスを提供する「最強チーム」を応援したいという動機が主になるのではないかと推測します。そのため、ヤンキースやマンU、バルサといったメガブランドの一人勝ちの状況が生まれやすいわけです。

つまり、海外市場では戦力均衡により各チームの戦力を拮抗させるよりは、むしろその逆に圧倒的に強いチームを作る方がファンを得やすいのではないかと思うわけです。

ところで、先日、SBAのセミナーでNPBEの荒木さんと対談した際(お蔭様で満員御礼でした!)、荒木さんが面白いことを言っていて「なるほどなぁ」と思いました。荒木さん曰く、世界のスポーツは「ドメスティック・スポーツ」「インターナショナル・スポーツ」「グローバル・スポーツ」の3つに大別できると。

「ドメスティック・スポーツ」は国内のみを主な市場としているスポーツで、日本のプロ野球やJリーグがここに該当します。「インターナショナル・スポーツ」とは、海外市場も事業対象になるものの、基本的に国内での売り物を海外でも横展開しているスポーツです。基本的に、米国4大スポーツはここに入ると思います。最後に「グローバル・スポーツ」ですが、これは海外市場もビジネスになり、かつ海外では売り物が発展的に展開されるスポーツです。ワールドカップなどがこれに該当しますね。

で、それぞれのモデルで戦力均衡の重要度を考えると、ドメスティックに近い方が相対的に重要なんだろうなと思います。戦力均衡とは、事業の外部環境に結構左右されるコンセプトなのかもしれません。

とはいえ、国際化が進展しようと事業の核になるのは国内ビジネスですし、商品価値を構成する要素が多様化しても、その本質的で中心的な価値は勝敗であることに変わりはないですから、戦力均衡が不要になるということは、少なくとも米国の閉鎖型スポーツに限って言えばないだろうなとは思います。
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