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タフネス

実はこの8月にNYの郊外に引っ越しまして、今は片道1時間半近くかけてマンハッタンに電車通勤するようになりました。今までは30分もあれば地下鉄で家に帰れたので、それに比べるといささか不便にはなりましたが、幸い通勤電車は必ず座れるため、移動中はモバイルオフィスだと考えるようにしています。近年は忙しさにかまけてブログも後手後手にまわってしまっていたのですが、この環境の変化でモノを書く時間をうまく切り取ることができそうな予感です。このポストも電車で書いていたりします。

マンハッタンでは地下鉄が24時間走っているので、帰宅時間を気にしたことなどなかったのですが、今は終電(といっても午前2時ごろまである)もあり、時間を気にしながら仕事をしないといけないので、これが良い意味でオフィスでの仕事に締め切り効果を生み出し、集中力を高めてくれています。

アパートから一軒家に引っ越したため、環境も大きく変わりました。田舎暮らしの今は何をするにも車が必要で、引っ越しと同時にスバルとトヨタを1台ずつ買いました(故障の多いアメ車は怖くて買えない)。家族で生活するには2台は必要なんですよ。余談ですが、NYも北の方に行くと雪が多いため、日本車、特にスバルの人気が圧倒的に高いです。駅の駐車場(郊外に住むと、最寄り駅までは車で行くのが普通。これをPark & Rideといいます)でざっと見ても、5〜6台に1台はスバルですね。スバルの次に多いのはホンダ、次いでトヨタでしょうか。それ以外の日本車はあまり見かけません。実は、うちは父親も弟もスバルに勤務しているので、これは鼻が高いのです。

閑話休題。アパートであれば大家がいるので、メンテナンスを自分でやる必要はなかったわけですが、一軒家だと何から何まで自分でやらなければなりません。しかも、引っ越したばかりで勝手がわからず、このストーブはどうやってつけるんだっけ?この照明の配線は?このスイッチは何だ?といった感じで手探りで新居に慣れている感じです。

家電のメンテナンスや故障、季節の変わり目に冷房・暖房器具を初めてつける際は、専門の業者を呼んで見てもらう必要があるのですが、1時間のサービスで100ドル、200ドルがあっという間に飛んでいきます。田舎の一軒家暮らしも楽ではありません。

で、先日家の窓枠が壊れていたので、大工を呼んで修理してもらった時のこと。修理に来た大工と世間話になり、お互い「どこからアメリカに来たんだ?」という話になったのですが、その大工はハンガリーから5年前に来たとのこと。なぜ来たのか聞いたら、ハンガリーでの暮らしが大変で、一度アメリカに観光に来た時に、この国で働いた方が豊かな生活ができそうだから、家族で一緒に来たとのこと。ちなみに、ハンガリーでも大工だったそうです。

もう永住権は取れたの?と何気なく聞いてみたところ、実はビザはない(つまり、観光ビザで入国して、そのまま不法滞在)とのこと。これにはちょっとビックリ。つまり、彼はもう母国には帰れない(帰ったら二度とアメリカには入国できない)んです。なんか、結構壮絶な話を聞いているはずなんだけど、彼はあっけらかんとしゃべるわけです。で、こう続けました。

「でも、アメリカって面白いよね。不法滞在の俺でも会社を作れて社員も雇える。税金だって払ってるし、娘も普通にアメリカの学校に不自由なく通ってるし」。唯一の心残りは両親を母国に残していることだそうです。「まあ、でも彼らがたまにアメリカに観光に来た時に会えるから」とあまり気にしていない様子。

僕もあまり話をしみったれた感じにしたくなかったので、「税金払ってるなら、トランプよりはまともだな」って言ってお互い大笑いしました。

アメリカに住んでいると、こうしたストーリーを聞くことが珍しくないです。特に世界中から人が集まってくるマンハッタンでは多い。母国の内戦から逃れてタクシー運転手やってますとか、そういう話は結構普通に聞きます。そして、生きるために仕事をしている彼らには、自分にはない強さを感じるのです。退路のない中で覚悟を決めて生きている彼らは、本当にタフです。

BREAK THE BORDER

企業は経営者の器以上には成長しないとよく言われますが、スポーツでも、球団経営はオーナーの器以上には成長しないと言えるのではないかと思います。

僕は米国で球団やリーグの経営者や幹部と話をすることが仕事の一部としてありますが、例えばCRMのベストプラクティスを調査していると、全く同じCRMソフトを使っていても、成功する球団と思い通りにうまく行かない球団がでてきます。これなどは、マネジメントの違いが経営の成果に違いを及ぼす端的な例だと思います。同じツールを使っても、社内の位置づけやマネジメントの違いで結果に大きく差が出るのです。

球団のオーナーシップルールの話をすると、NFLでは法人による球団保有が禁止されていますが(個人、あるいは投資家グループでしか保有できない)、これは法人が持つ組織目的と球団経営に利害相反が起こる可能性を排除するためです。球団を保有する企業と、球団経営に主従関係ができてしまうと、健全な球団経営が行えないと考えているためです。MLBも、法人保有は認めていますが、個人保有が奨励されていますし、実際に法人に保有されているのは、マリナーズやブレーブス、ブルージェイズなどごく僅かです。

例えば、オーナー企業の意向により、本来球団がやるべきことができないなどが、この利害相反に当たるところです。あるいは、オーナー企業の収益を伸ばすために、本来球団がやるべきでない仕事を行わざるを得なくなるケースもそうでしょう。

もちろん、法人が球団を保有することにより、逆にシナジーが生まれる可能性もあります。NBAやNHLなどはこちらを志向しており、オーナーにメディア企業が多いのはこれが理由でしょう。球団単体でできなかったことが、オーナー企業のサポートで可能になるケースです。

日本では、基本的に球団は法人に保有されているケースが大多数ですが、日本のスポーツビジネス界の歴史的発展経緯を考えると、これが必ずしもプラスに働かなかったケースが多かったようです。日本のプロスポーツをけん引してきたのはプロ野球ですが、1954年の国税庁通達により、球団の赤字は親会社の宣伝広告費として処理できるようになりました。

戦後の高度成長期で企業の業績が良かった時代は、球団を保有している企業にしてみれば球団経営で30億円の赤字が出ても、30億出してラジオや新聞、テレビで自社の名前が露出されればそれだけで良かったわけです。これは30億払って広告枠を買っている感覚に非常に近い。つまり、少し前の時代まで球団経営はMedia Buyingとほとんど同じだったわけです。

日本球界でも2004年の球界再編騒動を境に球団経営の近代化が急速に進み、後発リーグもプロ野球の悪い点や欧米スポーツリーグの進んだ経営施策を勉強しており、さすがに今では球団の顧客ときちんと向き合った経営を志向するようになってきていますが、球団を取り巻くビジネスには、過去の経緯を引きずったモデルがいまだに色濃く残っています。

例えば、球団経営の根幹とも言うべきチケット販売の業務はプレイガイドに丸投げしています。複数のプレイガイドやコンビニを販路に抱える現行モデルでは、販売情報をリアルタイムに把握することが難しく、球団のチケット販売計画の精度を上げたり、新たなテクノロジーを導入することを難しくしています。また、日本の個人情報保護法は世界一厳しく(基本的に情報取得者しか活用できない)、プレイガイドが取得した顧客情報を球団が活用できないという本末転倒な状況が起こっています。

スポンサーシップも広告代理店に強く依存しており、基本的には代理店が一度枠をすべて買い切り、代理店がリスクを負って企業に営業するケースが多いです。ただ、代理店には代理店の仕事の慣習や都合がありますので、それが必ずしも協賛企業の顧客満足度最大化につながらないケースがあります。

日本の広告代理店は、広告主とメディアをマッチングする媒体介在企業ですから、どうしても露出前提の対応になってしまいます。露出から包括的なアクティベーションに企業側のニーズがシフトする中、この代理店依存モデルでは柔軟な対応が難しくなってきています。

ビジネスで儲ける原則は、自分が胴元になってリスクを負うことですから、リスクを取らずに主な収益源を外注化してしまう今のプロスポーツのモデルでは、アップサイドはどうしても限定的になってしまいます。こうした過去の常識の元に立脚したビジネスモデルをどう変えていくかが、今後の日本スポーツ界の長期的なチャレンジになるでしょう。

さて、いよいよ今週木曜日(20日)に、新バスケットボールリーグ「Bリーグ」が開幕します。Bリーグでは、僕も顧問として関与させて頂いているのですが、まだまだ日本のバスケ界には伸びしろがあるため、守りに入るフェーズではなく、「BREAK THE BORDER」(垣根を壊せ)をスローガンに積極的に日本のスポーツ界にイノベーションを起こしていこうと経営幹部の皆さんと話しています。

今週末にこんなセミナーもやりますので、もしよかったら遊びに来てください!

B.LEAGUE”ビジネス”開幕!次世代スポビズモデルを探る 〜Bリーグは何を壊し、何を創るのか?〜

世界的な広がりを見せるスポーツ界の脳震とう問題

つい先日、飛行機の中で映画「Concussion」(コンカッション=脳震とう)を見ました。

これは、5000名を超える元NFL選手から起こされることになる集団訴訟のきっかけを描いた映画です。NFLは、プレーに起因する脳震とうの危険性を知りながら、選手にそれを周知せずに適切な対応を怠ったとして、2011年に損害賠償訴訟を起こされました。

パンドラの箱を開けてしまったのは、アメリカで永住権を取得したナイジェリア出身のベネット・オマル医師。元NFL選手が原因不明の頭痛やめまいなどから自殺や異常行動を取ることが頻発していたことに気付いたオマル医師は、その原因が現役時代のプレーに起因する脳疾患(後に慢性外傷性脳症=CTEと命名)にあることを突き止め、NFLにその対策を求めて奔走します。

アメリカのスポーツ界に君臨するNFLに喧嘩を売るのは、やはり普通のアメリカ人にはできないことだったんだなぁと映画を見てしみじみ感じました。オマル医師も、一度は追及を諦めようとしたのですが、その時の奥さんの言葉がまた泣かせるのです。これは、マイノリティの立場の人の方がグッとくる場面かもしれません。僕も「自分がなぜアメリカにいるのか」を自問自答するいいきっかけになりました。

このオマル医師役に扮するのが、ウィル・スミス。彼の演技が実に上手い。日本でも今年公開されるそうですが、是非オリジナル音声(日本語字幕)で見て頂きたい。アフリカなまりの英語を話す、芯の強い異国人医師を熱演しています。最後にNFL選手会の会合に招かれて行った彼のスピーチは本当に感動ものです。



僕も仕事柄、この訴訟については提訴された時からずっとフォローしていました。しかし、その裏にこんな人間ドラマがあったとは知りませんでした。また、選手の自殺や異常行動なども、映像で見るとその迫力や胸に訴えてくるものが全然違います。いろいろと書きたいこともあるのですが、ネタバレになるので止めておきます。

奇しくも冒頭で説明した脳震とう訴訟の和解がつい先日(4月18日)に正式に裁判所から承認されました。NFLは、引退後にCTEやパーキンソン病、アルツハイマー病などの脳疾患を患った選手や家族に総額10億ドル(約1000億円)の補償金を支払うことで合意したのです。

同様の脳震とう訴訟は、プロスポーツだけでなく、NCAAのアマチュアスポーツや高校スポーツにも広がっています。「米サッカー協会によるヘディング禁止措置の衝撃」でも書いたように、米サッカー界は提訴された訴訟の和解案として、10歳以下の子供にはヘディングを禁止するなどの安全対策を講じることを決めています。

そして、ついにこの流れが国境を越えてしまったようです。イングランドサッカー協会は4月9日、プレー中の脳へのダメージと引退後の脳疾患の関連性について調査するようにFIFAに対して要請しました。これは、元イギリス代表選手だったJeff Astleが脳疾患により59歳の若さで急逝してしまったことを受けたもののようです。

スポーツがビジネスとして成立するようになってまだ半世紀程度しか経っていません。その間、たくさんのイノベーションが起こされ、ビジネスモデルが進化して行きました。しかし、人間の肉体的能力には限界があります。勝利やビジネスの論理が優先されることで選手の健康が危険に晒されることはあってはならないことです。世界のスポーツ界が正しい方向に進んでくれることを願っています。

日本スポーツ界の成長阻害要因であるドグマ主義的経営をどう解きほぐすか?

突然ですが、スポーツビジネスの「戦略とガバナンス」と聞くと、どう思いますか?ちょっとイメージしづらいかもしれませんよね。

一般的にプロスポーツは「リーグ」と「球団」により構成され、それより1つ上のレイヤーに、その競技を統括する「協会」が存在します。ガバナンスは、この3者の役割分担と考えると、少しは分かりやすくなるかもしれません。

商業化(ビジネス)は「リーグ」と「球団」が担当し、代表チームの組織や普及・育成は「協会」が担当するという整理が一般的ですが、競技や国によりそれぞれの役割分担やバランスには違いがあります。

例えば、日本で言えば、サッカー界は協会の傘下にJリーグがあり、その元で各クラブが経営を行っているというピラミッド型のエコシステムが形成されています。力関係で言うと、やはり協会>リーグ>クラブとなるでしょうか。これは、ワールドカップという世界大会で代表チームが勝つことを日本サッカー界として最大の目標として掲げているためですね。

Jリーグの傘下にも、階層型に地域リーグが構成されており、グラスルーツまで視野に入れた大きなピラミッドが形成されています。開放型モデルの特徴ですね。

一方、日本のプロ野球は全く違うモデルになっています。

まず、「協会」に相当する組織がずっとありませんでした。プロ野球や大学野球、高校野球など、それぞれが別々のエコシステムを有しており、サッカーの様に協会の下に階層型に整理されている訳ではありません。ピラミッド型の階層にならずに、まるで別の競技であるかのように、別々に閉じた世界が作られています。こちらは、閉鎖型モデルの特徴です。

成功するプロスポーツ経営を行うためには、競技レベルを上げるというのは常識ですよね。下手くそなプレーでは、誰もお金を払ってまで見たいとは思えません。少なくとも、一見して「うぉー、スゲー!」と素人を唸らせることができるレベルにないと、プロスポーツの興行としては成り立ちません。

競技レベルを上げるには、普及・育成活動を積極的に行い、競技人口を増やすことが重要です。競技人口が増えれば、競技レベルは上がり、誕生するスター選手の数も増えるからです。

冒頭の整理では、普及・育成は「協会」の役割と言いました。でも、先ほど言ったように、日本のプロ野球には普及・育成を包括的に担当する協会は長きにわたりありませんでした。でも、世界屈指の競技レベルを誇っています。

「協会」が“あるべき役割”を果たしていないのは日本のプロ野球だけではありません。米国の4大スポーツは、協会がそもそも存在しないか、存在しても、無きに等しい程度の存在です。なのに、競技レベルは野球もバスケもホッケーもフットボールも非常に高い。右肩上がりの成長を続け、大いに儲かっています。

これはどう説明すればいいんでしょう? スポーツビジネスの経営において、成功するための「共通解」はあるのでしょうか? あるいは、ビジネスモデルにより、KSF(成功要因)は違ってくるのでしょうか? 成功するビジネスモデルを読み解くための「変数」とは何なんでしょうか?

前置きが大変長くなってしまいましたが、来週末の17日(日)に、こんなテーマでディスカッションを実施します。



先日、SBAのコアメンバーで議論していて、個別のセッションやオムニバス型のスクールでは、それぞれのコマが個別最適になっているため、結果として漏れてしまう視点があるのではないかという話になりました。確かに、例えば各収益領域での効果的な手法やトレンドを知っておくことが重要であるのは間違いないのですが、思考が狭く、先鋭的になってしまいがちです。

しかし、経営者としては、むしろ全体を俯瞰して本質を押さえ、組織の方向性がずれてきたら、柔軟に方向転換していくことの方が重要なのではないか。そして、日本のスポーツ界は、こちらのアプローチがやや不得手なのではないか、という仮説から生まれたセミナーです。

俯瞰してみるためには、自分の組織や競技「外」のことも知っている必要があります。自分とは異なる競技の経営モデルも視野に入れ、自分の組織との比較や、それぞれの長所や短所を踏まえつつ、「現在の経営環境を分析・判断すると、今のモデルが最適である」と常に自問自答を繰り返しながら、最適解を探して変化し続ける、というのが理想かもしれません。

しかし、日本では競技の縦割りの弊害なのか、競技間に大きな壁があるように思います。競技間で人材やノウハウの移転があまり多く見られないように見受けられます。誤解を恐れずに分かりやすく言えば、サッカーの人は野球をあまり知らないし、野球の人はサッカーをあまり知りません(ビジネスモデルという意味です)。

そのため、極端に言えば、盲目的に今のモデルを信奉し、「とにかく言われた目的地まで一生懸命早く走ります」というアプローチが多いような気がします。でも、「本当にこの目的地でいいのか?」「靴を履きかえた方がいいのでは?」といった前提を疑う思考があれば、もっと楽に目的を達成できるかもしれません。

米国のスポーツビジネスは良くも悪くもその点は非常にシンプルで、とにかく「どうすれば一番カネを稼げるのか」が指標になります。カネを稼げない手法や人材はどんどん淘汰され、進化していきます。

一方、日本のスポーツ界は、教育とスポーツが融合しているせいもあってか、米国ほど割り切れない競技が少なくないと思います。それは、良い点ももちろんあるのですが、(カネで序列ができないので)派閥や面子争いが多発したり、自分達が最初に採用した経営上のポジショニングがドグマ(教義)化し、それを軌道修正することを良しとしないような風潮も見られます。

もしかしたら、日本のスポーツ界の最大の成長阻害要因はドグマ主義的な経営なのかもしれません。先日、パネリストと下打ち合わせを行ったのですが、この日本のドグマ主義をいかに解きほぐしていくかが、当日の大きな流れになるかもしれません。

そして、当日はこのテーマにぴったりのパネリストにお越し頂くことになっています(笑)。

まず、FIFAコンサルタントの杉原さん。世界各国のサッカー協会に飛び回り、協会運営やリーグ・クラブのガバナンスのアドバイスをしています。杉原さんの口ぐせは、「コピペはダメ」。上手く行っている他の事例をただ真似しても上手く行かないので、自分の組織が置かれた環境に最適化して進化し続けるしかないということですね。

多くの国の異なるガバナンスモデルを見ている杉原さんだけに、説得力があります。スポーツ組織の俯瞰的なガバナンスを語ってもらうには最強の人でしょう。ここでは刺激が強すぎて書けませんが、日本のスポーツ界が当たり前だと思っている考え方に、いくつも疑問点を持っている視点には、いつも驚かされます。

次いで、弁護士の山崎さん。山崎さんのことは、プロ野球選手会の顧問弁護士やFIFProのアジア支部副代表といった選手の権利を守る側のお仕事でご存知の方は多いと思いますが、実はスポーツ組織のガバナンスの専門家でもあります。

今年、日本のバスケ界には新たにBリーグが設立されましたが、その契機となったのはFIBAからの制裁(活動停止処分)でした。文科省の推薦で混乱下にあったバスケ界に入り、誤解を恐れずに言えば、上手く日本バスケ界の利害が損なわれない形で“大政奉還”し、Bリーグ誕生の下地を作ったのが、他ならぬ山崎さんです。

そして、言わずとしれた荒木さん。日本のプロ野球界のことをこの人以上に知っている人は少ないでしょう。球団経営からリーグ経営まで、酸いも甘いも知り尽くしている?方です。

特に、ガバナンスという文脈では、荒木さんの千葉ロッテ時代の経営改革の話も参考になるのではないかと思っています。というのも、実は日本のスポーツ界で一番環境にうまく適応して進化しているのは、パ・リーグの球団なのではないかと思うからです。それはなぜか? 種明かしは当日に(笑)。

そして、最後に蒔平さん。彼女はbjリーグの千葉ジェッツを立ち上げた創設メンバーの一人で、今はスポーツITベンチャーに勤務しています。バスケと言う、今日本で最も動きのあるスポーツの黎明期をクラブ経営者として過ごし、マイナースポーツの台所事情も肌で知っている人材です。

今は「スポーツ×IT」という視点からアウトサイダーとして様々なスポーツに関わることになり、クラブ経営者の経験を持ちながら、より業界を俯瞰してみることができる数少ない人材と言えるでしょう。

ということで、当日はこんなメンバーから一日あーでもない、こーでもないという議論をやってみようと考えています。きっと今までのセミナーとは一味違った新たな視点や気づきに出会えるのではないかと、司会者ながら期待しています。

解決されつつある代理人の“ダブル・エージェント問題”

March Madnessもついに土曜日にFinal Fourが行われ、名門North CarolinaとVillanovaが決勝進出を果たしました。今晩、いよいよ決勝なのでどちらが勝つのか楽しみです。

ところで、NCAAバスケでは古豪として知られるMemphis大学で、ヘッドコーチの代理人NextLevel Sportsの“ダブル・エージェント問題”が発覚して物議を醸しています。同大学バスケ部は残念ながら最近は低迷を続けており、現ヘッドコーチのJosh Pastnerの手腕が改めて問われることになっています。

実は、同社はMemphis大学のAD(Athletic Director)のマネジメントも行っているんですね。つまり、雇う側(AD)と雇われる側(コーチ)の両方の代理をしていたことが問題視されているのです。実際、Pastnerは現ADのもとで2013年に契約を延長しており、2018年までの5年契約を結んだのですが、この際、大学側が契約途中で彼を解雇する場合は1060万ドルの違約金を支払うというバイアウト条項が付与されていたんですね。

これでチームの成績が良ければ問題にはならなかったのかもしれませんが、近年の成績低迷の上、この妙にコーチに優しいバイアウト条項の存在も明るみになり、ADとマネジメント会社がグルになってコーチを雇ったのではないかという疑惑が浮上してきたという訳です。

大学側はこの代理人とADに利害相反があった可能性があるとして、現在調査を進めています。代理人の利害相反については、今年の2月にNBAも同じ代理人が選手とコーチやGMなどを同時に代理することを禁止するなど、代理人規則の厳格化に着手しており、今後、米スポーツ界ではプロ・アマを通じて代理人の利害相反の排除を徹底する方向に向かっていくのではないかと思われます。

 

米サッカー女子代表が男女の待遇格差是正を求めて不服申立て

米サッカー女子代表チームが、サッカー協会による男女の待遇格差に我慢できなくなりアクションを起こしました。

U.S. women's team files wage-discrimination action vs. U.S. Soccer(ESPN)
「男子との報酬格差に不服」米サッカー女子代表(読売新聞)

ご存知のように米サッカー女子代表はなでしこジャパンの好敵手。FIFAランキングも堂々の1位です。実際、米国内では弱い男子(といっても、FIFAランキングは30位)よりも女子代表の方が圧倒的に人気があります。

そして、日本との大きな違いは、女子代表の方が男子代表よりも稼ぐ点です。2015年では女子代表の方が男子よりも2000万ドル(約22億円)も多く稼いでいたとのこと。それにも関わらず、女子の受け取る報酬は男子の1/4に過ぎないということで、このたび代表チームの主力5選手(日本でもお馴染みのGKホープ・ソロやFWアレックス・モーガンら)が3月31日に米雇用機会均等委員会(Equal Employment Opportunity Commission)に不服申立てを行いました。

この訴え、分かりやすく言えば、日本でも叫ばれている「同一労働同一賃金」を求める争いとも言えます。同じサッカーを職業としてやっていて、しかも男子よりも稼いでいるのに、なぜ報酬が低いのか?という疑問に、これまで米サッカー協会は明確な回答をしてきませんでした。

過激な発言で知られるソロ選手などは、「私たちは世界最高のチームで、ワールドカップで3回、オリンピックで4回優勝した。男子は大会に出場するだけで、私たちが主要大会で優勝して受け取る以上の額を手にしている」という声明を発表するなど、血気盛んです(笑)。

訴状では、
  • 女子は親善マッチ20試合(年間で求められる最低試合数)を全勝しても選手一人当たり9万9000ドルしかもらえないのに、男子は同じ条件26万3320ドルを手にする
  • 男子は全敗しても10万ドルが保証されている(女子の全勝以上の金額)
  • 20試合以上プレーしても、女子の場合追加報酬はないのに、男子は1試合につき5000ドル〜1万7625ドルが支払われる
などの報酬条件を明らかにし、男女の不平等な状況を公表しています。

米国では、USオープン(テニス)などでは完全に男女同一賃金(Equal Pay)が確立しています。つい先日、BNPパリバ・オープンの大会ディレクターが「もし私が女子選手だったら、毎晩ひざまずいて神に感謝するだろう。テニス界をけん引する、ロジャー・フェデラーやラファエル・ナダルが生まれてきたことをね」などと女子が男子の人気・実力に便乗していると発言して大きな批判を浴びたばかりです。

特に米国サッカー界では女子代表の方が男子代表より稼いでいるだけに、この申立ての行方が気になりますね。サッカー協会がどのように反論するかも興味があります。

ちなみに、女子代表チームを弁護するのはNFL選手会やNBA選手会の顧問なども務める大物弁護士のJeffrey Kessler。米サッカー協会は苦戦するでしょう。

しかし、この不服申立てを行った3月31日というタイミングもKessler氏の指示だったのかは知りませんが、かなり練られていたように感じます。というのも、米男子代表チームは3月25日にアウェイのグアテマラ戦にまさかの敗戦を喫し、2018年WC予選敗退の崖っぷちに追い込まれていました。29日に再戦するホームのグアテマラ戦で敗れると、WC出場資格を失うという状況でした。

結果的に29日に勝利して事なきを得ましたが、ここで敗れていれば、「男子代表はWC出場もできないのに、世界ランキング1位の女子代表の4倍の報酬をもらっている」とその格差が際立つストーリーになっていたかもしれません。

いずれにしても、男女の報酬が最終的にどのようなロジックによって決められるべきなのかについて、協会や当局がどのような主張をするのか注目です。男女同一賃金の実現に向け、一石を投じる戦いになるでしょう。

インターン必読書

入社3年目までに勝負がつく77の法則」でも書いたように、うちのインターンには必読書があります。特に社会人経験の少ない、もしくは全くないインターンにはこの本を課題図書として薦めています。

多分、いわゆる「ゆとり世代」や「さとり世代」が増えつつある今の社会の雰囲気や学生気質から考えると、むしろ嫌われるような言葉や価値観満載の本かもしれません。例えば、こんな感じです。

・20代のうちについた差は取り戻せない
・とにかく量をこなす
・叱られたら「ありがとうございます」
・地獄の中でこそ得るものが多い
・守衛のおじさんの名前を覚える
・自分のまわりにはつまらないヤツしかいないのは、自分がつまらないヤツだからだ
・どんな仕事でも、結果が出るまでには10年かかる

ね、嫌ーな感じでしょ。僕が20代の頃にこの本を読んでも響かなかったかもしれません。実際、僕がこの本で指摘されている“法則”の重要性や普遍性に気付けるようになったのは、独立・起業してからです。

そして、最近もう1冊、これもうちのインターンの必読書にしよう!と思った本に出会いました。「コンサル一年目が学ぶこと」です。

この本は若干手前味噌なところもあります。というのも、僕が新卒で入社したアンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)の元コンサルタントの方が書いている本だからです。

今でこそ、「外資系」と言えば巷でももてはやされている感があるようですが、僕が入社した1996年当時、エリートや常識人が外資系に就職するなんて考え方がなかった時代です。親からも入社を強く反対されました(笑)。そんな時代だったからこそ、クライアントにバリューを出すことを徹底的に叩き込まれました。

奇しくも、「入社3年目までに勝負がつく」ではないですが、頭脳明晰・一流コンサルタントでもない自分が、NYで独立起業して10年もやってこられたベースになっているのは、アンダーセンで叩き込まれたコンサルタントとしてのベーシックなスキルや態度があったからだと痛感します。

2冊の本は対照的な内容に見えるかもしれませんが、前者はビジネスパーソンに必要となる普遍的な態度(Attitude)について、後者はどの産業にも共通するスキル(Portable Skill)について書いてあると整理すれば良いと思います。

10周年

明けましておめでとうございます。

お蔭様で、ちょうど本日2016年1月1日をもってトランスインサイト株式会社も10周年を迎えることができました。今日から11年目がスタートします。

会社を作った時はまさか10周年を迎える日が来るとは思っていませんでした。そんな余裕なかったですから。まあ、今もそんなに余裕があるかと言えば、常に全力で突っ走っていないと安心できないんですけどね(笑)。

ここまで来ることができたのは、弊社の仕事に価値を認めて下さるお客様、仕事をサポートして下さるパートナー企業の皆様、離れていても志を共にできる仲間、会社のスタッフ、インターン、そして、仕事ばかりしている自分を支えてくれる奥さんのお蔭です。

この場を借りて心より御礼申し上げます。

10年一区切りとも言いますが、特に11年目から何か変わったことをしようとも思っていません。これまで通り、お客様の期待を常に上回るアウトプットを出し続けることを目指し、その結果として日本のスポーツビジネス界が健全に発展していくことに貢献できたらと思っています。

とはいえ、10年以上もこの仕事をしていると、どうしても発想が固まってきたり、過去の実績に胡坐をかいて新しい挑戦を避けてしまったりしがちになると思います。特に独立してやっていると、そんなことを指摘してくれる人もなかなかいないので、この点は肝に銘じたいと思います。

また、ネットメディアの発達で情報の取得はしやすくなりましたが、それをインプットして深く考える時間が逆に取れなくなってきたように思います。特に2020年の東京オリンピックに向けて日本のスポーツ界はバブルの様相を見せており、玉石混交の情報が更に増えていくものと思います。

これまでの反省として、短期的な情報の取得と拡散に時間を使い過ぎていたように思います。今年は、もう少し長期的な視野から深く考える時間を増やしていこうと思います。

最後に、昨年は縁あってSBAという教育プラットフォームを立ち上げる機会を頂きました。設立してまだ3か月程しか経っていませんが、様々な領域から優秀な方々にご支援頂き、今後とても大きな広がり・可能性を感じることができています。

2020年に向け、人材育成もスポーツ界の大きな課題だと感じていますので、2016年はSBAを通じて様々な挑戦を行っていく予定です。こちらもご期待下さい。

ということで、2016年もどうぞよろしくお願いします。
今年もまだ見ぬ同志との出会いを楽しみにしています。

Trans Insight Corporation
President
鈴木友也

2015年の日米スポーツ界を振り返って

日本は新年を迎えましたが、日本より14時間遅いニューヨーク(米国東部標準時)はまだ大晦日の夕方です。例年12月は比較的静かな月なのですが、今年は年明け早々にリサーチの締切があったり日本からの来客があり、その準備などで珍しく大晦日までバタバタしています。

さて、大晦日ということで、今年1年を振り返ってみることにします。

■米国スポーツ界3大ニュース
業界秩序へのインパクトの大きさという視点から、以下の3つを選んでみました。

‖膤悒好檗璽弔吠兌舛涼し
ノースウエスタン大学フットボール部員による労働組合結成の動きはNLRBにより却下され(ただし、学生選手の労働者性そのものについての判断はしていない)、オバンノン訴訟の控訴審により第一審の判決内容が一部取り消さりしましたが、基本的にNCAAがその規約において「プレーの対価として報酬の受け取りを禁止する」こと(いわゆる「アマチュア規定」)は明確に違法(反トラスト法違反)であるという点は司法審査により確認されたのではないかと思います。

これにより、NCAAが「学生の本分は勉強」との建前を取りつつ金儲けにまい進している欺瞞が指摘された形になりました。今後は、NCAAが稼いだ富を学生との間でいかに分配して行くかという「How」の部分の詳細が議論されていくことになると思います。

これにより、大学スポーツビジネスのコスト構造や、大学スポーツの位置づけそのものが多かれ少なかれ変容することは避けられないのではないかと思います。

DFSの隆盛と司法審査
これは最近日経ビジネスでも書きました。今年になり一気に存在感を高め、事業的にも大きく売り上げを伸ばしてきたDFSでしたが、まさに「これから離陸」という時に、例のスキャンダルによってニューヨーク州により提訴され、司法審査を受けることになりました。

MLBやNBAが今年頭からスポーツ賭博合法化に舵を切っていることもあり、最終的にDFSも競馬などと同様に政府・自治体による「公認ギャンブル」として公的機関やスポーツ組織と共存共栄して行く形になるのではないかと思います。

しかし、DFS事業者はちょっと脇が甘かったですね。また、スキャンダルに乗じて一気に司法審査にまで持っていかれてしまったのは、裏で「DFSの合法賭博化」のシナリオを描いていた人が相当いたのではないかと穿って考えてしまいます(笑)。

インナーマーケットのストリーミング開放
ここはちょっと分かりにくいかもしれませんが、RSN(ローカルスポーツ専門局)による試合中継が基礎になっている米国スポーツ界では、動画配信(テレビ+ネット)を「インナー・マーケット」(Inner Market)と「アウター・マーケット」(Outer Market)に分けて行っています。

例えば、MLBを例に挙げると、NYヤンキースとボストン・レッドソックスの試合がローカルでテレビ中継される場合、ヤンキースを放映権を持つYESとレッドソックスのNESNの放送が中継されるエリアを「インナー・マーケット」、それ以外の地域を「アウター・マーケット」と呼びます。

MLBでは、年間2430試合がテレビ中継されますが、うち全国放送が中継するのは約140試合に過ぎません。9割以上の試合はRSNによりオンエアされるのです。つまり、MLBのメディア露出を支えてくれているRSNはMLBにとって最も大切にしなければならないクライアントであり、この権利を守るために複雑な権利処理を行っているのです。

歴史的に、テレビのインナー市場からメディア露出は始まり、1990年代になるとExtra Inningsのようなテレビのアウター・マーケットパッケージが生まれ、2000年代にMLB.TVのようなネット中継のアウター・マーケットパッケージが生まれるという経緯で権利処理が行われてきています。

RSNの権利を守るため、インナーのネット配信は長らく開放されていなかったのですが、4大スポーツでは昨年からNBAがこれを「TV Everywhere権」としてRSNに開放し、来年からMLBも開放して行く方針を先日発表したばかりです。

日本だとまだ地上波テレビ局が良くも悪くも動画配信市場を独占してしまっているので、未だに「カニバライズ」の議論から前に進めないようですが、OTT事業者との競争が激しい米国では、既にカニバライズを議論するフェーズは終わり、OTT事業者への対抗上、TVE権を活用して包括的にユーザを囲い込む方向に来ています。

■日本スポーツ界3大ニュース
日々仕事をする中で感じていることを踏まえ、以下の3つを選んでみました。

.リンピックバブル
僕のところもここ1〜2年でオリンピック関係の案件が急に増えてきましたが、スポーツ界に事業的に参加してくるプレーヤーの顔ぶれも大きく変わってきたように感じます。言い方は悪いかもしれませんが、今まではスポーツ界に見向きもしなかった優秀な個人・組織にスポーツ界へ関心を持ってもらえるようになりました。

今のところ、この地殻変動を牽引しているのは公式スポンサー企業の存在です。少なくとも2020年までのあと5年間に数十億以上の投資を行っていくわけですから、このスポンサーマネーを見込んだ多くの事業者が参戦してきています。ちょっとしたバブルの様相ですね。

逆に、ちょっと気になるのは、こうした祭りへの盛り上がりを見せているのは、アウトサイダー側に多く、スポーツのインサイダーが少し冷めている(乗り遅れている?)と感じる点です。むしろ今までの業界経験がない新規参入アウトサイダーの方が、客観的に日本スポーツ界のオポチュニティを見ることができるのかもしれません。

球団と球場の一体経営の常識化
最近もベイスターズが横浜スタジアムにTOBかけたりするなど、球団と球場は一体経営であるべきという点が日本でも常識になってきました。見方を変えると、収益を追い求めて経営努力している球団とそうでない球団の差がここ5〜10年で大きく開いてきてしまったようにも見えます。

日本のスポーツ界では、経営体力的に一番余裕のあるプロ野球球団がこの動きを牽引していますが、これがJリーグやBリーグなどにも広がっていくとよいと思います。

その中でネックになるのが多くの球場を保有する自治体のスタンスでしょう。日本の公的スポーツ施設は「体力増強」のために建設されているという建前上、エンターテイメントとしての利用を想定していません。こうした中では、ガンバ大阪のように球団自身が球場を作ってしまうような発想力や行動力が必要になってくると思います。

B.LEAGUE設立
すったもんだあった日本のバスケ界がようやくまとまり、新リーグが立ち上がったのは皆さんご存知の通りです。

日本だと、野球とサッカーが事実上の2大プロスポーツリーグということになります。2nd Tier以下には、競技により実業団やアマチュアリーグなどが存在しているわけですが、Jリーグの成功があったからか、そうした競技の関係者と話していると「うちもプロ化できればうまく行くはず」という、盲目的な思い込みを感じてしまうケースがあります。

ただ、いままで実業団あるいはアマチュアだったのをプロ化するということは、サラリーマンが会社を辞めて起業することに等しいわけですから、そんなに生易しい話ではありません。むしろ、実業団という形ででも競技が存続していること自体を有難いを思うべきなのかもしれません。

そんな中、Bリーグには確固とした戦略が描かれています。B2Cにおける競技者DBとの連携や、B2Bにおける日本代表チームとのマーケティング活動の統合などは、プロ野球やJリーグでも未着手の領域です。事務局の人間に知人が多いということもあり、是非今までの日本スポーツ界になかったような斬新な取り組みを期待したいです。

ということで、勝手ながら日米スポーツ界の2015年3大スポーツニュースでした。
皆さん良いお年を!

米国スポーツビジネス界のマネジメントはこう見る

毎年この時期になるとSportsBusiness Journals誌が読者アンケートを行います。SBJは、主に米国でスポーツ関連組織の経営層が読んでいる専門誌なので、これをみると米国スポーツ界のマネジメント層がどのような見方をしているのかが分かります。

SBJの読者アンケートについては、以前「最も価値のないスポンサーシップ資産は看板広告」「米国スポーツビジネスにとって最大の脅威とは?」などでも少し触れましたね。

SBJの最新号で今年の読者アンケートの結果が掲載されていたので、その中で個人的に興味深かった点を拾ってみることにします。

■イケてる(hottest)スポーツリーグを3つ挙げよ
1. NFL(70%)
2. NBA(43%)
3. NCAA(31%)

⇒やっぱりNFL人気は不動ですね。これは予想通りでしたが、学生アスリートへの報酬問題など、何かとネガティブなニュースが多かったNCAAが3位につけているのは興味深いです。まあ、それだけビジネスとして上手く行っているという評価なのでしょう。

■大学フットボールで一番問題なのは?
1. 選手の搾取(32%)
2. 学校間の収益格差(23%)
3. 怪我・脳震とう(16%)
4. 商業化(12%)
5. 観客動員数の現象(11%)

⇒「選手の搾取」と「商業化」は表裏一体の問題ですね。とはいえ、今更商業化を止めるわけにも行きませんから、方向性としては選手に適正な対価を支払う方に向かうのだと思います。問題は「どの程度」それを行うかでしょう。

■賛成?反対?
・学生選手への報酬の支払: 賛成(44%)反対(56%)
・試合中の選手へのマイク着用: 賛成(64%)反対(36%)
・ユニフォームへの広告掲出: 賛成(53%)反対(47%)

⇒まだ学生に報酬を支払うことに対してはアレルギーを感じる人が多いようです。

■次の労使協定更改時に労働争議が起こりそうなリーグは?
1. NBA(39%)
2. NFL(29%)
3. NHL(17%)
4. MLS(9%)
5. MLB(6%)

⇒かつては「世界最強の労働組合=MLBPA」を擁し、労働争議の模範のように言われていたMLBが近年の労使協調路線からMLSを下回っているのに驚きました。NBA、NFL、NHLともに現行の労使協定は10〜11年間の長さで、最も早く更新時期を迎えるNFLでも2020年ですから、まだ少し先の話になりますかね。

■今年スポーツビジネス界で最も大きなニュースだったのは?
1. FIFAのスキャンダル(41%)
2. ファンタジー・スポーツの隆盛(38%)
3. トム・ブレイディとNFLの戦い(37%)
4. カレッジ・フットボールへのプレーオフ制導入(21%)
5. 女子サッカー代表のWC優勝(19%)

⇒アメリカ人がFIFAに関心を払うなんて珍しいですが、フェアであることを金科玉条とするアメリカ人は不正が大嫌いですから、「やっと捕まったか」って感じでしょうか?やぱりフットボールネタが多いですね。

■北米スポーツビジネスの最大の脅威は?
1. チケット価格の高騰(33%)
2. ユーススポーツ競技者数の現象(17%)
2. コードカッティング(有料テレビの解約)(17%)
4. 不正行為(ドーピング、ルール違反など)(12%)

⇒チケット価格の高騰は2年前の調査よりも10ポイント以上増えてますね。例えば、今年のMLBのFCI(4人家族での平均的な観戦支出)は212ドル。これでも4大スポーツの中では最も安い値です。逆説的ですが、米国のマネジメント層にチケット価格が高いという自覚があることを知れて良かったです(笑)。

■スポーツリーグで今後の収益的なのびしろがある領域は?
1. OTT・ストリーミング権(33%)
2. 新たなスポンサーシップカテゴリ・資産(29%)
3. 海外への球団拡張(20%)
4. 周辺イベント(17%)

⇒やっぱりデジタルですよね。テレビ放映権は日米でメディア環境が異なるのですが、デジタルの部分はアメリカの取り組みが大いに参考になると思います。

■最も指導力のあるコミッショナーは?
1. Adam Silver(NBA)(57%)
2. Rob Manfred(MLB)(11%)

⇒NBAは前任のDevid Sternの後光がまだあるからでしょうか。ここ10年くらいはほとんどNBAのコミッショナーがトップです。日本にいるとあまり実感ないと思いますが、「最も革新的な経営を行っているリーグ」と言えばNBAです。「MLB新コミッショナーの驚きの初仕事」で衝撃の仕事始めに触れたマンフレッドさんは、意外に評価が低いです。

■ユーススポーツの最大の脅威は?
1. 1競技への特化傾向(30%)
2. 盛り上がりすぎる両親(24%)
3. 若年層での運動時間の現象(22%)
4. 時間的コミットメントの多さ(11%)
5. 費用(10%)

⇒「専門化が進み、日本化する米国のユーススポーツ」でも書きましたが、研究者の間では複数スポーツを同時並行で経験するより、1つのスポーツに専念する方が選手の肉体的成長が阻害され、バーンアウトのリスクも高まるため、選手として大成しづらいことは周知の事実になっています。しかし、これとは裏腹に、ビジネス化するユースビジネスに親が巻き込まれ、専門化が進んでいる実態がありました。マネジメントレベルでは、この点に既に気づいているのですね。へー、って感じでした。

■どの会社のDFS(デイリー・ファンタジー・スポーツ)をやっているか?
1. DFSはやらない(80%)
2. DraftKings(11%)
3. FanDuel(6%)
4. Yahoo Sports(2%)

⇒これ分かるなぁ。DFSはデイリーと言えども時間取られるから忙しい経営者としては「そんなのやってる暇ない」ってのが本音でしょう(笑)。

とまあ、こんな感じです。アンケート結果を全て見てみたい方はSBJを購読して下さいね(笑)。
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