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メッツが球団株式の一部をヘッジファンド創業者に売却か?

MLBニューヨーク・メッツが球団株式の一部(25〜49%)の売却先を探しているのですが、ヘッジファンドの創業者スティーブ・コーヘン氏への売却で決まりそうです。

メッツのオーナーのフレッド・ウィルポン氏は、米NASDAQ元会長のバーナード・マドフ受刑者による巨額詐欺事件で、同氏と結託して約3億ドルの不正な利益を手にしていたとして、この事件の清算管財人から利益返還を求める訴訟を起こされています。資金繰りが厳しくなることを予想した同氏は、球団株式の一部売却を余儀なくされています。その売却先として名前が挙がっているのがコーヘン氏というわけです。

日本だと、以前村上ファンドが阪神タイガースを傘下に持つ阪神電気電鉄(東証1部上場)の株式を大量取得し、タイガースの株式上場を提案した一件が大きな社会問題になったりしたので、「ヘッジファンドの創業者が球団買収」となると、それはそれで大きな話題になりそうですが、NYでは大騒ぎするほどのニュースにはなっていません。

理由はいくつか考えられますが、まず世界の金融センターであるニューヨークには、ヘッジファンドを創業して億万長者になった人は珍しくないので、そういう人が球団を買収しても別にニュース性がないことが挙げられるでしょう。2002年にレッドソックスを買収したジョン・ヘンリー氏もヘッジファンドの創業者ですし。

また、こちらの方が大きいですが、米国では球団は個人によって保有されるのが主流であり、法人と個人と立場が分けて考えられるためでしょう。

メッツもコーヘン氏個人に売却するようです。これがファンドに売却するとなると話は違ってきますが、そうなるとMLBが許可を下さないでしょう。以前、日経ビジネスの「ベイスターズ買収劇で露呈した日本プロ野球界の“伝統”」でも書きましたが、米国のプロスポーツは基本的に球団保有者には「球団経営が主目的」「営利活動」としてのオーナーシップが求められます。

MLBでは法人所有は認められていますが、法人の事業と球団保有に確固としたシナジーが認められなければ球団買収は認められません。基本的には利害相反があるので、MLBは企業による球団保有を嫌っています。NFLは企業による球団保有自体を禁止していますし。

コーヘン氏はニューヨーク出身で昔からメッツファンだったようですね。

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業を煮やしたMLBがドジャースから経営権を剥奪

日本でも大きく報道されているようですが、MLBの“バド”・セリグコミッショナーが昨日、ロサンゼルス・ドジャースから経営権を剥奪し、一時的にリーグ管轄下に収めることを表明しました。

ドジャースのオーナー、フランク・マッコート氏は2004年1月29日にドジャースをルパート・マードック氏から4億3000万ドルで買収し(今ではこの日が「ドジャース史上最悪の日」と呼ばれているようです)、奥さんであるジェイミー・マッコート氏を球団社長に据えて経営に当たりました。 当初は、女性をターゲットにした経営改革が大きく報道されるなど好意的な露出もあったのですが、一昨年あたりから離婚騒ぎが高じて球団経営への悪影響が指摘されるようになりました。報道によれば、1億ドル以上の球団資金がマッコート夫妻の個人的な“セレブ生活”のために使われていたということです。

こうした背景もあり、ドジャースの経営の不安定さは兼ねてから指摘されていましたのですが、今シーズン開幕戦で起こった事件が、更にファンからの不安を募らせることになりました。対戦相手のジャイアンツのファンがドジャースタジアムの駐車場で襲われてこん睡状態に陥ったのです。球団のセキュリティー体制も問われる結果になりました。

そして、MLBからの介入を決定的にしたのが、FOXからの借り入れです。

実は資金繰りが厳しくなったマッコート氏は、球団としてFOXに約2億ドルの借金を頼んでいました。FOXはドジャースのケーブルテレビの放映権を持っています。まず、これだけでも利害相反がありますが、借り入れ条件として支払期日が守られなかった場合は現行の放映権契約が4年間自動的に延長されるという条項が入れられてました。結果的に、この借り入れはMLBが却下したため実現しなかったのですが、マッコート氏は今度は個人でFOXから3000万ドルの借り入れを行っていたことが発覚したのです。

個人で借り入れれば、MLBからの許可はいらないのですが、こうしたマッコート氏の手段を選ばない資金調達にMLBが業を煮やし、昨日の経営権剥奪に至ったわけです。FOXは全国放送の放映権も持っていますから、リーグとしてもこの利害相反を見逃すことはできなかったのです。

リーグがチームの経営権を引き継ぐというのは珍しいことではありません。例えば、最近ならNBAニューオリンズ・ホーネッツが買い手が見つからずに3億ドルでNBAが買い取っています(現在もNBAが保有)。MLBでも、かつてモントリオール・エクスポズが同じ理由で一時的にMLBにより保有されていた時期もありました(後にワシントン・ナショナルズとして新オーナーに売却)。

しかし、オーナーの個人的な資質が問われて経営権を剥奪されるというのは、前代未聞だと思います。以前、日経ビジネスの「“借金まみれ”からの脱却目指す欧州サッカーリーグ」でも書きましたが、数年前、プレミアリーグなどでは素性の分からない外国人オーナーが増えて球団経営に混乱をきたしたため、オーナーの適格性が厳密に審査されるようになりましたが、米国メジャースポーツでは外国人オーナーはまだ少なく、逆にアメリカ人オーナーがこのような失態を引き起こしたというところが、実は問題の根深さを物語っています。

「マッコート氏の球団所有を認めたのはMLBなんだから、MLBにも責任がある」という意見も出てきています。NBAを筆頭に、外国人オーナーを歓迎して外資を取り込もうとする流れがある中で、この事件はMLBの成長戦略に水を差しかねない事態です。

ドジャースの次はメッツか?などと報じるメディアもあるようです。メッツは米NASDAQ元会長のバーナード・マドフ氏による巨額詐欺事件で同氏と結託して3億ドルもの不正な利益を上げていたとして精算管財人から利益返還を求める訴訟を起こされており、球団株式の売却などで対応しようとしています。笑えない話です。

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MLBのSNSマーケティングで今季初観戦をゲット

昨日、今シーズン初めてMLB観戦にヤンキースタジアムに行ってきました。

僕の体にはレッドソックスの血が流れているので(ニューイングランド地方に住むと自動的にそうなります)、用がない限り自ら進んでヤンキース戦を観に行くことはないのですが(笑)、「MLBシーズンも開幕したなぁ」と思っていたらタイミング良く招待券をもらい、別の調査案件もあったので行ってきた次第です。

招待券だったので、「まあ3階席の端っこの方の安い席だろうなぁ」とタカをくくっていたのですが、席に行ってみてびっくり。レフトスタンドの外野席で、前から6列目くらいの悪くない席でした(後から調べたら100ドル位の席でした)。


座席にはちゃんとクッションが入っており、座席のピッチも広くてゆったりと観戦できる席でした。一緒に行った妻も「これならお尻が痛くならずに落ち着いて観ていられる」と喜んでいました。



招待券なので期待していなかった分、この好待遇に不思議な気分だったのですが、この招待券をもらった経緯を思い起こして、自分なりに納得できる意味づけを考えてみました。

実は、この招待券は今シーズンからMLBが公式スポンサーのペプシと共同でマンハッタン(Broadway + 4th St.)に開設した「MLB FanCave」というバイラル・マーケティングの拠点でもらったものでした。妻から「何だか変なMLBのお店が出来てたよ」という話を聞いたので、ネットで調べてみたのですが、イマイチどういう位置づけのお店なのか良く分からず、「取りあえず行ってみよう」と先週の日曜日に見てきたのです(ちょうどペプシのサンプリングもしてました)。


この「何だか良く分からないけど面白そう」というのがこのMLB FanCaveのコンセプトなんだと思います。中に入って見るとリビングルームのようなスペースがあり、MLB選手がサプライズで遊びに来たり、DJが居てMLBの実況中継を行ったりしているようです。


いつ何が起こっているのかを意図的に曖昧にしてPRしながら、「あそこに行くと何か面白いことがやっている」的な空間を造っているように思いました。

で、僕が行った時は、いきなり「ショーウィンドーから見えるウィリー・メイズの背面キャッチのオブジェの写真を撮ってSNSで流してくれたらヤンキース戦のチケットをプレゼントするよ」と言われ、ワケも分からず言われるままに写真を撮ってきたらチケットがもらえたというワケでした。


ちょっと無理やりな感じの口コミの作り方でしたが、これで兎にも角にも招待券がもらえたので、まあ悪い気はしません。ちなみに、チケットを受け取る際はFacebookなどのSNSに写真をアップした証拠を見せないといけないのですが、僕はスマートフォンは使わない主義なので、それを説明すると、「家で後からアップしてくれればいいよ」とのことで、結構ユルい感じでした(笑)。

招待券の配布は現場で直前に知らせる程度で、大々的には告知していません。広く広報してしまうと招待券目当てのファンが殺到するので、MLB FanCaveのコンセプトをわざと曖昧にしてある程度忠誠度の高いファンが集まるように仕向けておき、そこでゲリラ的にSNSをダシに招待券を配れば、SNS感度の高い忠誠度の高いファンが集まります。

こうしたファンにグレードの高い席での観戦体験を提供すれば、高い確率でポジティブな口コミが生まれます。かく言う僕も、こうしてブログにアップしているわけですから、まんまとその策略にひっかかっているのかもしれません。

ヤンキースとレッドソックスに“お約束”のクリスマスプレゼント

ヤンキースとレッドソックスに“お約束”のクリスマスプレゼントが届きました。MLBからのぜいたく税の請求書です。

課徴金制度は2003年から導入されたのですが、ヤンキースは導入初年度から8年連続で、レッドソックスは2007年以来3年ぶり5回目となりました。税額はそれぞれ、約1803万ドル、約149万ドルとなります。

過去、ぜいたく税を支払ったチームはエンジェルス、タイガースを含めた4チームなのですが、金額的にはヤンキースが他を圧倒しており、8年間でのぜいたく税総額約2億1000万ドルの約92パーセントに相当する1億9221万ドルを支払っています。

YearYankeesRed SoxAngelsTigersTOTALS
2010$18,029,654$1,487,149$19,516,803
2009$25,689,173$25,689,173
2008$26,862,702$1,305,220$28,167,922
2007$23,881,386$6,064,287$29,945,673
2006$26,009,039$497,549$26,506,588
2005$33,978,702$4,148,981$38,127,683
2004$25,964,060$3,148,962$927,057$30,040,079
2003$11,798,357


$11,798,357
TOTALS$192,213,073$15,346,928$927,057$1,305,220$209,792,278
出所: Associated Press

出所: Biz of Baseball

以前、「ヤンキースに“恒例”のクリスマスプレゼント」でも解説したように、徴収されたぜいたく税は、最初の250万ドルが内部留保され、それを超えた額については、75%が選手の福利厚生財源として、残りの25%が“業界成長基金”(Industry Growth Fund)の財源として用いられることになります。IGFのお金ははカナダや米国をはじめ全世界での野球の普及に使われることになります。

久しぶりのドジャースタジアム

昨日、久しぶりにドジャースタジアムを視察する機会がありました。



以前視察したのが2004年だったので、6年ぶりの視察になったのですが、その間大規模なリノベーションを経ており、ビジネス構造的には「全く別の生き物」(英語で言えば“Whole Different Animal”)に生まれ変わっていてびっくりしました。ドジャースタジアムはMLBの中でも数少ないチーム保有のスタジアムなので、改善された収益構造は直接球団の財務状況に反映されることになります。

また、ファンの目に見える部分にも細かい点に配慮したリフォームを施していて感心しました。例えば、座席の色にも地元との絆を生み出すストーリーを考えて塗り替えられていました。

以下は2004年に視察した時の写真。



それが、こんな感じに変わっていました。



リフォーム後、座席がフィールドに近い部分から「黄色」「薄オレンジ色」「青緑色」「青」に塗り分けられているのですが、これはそれぞれLAを象徴する「砂浜」「太陽」「海(太平洋)」「青い空」を表しているのだそうです。また、スイートボックスの席は、多民族都市LAにちなんで赤、白、青、緑の4色のストライプになっています。



また、もう1つ驚いたのが、ファン以外のステークホルダーへのきめ細かい配慮が感じられる点。例えば、プレスボックスの後ろの壁には、感謝の意をこめて、ドジャースタジアムがオープンした1962年から現在までドジャーズの記事を書いてくれた記者の名前が一覧として掲出されています(もちろん、日本人記者の名前も入っています)。しかも、一覧は先ほど座席のリフォームでも用いられている、LAを象徴する4色に塗り分けられています。



以前「細部に神が宿る」でも書いたとおり、こうした細部に配慮することは実は非常に大切だと思います。

また、もっと驚いたのがスタジアム内にこんな立派な託児所が設けられていること。



ここは選手や球団職員の家族が試合中に用いるのだそうです。プロ野球球団だけに、子供には専用の“ロッカー”が提供されるという芸の細かさには脱帽しました(シーズン中には各ロッカーに子供の写真が貼られるそうです)。



こんな立派な託児所を持つMLB球団は少ないと思いますが、どこの球場にも大体選手の家族や関係者用のFamily Roomが用意されていますし、関係者用に用意される座席もバックネット裏などかなりいい場所が多いです。

日本人プロ野球選手がMLBに流出する原因は、年俸の違いもありますが、個人的にはむしろこうしたステークホルダーに対するリスペクトの違いの方が大きいのではないかと思っています。

リーグを挙げて“箱ものビジネス”をアップグレード

日経ビジネスオンラインに最新のコラムがアップされました。

今回は、横浜ベイスターズの買収騒動でスポーツビジネス=箱ものビジネスという特徴が改めて周知されたと感じたので、箱ものビジネスという視点からMLBがどのように収益性を高めて行ったのかを解説しています。

収益分配制度は戦力均衡のための仕組みとして理解されていますが、実はこの制度には隠された機能があります。そんな点にも触れています。

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■リーグを挙げて“箱ものビジネス”をアップグレード
 〜MLBの成長戦略を支えた“共有サービス”の思想

 横浜ベイスターズ移転騒動について書いた前回のコラムは非常に多くの皆様に読んで頂いたようです。この場を借りて御礼申し上げます。プロ野球が多くの日本国民にとっての高い関心事であることを改めて痛感しました。

 ベイスターズの移転騒動を通じて、球団経営=箱モノビジネスであることが改めて周知・確認されたのではないかと思います。スタジアムの使い勝手(使用権)や収益分配条件(営業権)が悪ければ、いくら経営努力を重ねても収支を好転することが難しいのです。程度の差こそあれ、ベイスターズは日本のプロ野球が置かれている球団経営の実態を象徴している事例だったと言えるのかもしれません。

(中略)

 実際、MLBでは1991年から2010年までの20年間で全30球団中21球団が新スタジアムを手にしています。平均すれば、毎年1つずつ新球場が建設された計算です。これら全てで球団移転があったわけではありませんが、移転をちらつかせながら球団経営の要諦であるスタジアムを新設・改築することで、MLBは大きくその収益性を向上させて行きました。

 過去15年間でMLBはその売り上げを5倍に増やしています。今回のコラムではMLBが大きく収益を伸ばしてきた経緯やその背景に見られるスタジアムを起点とした“共有の思想"について解説しようと思います。

(続きはこちら
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エージェント活動の規制とそのジレンマ

忙しさにかまけてブログの更新を滞っていました。反省。

最近知人と話したりメディアからの情報に接する中で、エージェント活動を規制する大きな流れが欧米で共通して見られるようになっているように感じます。

例えば、ヨーロッパではFIFAが現行の認定代理人制度を廃止し、来年以降に新制度を導入する意向を示しています。現在の海外移籍のうち、認定代理人を通じた移籍は約3割しかなく、制度自体が機能不全に陥っていることがその理由のようです。

また、アメリカでも代理人事務所間での選手の引き抜き競争が激化し、トラブルが増えているようです。小規模な代理人事務所を経営する知人の話では、最近大手の代理人事務所の選手引き抜き活動が目に余るようになってきているということで、「若者にこの業界に入ることはあまりお勧めできなくなってきた」とこぼしていました。

知人によると、大手事務所の「手口」は、10人ほどのインターンを雇い、彼らに他の事務所とその事務所に所属する選手のリストを渡し、インターンの間で選手の引き抜き競争を行わせるのだそうです。インターンはあの手この手で選手を誘惑し、より多くの選手を「寝取った」インターンが正社員になるんだそうです。まあ、全ての事務所がこうした悪質な手口を行っているわけではないようですが、もう一昔前のような節度や倫理観は失われてしまいつつあるようです。

こうした背景もあってか、MLB選手会も今月に入ってエージェント規則を改定しました。改定の趣旨はエージェント活動の可視化を図るという点だと思われますが、主な変更点は以下の通りです。

1)代理人認証
代理人以外でも選手へのサービスを行う者は選手会から認可を得なければならない

2)勧誘活動
選手勧誘に関するコミュニケーションは可能であれば48時間前に、遅くとも24時間後までに選手会に告知しなければならない

3)金品の授受
代理人のいない選手への金品の授受の禁止。また代理する選手へは1500ドルを上限とする

4)代理人の交代
FAもしくは年俸調停権取得直前の代理に変更には、選手会への届出が必要

5)選手の引き抜き
代理人が所属事務所を辞めて別の事務所に移る、あるいは独立する際に、旧事務所からの選手の引き抜きを禁止する

6)調停義務化範囲の拡大
現在義務化されている代理人と選手間の紛争の調停利用を、代理人間の紛争処理にも拡大する

「エージェント活動」と一言で言っても、その範囲は多岐に渡ります。狭義での「エージェント」は、球団と年俸交渉を行う契約エージェント(Contract Agent)を指すのですが、通常はこの他にCMやエンドースメントなどのマーケティング契約を担当するマーケティングエージェント(Marketing Agent)やファイナンシャルプランナー、税理士、トレーナーなどの多くの人物がチームを組んでいます。

で、従来までは選手会に代理人登録する必要があったのは、いわゆる契約エージェントだけだったのですが、今回の改定によりそれ以外にエージェント活動を行う者(広義での「エージェント」)全てが選手会から認可を受けなければならなくなりました。その上で、選手勧誘活動の可視化のための手続きが新たに定められたわけです。

また、最近NFL選手会もマーケティングエージェントとの会合を開いたようですね。

ただ、選手会にとってジレンマなのは、エージェント活動を厳しく取り締まり過ぎると選手に不利益が生じる可能性があることです。どういうことかと言うと、スター選手を抱える大手代理人事務所が球団に対して強気の契約交渉を展開してくれるお陰で選手年俸が上昇するという事実があるためです(もちろん、選手年俸が上昇する要因はこれ以外にもありますが)。つまり、必要以上に大手事務所を規制し過ぎると、年俸の上昇を妨げることにつながりかねないわけです。そのため、「選手会は大手事務所に甘い」という批判が小規模事務所から出たりもしています。

大金を稼ぐ選手の周辺業務には多くの人が集まり、多くの新しい職業が生まれるようになってきています。場合によっては「選手が試合に集中できる環境を整備する」という代理人の存在意義と逆の結果をもたらすケースもでてきてしまいます。選手会は、代理人を上手く活用して選手の利益を守りつつ、代理人の不祥事から選手を守るという微妙なかじ取りを迫られるようになってきました。

【参考情報】

レンジャーズの売却先が決定、チャプター11を離脱

8月4日に実施された入札(オークション)によりMLBテキサス・レンジャーズの売却先が現同球団社長のノーラン・ライアン氏らの率いる投資家グループRangers Baseball Express(RBE)に決まりました。落札額は3億8500万ドルでした。

MLBテキサス・レンジャーズがチャプター11を申請」でもお伝えしたように、当初レンジャーズはRBEへの売却が規定路線だったのですが、多額の債務を抱える同球団のオーナー会社Hicks Sports Groupの債権者がそれに待ったをかけていました。シーズン開幕までに売却話にケリをつけておきたかったMLBは、RBEへの売却で話をまとめにかかっていたのですが、売却条件にHSGの債権者が首を縦に振らず、泥仕合が展開されていました。

結局、破産裁判所管轄で8月4日に入札を行うことになったのですが、その裏には、債権者グループに提訴されることを恐れたMLBが態度を軟化させたという事情もあるようです。「MLBが享受する「反トラスト法免除法理」とは?」「MLBが享受する「反トラスト法免除法理」とは?」などでも解説したように、MLBは反トラスト法から部分的に免除されるという恩恵を受けていますが、今回の一件で「MLBは恣意的に球団売却先を決めている」として反トラスト法違反訴訟を起こされるのが嫌だったのですね。万が一敗訴した場合、そちらの方は失うものが大きいですから。

ただし、MLBが入札を認めたことで、今度はRBEが売却契約で基本合意していたレンジャーズを提訴するという事態にも進展していました。ライアン氏は自分で自分が社長を務める球団を提訴したことになります。何ともややこしい話ですが。

入札には、NBAダラス・マーベリクスのオーナーであるマーク・キューバン氏らも参加したのですが、冒頭でお伝えしたようにRBEが競り勝ちました。RBEは入札額に加え2億ドル以上の負債を引き継ぐことになるため、最終的な買収金額は5億9300万ドルになると見られています。当初、RBEは5億7500万ドルで基本合意していたと言われていますから、入札を行うことで1800万ドル球団価格が上昇したことになります。

まあ、これで形としては(球団を買収できた)RBEも(買収価格を上げられた)債権者も(訴訟を起こされずに済んだ)MLBも皆ハッピーということになり、「これにて一件落着」ということになりました。売却先が決まったレンジャーズは、チャプター11を離脱しました。

【関連情報】

写真変えました

ご覧の通り、気分転換にブログの写真を変えてみました。特にメッツファンというわけではないのですが、Citi Fieldは結構好きな球場の1つです。

メッツという球団は1962年のエクスパンションで誕生した球団なのですが、ニューヨークにはもともとヤンキース以外にも、ブルックリン・ドジャーズ(現ロサンゼルス・ドジャーズ)とニューヨーク・ジャイアンツ(現サンフランシスコ・ジャイアンツ)がフランチャイズを置いていたのですが、両チームとも1958年に西海岸に移転してしまいました。

メッツはちょうど両球団が去った後の心理的空白にできた球団とも言える存在で、青とオレンジのチームカラーはドジャーズ、ジャイアンツから引き継いだと言われています。以前、「ファン心理をくすぐるスタジアムの仕掛け」でも書きましたが、このCiti Fieldのデザインは、ブルックリン・ドジャーズがプレーしていたエベッツ・フィールドを模倣しています。

現在、米国のスタジアム設計では“「が」から「も」へのシフト”が進んでいます。

これだけ聞くと訳分からないですが、要は“スポーツ「が」見たい人のためのスタジアム”から“スポーツ「も」見たいけど、他のこともしたい人も楽しめるスタジアム”に設計思想を大きく変えています。Citi Fieldは、そんな「も」へのシフトを体現しているスタジアムの1つです。

過ちにどう向き合うか

過ちを認めてそれを詫びる、ということがなかなか出来にくい社会になってきているのかもしれません。

日本でも大きく報道されていると思いますが、メキシコ湾でのBP社の保有していた石油掘削施設の爆発事故に伴う原油流出問題がこちらでは大きな社会問題になっています。一体どれだけの原油が毎日流出しているのか誰も正確に分からない中、多くの地元民や関係者が石油除去活動を行っています。それと対照的に、危機感の感じられないBP社の対応に批判が集中しています。

BPの最高経営責任者のヘイワード氏は「早く自分の生活を取り戻したい」「メキシコ湾は広いから影響は微々たるもの」など失言を繰り返しています。特にCNNとBPがやりあっているのですが、ヘイワード氏は度重なるCNNからの番組出演要請に「朝型人間で夜寝るのが早いから(夜のニュース番組には)出演できない」などと言っている始末。

しかも、今CNNのサイトで「BP」のキーワードを入れてニュース検索すると、真っ先にBPによる広告が表示され、「BP社によるメキシコ湾での取り組み」と題した特設ページにリンクされます。これは、いかにBP社がこの事件に精力的に対応しているかをPRするサイトなのですが、「そんなことにカネを使う位ならもっと事件の本質にカネを使え」とCNNも批判しています。

こうしたニュースが連日報じられていて、見ていてとても悲しく残念な気持ちになります。

マグワイア氏薬物使用告白のインパクト」「タイガー・ウッズ」などでも書きましたが、人間の真価とは間違いを犯した時にこそ問われるものだと思います。

こうした重いニュースがある一方で、人間の潔さに感動したニュースも最近ありました。日本でも大きく報じられているようなので、ご存知の方も多いと思いますが、完全試合目前で誤審により大記録達成を逃した投手と審判の話です(詳細は、和光大学の原田尚幸先生がブログにも書かれていますので、そちらを読んで頂くとして、概要な以下のような話です)。

今年5月16日にメジャーに昇格したばかりのタイガースのアルマンド・ガララーガ投手が9回2アウトまで完全試合を達成していたのですが、最後になるはずの打者のセカンドゴロが誤審でセーフになってしまいました。抗議でも判定は覆らず、大記録達成は夢に終わってしまいました。

しかし、試合後ビデオで誤審を確認したジョイス塁審は、シャワーも浴びずにガララーガ選手の元に謝罪しに向かったそうです。「完全試合を台無しにしてしまった。審判人生で最も大きな判定だった」と悔やんだそうです。これに対して、完全試合を逃したガララーガ投手は「誰も完全ではない」と応えたそうです。

多分、ジョイス塁審は本当にセーフだと思ったんだと思います。あの状況で、彼は地球上で最もプレッシャーのかかった立場にいたはずです。自分が重大な任務についていることは、自分が一番よく分かっていたはずです。そして、自信を持ってセーフと判定を下したのでしょう。

世界中を敵に回す中、過ちを確認すると、シャワーも浴びずに謝罪に向かう。誰にでも出来ることではないと思います。過ちは誰にでも起こることですが、過ちを認めることは誰にもできることではないようです。

ジョイス塁審は“世紀の誤審”を犯した審判として今後も記憶されるでしょうが、彼の潔さも、併せて語り継がれることになるでしょう。
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