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2015年米国スポーツ界のトレンド予測

昨年一昨年に続き、米国スポーツビジネス界で今年話題になりそうなトレンドや大きな岐路をむかえそうなトピックを勝手に予測してしまおうと思います。

■学生アスリートの労働者性の判断
まず、大きな話題になるのが確実なのが、学生アスリートの労働者性の判断です。つまり、学生選手はプレーの対価としての報酬を得ることができるのかどうか、です。

日経ビジネスでも「アメリカ大学スポーツの終わりの始まりか?」などで書きましたが、ノースウエスタン大学フットボール部員の訴えにより、昨年3月にNLRBが「奨学金を得ている学生選手は労働者として認められる」という判断を下しています。現在、大学側が異議申し立てを行っており、この審査が再開されるはずです(現在はフットボールシーズン中なので中断中)。

仮に、NLRBが意義申立で最初の判断を下したシカゴ支部の見解を支持した場合、学生が労働組合を設立することが可能になります(ただし、私立大学のみが対象)。昨年、例のオバンノン訴訟では「学生アマチュア規定は違法」としてNCAAが一部敗訴しており、学生の労働者性が認められた場合、米国の学生ビジネスのモデルが大きく変わる節目になるかもしれません。

■スタジアムへのクラウドビジネスの活用
最近ちらほら日本でもコラムなどで紹介され始めましたが、ITベンダーがスタジアムビジネスへの本格進出を始めています。まだ構想段階で本格的なサービスが展開されているスタジアムは数えるほどしかない状況ですが、インフラ投資は昨年あたりから本格的に始まっており、例えばMLBなどはリーグ主導で全スタジアムへの無料WiFiの敷設を開始したりしています。

もともと、こうしたITベンダーは競技サイドで選手の動きのトラッキングなどスカウティングデータの分析領域から参入するケースが多かったのですが、それがクラウドビジネスの浸透を機に、ビジネスサイド(顧客エンゲージメント)にも積極的に参入し始めたのがここ数年でしょうか。インフラの整備に伴い、今年くらいからB2C(顧客サービス)とB2B(業務用)両面から、その上に乗っかるソフトの充実が図られていくものと思いますので、注目の領域です。

ただ、単に技術があれば顧客が活用するという単純なものではない(顧客目線でのサービス開発が必須)点や、既に球団が行っている顧客管理とスタジアム側での顧客管理をどう統合するかなど、課題もあります。また、日米とも大部分のスタジアムは自治体が所有していますが、ビジネスマインドの有無においてそのスタンスが大きく異なるので、その辺りが日本での課題になりそうです。

■チケット再販市場の統合
これは、今僕が手掛けているダイナミックプライシングの案件とも関連するのですが、日経ビジネスでも書きましたが、スポーツビジネスの事業特性(売り物である「試合」の質=勝敗を完全にコントロールできない)やその伝統的な値付け手法(試合日の相当前から値付けを行う必要がある)から、どうしても価格と売り物にミスマッチが生じてしまいがちです。

これが再販市場が生まれる大きな背景で、米国では優秀な人材が球団側で働くのではなく、再販市場でどんどん起業しているという現実もあります(その方が儲かるから)。で、これに対して球団側が危機感を募らせており、ダイナミックプライシングの導入もその1つのソリューションであるわけですが、再販市場自体を根絶することは不可能です。

ここ数年、球団と再販市場との間で綱引きがずっと行われている訳ですが、今後、より球団自体が再販市場をコントロールする方向に業界がシフトしていくことになると思います。既に球団側に立つTicketmasterなどは、一次市場と再販市場を統合して、同じチケット購入画面に球団が販売するチケットと再販されているチケットを同時に表示するサービスをNBAやNHLなどに展開しています。球団と再販業者のドンパチは今後も続いて行くものと思われますが、より球団が知恵を絞って逆襲に転じて行くように感じます。

■メディア収入の更なる増大
昨年、米国ではMLBの放映権料が2倍になり、NBAの放映権料が3倍になるいう景気の良いニュースを耳にするようになりました。これにはいくつかの要因があるのですが、本質的には、まだ日本では経験されていないような大きな地殻変動が米国メディア界で起きているためです。

端的に言えば、テレビコンテンツの録画視聴やネット配信が当たり前になった結果テレビを生で見る人が減ってきており、テレビCMの広告価値が低下してきています。この流れにあって、スポーツが将来的に唯一生で視聴され続けるコンテンツになると考えられており、相対的なCM価値がグングン上昇しているのです(この辺りの肌感覚や米国企業の投資への積極姿勢は、多分日本に住んでいると分からないと思います。まあ、日本がアメリカと同じような道を辿るかどうかは分かりませんが、気になる人は現地を視察してみることをお勧めします)。

年末にブログでも書きましたが、MLBは新コミッショナーがネット事業のトップにMLBビジネスの統括を任せる人事を断行しています。メディア環境の変質が、図らずもスポーツに新たな成長領域を与えることになりました。今後、米国スポーツ界では更にメディア収入が伸びて行くことになるでしょう。ただし、日本とは前提になる環境が違いますから、何をどこまで参考にするのかはきちんと考えなければいけませんが。

■スポーツ賭博合法化
この分野、年末にびっくりするような動きがありました。

この分野では、ここでも書きましたが、財政赤字で苦しむNJ州がスポーツ賭博を合法化する法案を制定し、それに対して4大スポーツやNCAAが差し止めを求めていました。結局、昨年11月にこの差し止め請求が認められ、NJ州の法案は没になったのですが、この直後、NBAコミッショナーがスポーツ賭博を合法化する道をNJ州と共同歩調で探っていく方針を明らかにしたのです。

米国では、PASPAという連邦法があって、スポーツ賭博は4つの州だけに限定しているのですが、実際には水面下で多くのお金が動いています。スポーツ組織は、その高潔性を守るために「建前」として賭博を容認しない姿勢を取りますが、それにより事業収入を失っているという「現実」もあるわけです。

ここにきて、4大スポーツの足並みに乱れが生じたのは、この「建前」と「現実」の乖離を考えると、必然(時間の問題)だったのかもしれません。

■女性ファンマーケティングの強化
スポーツファンの半分弱は女性ですが、女性を対象にしたマーケティング活動がこれまであまり積極的に行われてこなかった経緯があります。マーケティング活動に限らず、これまでスポーツビジネス界は明らかに女性的な感性が欠けている領域でした。しかし、ここでも書いたように、女性的な感性が現状にブレイクスルーをもたらしたりします。

ようやくここ2〜3年で、特にマーチャンダイズの領域で女性を意識した商品開発が積極的に行われるようになってきましたが、今年は他の事業領域へも積極的な女性マーケティングが展開されていくのではないかと思います。また、同時に女性の幹部職への登用も進んでいくのではないでしょうか。

R.I.P Stuart Scott

大学院留学のためにアメリカに渡った15年前、米国スポーツ界のことをほとんど全く知らなかった僕は、大学院の先生や同級生から「とにかくESPNのSports Centerを見ろ」と言われたものでした。その中でも、特に異色で、言葉の分からなかった自分でも見ていて面白いな、と感じたキャスターがChris BermanとStuart Scottでした。もうこの二人は、僕の中ではほとんどESPNと同義語に近い存在でした。

そのStuart Scottが昨日未明、亡くなりました。癌だったそうです。そういえば、「最近あまり姿を見かけないな」と思っていたのですが、このような形で近況を知るとは、残念でなりません。49歳だったそうです。


昨日はNFLのプレーオフがCBSとFOXで放映されていましたが、他局にも関わらず、Stuart Scottが亡くなったニュースを試合中に大きく報じていました。それほどに業界に大きな影響を与えた存在でした。

今では24時間スポーツ専門ケーブルテレビ局も当たり前の存在になっているので実感がわかないかもしれませんが、ESPNは業界リーダーでありながら、革新的な企業であり続けています。ESPNが設立された1979年は、ケーブルテレビの普及率も20%程で、その広告収入は全体の1%にも満たない状況でした。設立当時、ESPNが成功すると思っている人は多くはありませんでした。

以前、日経ビジネスでも書きましたが、ESPNのベンチャー・スピリットは今でも組織のDNAとして生き続けており、明確にミッション・ステートメントとして明文化されています。
 

我々のミッション:スポーツが観られ、聞かれ、語られ、プレーされ、読まれる全ての場所にいるファンに仕える

ESPNは、箱や金庫の中に隠されたり、一部のマニアックなスポーツファンにだけ保有されるブランドではない。このボールのように、あなたによって所有され、いつでもあなたの手の中にあるものだ。これは大いなる責任の伴うことである。ファンと触れ合い、ファンに仕える際は特に以下に注意されたい

  • 伝えるのではなく共に語れ
  • ファンの知識に敬意を払え
  • 内部に誘い、「次は何か」を示せ
  • スポーツに対する内なる情熱を捉え、比類なき声として提示しろ。我々はスポーツを真摯に受け止める人間の集まりである
  • 驚かせ、もてなし、常に話のネタを提供しろ

我々のブランドは、ファンの感じ方そのものである。ESPNという4文字を見た時にファンが何を感じるだろうか。愛か?憎悪か?信頼か? 我々と時を共にしたいと思うだろうか?それがテレビ番組であれ、映画であれ、CMであれ、サービスであれ、プレスリリースであれ、我々の作り出すもの全てはファンの我々に対する見方に影響する


Stuart Scottと言えば、「Boo Yah」のフレーズで有名ですが、こうしたスラングに近い言葉づかいをニュースキャスターというお堅い仕事に許してしまうところが、ESPNの業界イノベーターたる所以でしょう。お蔭で僕もすっかりESPNのファンになってしまったわけですし。

以下は、昨年7月同氏がESPYのJimmy V Preservance Awardを受賞した際の映像です。約15分と、少し長い映像ですが、前半部分は彼の闘病生活や現役時代の仕事ぶりが紹介されています。後半(6分45秒くらいから)は、彼の受賞スピーチです。既に末期で立っているのもやっとだったそうですが、感動的なスピーチです。

R.I.P Stuart Scott

謹賀新年

皆さま、明けましておめでとうございます。 今年もどうぞよろしくお願いします。

ずるずると?在米15年が経ち、2015年1月1日でトランスインサイト株式会社も10年目に突入しました。不安ばかりが先立ち、文字通り清水の舞台から飛び降りる気持ちだった会社設立時を思うと、この10年と言う歳月は奇跡の様に思えます。会社設立当初は、とにかく目先のことを考えるので精一杯で(まあ、程度の差こそあれ、それは今でもそうなのですが)、10年先の未来まで思いを馳せる余裕と想像力が自分にはありませんでした。

この間、米国で何とかサバイブでき、迷うことなく仕事にまい進することができたのは、これまで弊社を支えて下さったお客様、志を同じくする仲間・諸先輩方、そしてこんな頼りない自分のところに飛び込んで来てくれたスタッフ・インターン諸君らのお蔭です。心より感謝致します。

27歳の時に会社を辞めて米国に留学し、32歳の時に今の会社を起業したわけですが、それまで諸先輩方に甘えてばかりいた自分が本当の意味で自分の足で人生に立ち、社会と対峙し、自分自身の人生を歩み始めたのが9年前だったような気がします。歩みは遅々としていましたが、自分なりに試行錯誤し、志を持つことの重要さ、未知なる未来に希望を持つことの楽しさや大切さ、人の情けの有難さを
仕事を通じて感じることができました。

また、生きることの意味を自分なりに考え続けた時間でもありました。幸福と不安は表裏一体であること、他人との比較では本当の幸せは得られないこと、損得よりも直感を大切にすべきだということ、自由を手にするためには強さが必要であることなど、自分なりの人生訓を身を持って学ぶことができました。


手前味噌な話になるかもしれませんが、今振り返れば、特に取り柄のない自分のような人間が15年アメリカでサバイブでき、自ら起業した会社が10周年に突入する幸運に恵まれたのは、「自分が何者であるかを明らかにし、フィールド(専門性)を限定すること」を大切にしてきたことが結果的に功を奏したのだと感じます。起業して10年経った今、本当にそう思います。

そもそも自分のできることなど限られていますし、「何でもやります(できます)」と言うのは「何にもできません」と言っているに等しいわけですから、自分のやらない領域を明確にしました。例えば、「スポーツビジネス」といってもそのフィールドは多岐に渡りますが、僕は「米国スポーツ経営の専門家」でかつ「日本のリーグ・球団経営のアドバイザー」という立ち位置を明確にするために、インプットする情報は「米国スポーツ」に、対象業務領域は球団経営でも「ビジネスサイド」に特化するように努めました。

ですから、例えばヨーロッパのサッカーの話とか、球団経営でも強化サイドの話(セイバーメトリクスなど)は情報発信は控え、ブログなどでも意図的にあまり書かないようにしてきました。

また、これは表からは見えない部分かもしれませんが、非力な弊社が
ニッチなブルーオーシャン市場に留まれるように、事業形態においても初期投資が不要で競争力の源泉を自ら保有でき、規模の経済が効きにくく(体力勝負にならない)、価格競争に陥らないなどの条件を設定して「やらない事業領域」を定めています。例えば、選手のエージェントや広告代理などの代理業務は基本的に一切行わないポリシーです。

また、僕は「カネになるなら何でもやる(志を捨てて収益を最大化する)」のではなく、事業間の利害相反をなくし、志の範囲内で収益を最大化するアプローチを重視しています。当然、会社経営はボランティアではありませんから、収益を生むことは必須なのですが、時に「カネ」と「志」どちらを取るのか、という選択を迫られることもあります。

例えば、このインタビューでも答えましたが、トランスインサイトを起業した理由の一つが、前職時代に業務間で利害相反があったためでした。僕はコンサル業務を通じて日本のスポーツ界のお役に立ちたいと考えていた一方で、元高校球児としてはエージェントの仕事を垣間見れるのは楽しかったのですが、損得感情を捨てて自分が進むべき道に進もう、都合の良い付和雷同な自分を改めて
自分らしい決断を下そうと決意し、再度起業する道を選びました。そして、「手に入れること」は「捨てること」と同義なのだと気づきました。

今では、お蔭様でコンサル業務を通じて日本のプロ野球球団とも深い関係を築くことができるようになりました。代理人業務を続けていたら、ここまで突っ込んだ関係は築けていなかったと思います。「捨てる勇気」を持ち、「自分が何者なのか」を見失わずにやってこられたことで、苦労もありましたが、それを上回る大きなやりがいを感じることができるようになりました。
最近では、アメリカの会社からも相談事が舞い込むようになりました。

僕もそろそろ人生の折り返し地点に差し掛かった頃だと思います。ここ数年は、優秀な若手との出会いが増えたこともあり、自分の成長だけでなく(いや、むしろそれよりも)、若手の成長を後押ししてあげることにも楽しみを感じられるようになりました。僕の経験など取るに足りないものですが、それでも頼ってくれる方、必要と感じてくれる方がいる限りは、お役に立ちたいと思います。

長くなりましたが、2015年もどうぞよろしくお願いします。
今年も、まだ見ぬ同志に会えることを楽しみにしています。

Trans Insight Corporation
President
鈴木友也







 

MLB新コミッショナーの驚きの初仕事

ご存知の方も多いと思いますが、現MLBコミッショナーのアラン・“バド”・セリグ氏は今年いっぱいで退任し、来年1月よりロブ・マンフレッド氏が新コミッショナーに就任します。既に水面下では実質的にマンフレッド氏がトップとしてリーダーシップを発揮しているようですが、その初仕事の内容を知ってとても驚きました。
 
これは既にSBJなどいくつもの専門誌が報じているものですが、現状のビジネス環境に合わせて大きな組織改編を行うというものです。中でも象徴的な人事は、これまで15年近くMLBのビジネス部門のトップとして手腕を発揮したティム・ブロズナン氏に代えて、MLBのネット事業を統括するMLBAMのトップであるボブ・ボウマン氏を据えるというものです。  

これは、業界を知る人にとっては衝撃的な人事です。なぜか?  

MLBにはMLBAM以外にも、MLB PropertiesやMLB Enterprisesなどいくつもの関連会社があるのですが、その中にあってMLBAMは異色の存在です。これは、日本でもネット企業のカルチャーが他の伝統的企業とは異なるのに似ていて、良く言えば若くて自由闊達な、悪く言えば強烈なエゴを持った尖った人材が集まって出来ている会社です。

多くの関連会社がMLB本部のあるミッドタウンのパークアベニューに身を寄せているのに、MLBAMだけ「シリコンアレー」とも呼ばれGoogleなどがオフィスを置くチェルシー地区にあるのもこのためかもしれません。社員も若くイケイケな感じです。リーグ機構の職員は皆スーツでビシッと決めていますが、BAMのオフィスに行っても皆カジュアルで、スーツを着ている人を探すのは大変です。

これは日本でも同じだと思いますが、ネット企業の若手起業家が大企業の経営者から距離を置かれるような感覚でしょうか。だから、BAMはMLB内でも敵が多く、その存在を疎ましく思っている人も少なくなかったのです。しかし、設立から10年で、全国放送の放映権料に匹敵する7億ドル(約840億円)以上の市場を創り上げたMLBAMには、誰も表だって文句を言えなかったわけです。

普通に考えれば、テレビとネットを統合して、メディアとしてシナジーを考えながらビジネス戦略を練っていくのが常識なのでしょうが、実はMLBではテレビ放映権とネット事業権がこれまで統合管理されていませんでした。テレビはMLB本体(ブロズナン氏管轄)、ネットはBAM(ボウマン氏管轄)でバラバラにビジネスが展開されていました。

ただ、BAMがMLB本体(正確にはMLB Properties)に気兼ねなく強力にネットビジネスを推進することができた背景には、「テレビとインターネットビジネスはカニバライズしない(食い合わない)」というコンセンサスが米国スポーツ界では既に確立されている点は指摘しておくべきでしょう。

で、この度、マンフレッド新コミッショナーが誕生と共に断行したのが、テレビ事業とネット事業の統合でした。そして、そのトップに据えられたのがネット事業のトップだったボウマン氏だったというわけです。

これは、見方を変えれば、オールドビジネスからニュービジネスへの新陳代謝を行ったということです。この人事により、ブロズナン氏はMLBから去らざるを得なくなりました。この辺りは非情にも見えますが、コミッショナーの職務はMLBの最高経営責任者(CEO)として、その事業価値を高めることです(これはメジャーリーグ協約に明言されています)。これはコミッショナーにしかできない仕事でしょう。

MLBは今季過去最高の90億ドルの売上を予測し、現在の為替ベースでは、初めて1兆円の大台に乗せたことになりました。20年前のMLBでは、ちょうどストが起こって売上が12億ドルに減じた年でした。20年で7.5倍の計算ですが、この間収益源別に売上構成を分析してみると、中でも大きく収益を伸ばしているのがテレビとネットです。

ボウマン氏がMLBビジネスのトップになることで、今後MLBは更にメディア企業としての性格を強め、収益を伸ばしていくものと思われます。その布石は打たれました。米国スポーツビジネスの成長を支えている一端は、こうしたダイナミズムなんだなぁということを改めて実感した次第です。

プロモーション

「プロモーション」と言っても、「宣伝広告」の方ではありません。人事での「昇進」のことも、英語では「プロモーション」と言います。「He's got promoted」(あいつ、昇進したよ)なんていう風に使います。  

何でいきなりそんな話をしたかと言うと、毎年この時期には日米のお客様やお世話になった方々に年賀状も兼ねてグリーティングカードをお送りします。かなり大量の数を送るので、名簿の更新が結構大変なんですけど、日米スポーツ界で転職の有無とか肩書の変化を見ていると、面白い違いが分かります。

まあ、イメージ通りなんですけど、転職はアメリカのスポーツ界の方が圧倒的に多いです。特に営業職は、競技に関係なくバンバン転職して行きます。バスケから野球とか、野球からサッカーとか普通にありますね。

ただ、地域はあまり変わらない人の方が多いでしょうか。ニューヨークにいる人はニューヨーク近辺で、サンフランシスコの人ならベイエリア近辺で動いて行きます。営業は、コネクションが重要ですから、地域が変わるとその資産が生かされないからでしょうかね。まあ、家庭などあれば、やはり引っ越しを伴う転職はハードルが高いんでしょう。  

一方、広報とかコミュニティー活動など、組織での蓄積が仕事の質に差を生むようなポジションの人はあまり転職しないようです。  

あと、これもアメリカの特徴ですけど、若くても出来る奴はどんどん昇進して行きます。30代前半でチームやリーグのVice President(日本だと部長職くらいの役職。アメリカの組織ではVPがたくさんいます)になって行くのもあまり珍しくないですね。できる奴はどんどん上から引っ張られて行くか、別組織から引く抜かれていきます。  

そもそもアメリカでは採用する時に年齢を聞くだけで違法行為になるので、年功序列という考え方自体がありません。実力主義で極めて分かりやすいです。  

日本の場合は、転職は珍しくなくなってきましたが、競技を超える例は多くないです。野球界は野球界で、サッカー界はサッカー界の中で人材が回っているケースが多いような気がします。これは、別の機会に書いてみたいテーマですが、日本では転職だけに限らず、スポーツ界のあらゆる面で競技の壁が非常に厚いです。  

あとは、基本的に年功序列が多いので(この辺りは親会社のカルチャーが大きく影響するようです)、組織内の序列が数年で大きく変わるような人事は少ないようです。あとは、部署間の異動も結構多いですかね(いわゆるゼネラリスト育成型人事)。アメリカでは、例えば、法人営業は基本的にずっと法人営業、チケット営業はずっとチケット営業と言うように、スペシャリスト育成型人事が基本です。

3つ目の違いは、営業職(法人営業+チケット販売スタッフ)の数でしょうか。アメリカのメジャースポーツ球団では、だいたい職員数は100〜200人程度なのですが、そのうち1/3から多い所では全職員の半分くらいが営業職です。これに比べて日本では営業職の数が圧倒的に少ないです。二桁行かない球団の方が多いのではないでしょうか。

この違いの生み出す背景は、1つはアメリカが営業文化であるのに対して、日本は運営文化が強いため。もう1つは、人事制度の違いからだと思います。日本では、一度職員を採用すると基本的に解雇できませんが、アメリカは比較的簡単に解雇することが可能です。

ですから、例えば最近だとチケット販売ではシーズン席を売るのが厳しくなった分、グループ営業やプレミアム営業にシフトしているのですが、そのための特別営業部隊をすぐに組織して戦力化してしまいます。こうした試みは、基本的に「最低賃金+インセンティブ」という、球団が極力リスクを負わない形で行われ、失敗しても「スクラップすればいいや」という発想です。日本ではこれができません。

ただ、アメリカでは営業職が数字で厳しく業績を管理されるので、結構すり減って行くスタッフも多いようです。日本では昔から当たり前にやっているチームワークの価値を強調したり、ゲーム感覚でチーム全体を盛り上げていくような取り組みが改めて注目されていたりするのは面白い所です。

とはいえ、自分と同じ歳位とか年下のスタッフがバンバン出世して行くのをみるのは、気持ちが良いし、刺激になります。

珍しい払い戻し

先週、アメリカ全土が寒波に襲われ、NY州の北部を含む東北部一体に歴史的な大雪が降りました。NY州でも、カナダとの国境に近いバッファローなどは、一晩で7フィート(約2m10cm)の積雪があったそうです。家や車が雪に埋もれたと大きなニュースになっていました(ちなみに、マンハッタンは降雪もなく、全く大丈夫です)。

で、この雪の影響で日曜日(つまり、昨日)バッファローで予定されていたビルズ対NYジェッツの試合が延期になりました。ビルズは屋外型スタジアムを使っているのですが、2mも雪がふったら雪かきどころの騒ぎではありません。振り替え試合は、今日(月曜日)バッファローから約400km離れたデトロイトで、ライオンズのスタジアムを借りて開催されることになりました。

通常、米国では荒天などによる試合中止の場合(野球が多いです)、チケット料金の払い戻しは行われません。これを日本のスポーツ界の人に話すと一様に驚かれるのですが(日本では雨天中止などの場合、その都度払い戻しを行う)、その試合の存在が物理的に消滅しない限り、払い戻しは行いません。

チケット購入サイトやチケットの裏面などをよく見ると、「試合開始日時は変更になる可能性がある」と必ず記載されています。チケット購入者は、この条件を飲んでチケット購入契約を結んだと解釈されるので、試合がある限り払い戻しは行われないんですね。

ただ、今回のビルズのケースでは事情が違いました。例外的に払い戻しが認められたんですね。要は、何もかも雪に埋まって試合観戦どころではない、という地元の状況に配慮したんだと思います(ちなみに、米国東海岸は今日は一気に最高気温が20度近くまで上がり、バッファローは今度は洪水の危機に晒されています)。

どういう整理になったかと言うと、

・中止になった試合のチケット保有者には優先的に代替試合のチケットを配布
 →ただ、状況的に来られる人は少ない
・残りは、ビルズ・ライオンズ(対戦相手のジェッツではない)のシーズン席保有者に優先的に無料チケットを配布
・更に残りを一般ファンに向けて無料販売

って流れになりました。一般販売のチケットはあっという間に売り切れたそうです。非常に珍しいケースですね。

【関連情報】

Qcueという名の変な企業

日経ビジネスオンラインに最新コラムがアップされました。

今回はチケット価格を最適化するダイナミックプライシングについて書いてみました。もともとスポーツ界ではシーズン開幕前に全てのチケットに値付けをしなければいけないという商慣行が当たり前だったわけですが、冷静に考えると試合の「価値」は様々な要因(自軍の成績、対戦相手、先発選手、天気などいろいろ)によって変化します。つまり、価値の変化するものに一律の価格をつけていたわけです。 

このミスマッチを解消するのが、今回ご紹介するダイナミックプライシングです。

まあ、詳細はお手すきの際にでもコラムをご覧頂くとして、コラムでも取り上げているQcue(キューキュー)という会社がとても面白い会社なのです。まず名前からして変ですよね(笑)。この手の会社の本社がテキサスにあるってうのも、ちょっと変。

CEOのバリーも営業担当副社長のティムも若くて、既存の常識・枠組みには捉われない柔軟性や勢いがあります。「こいつらスゲェな」って感じます。大部分の経営陣は30代でしょう。でも、あのファスト・カンパニー誌が選んだ「最も革新的な50社」(2013年)にランクインしちゃったりもしてます(全体で49位、スポーツ界ではナイキ、NBAに次いで3番目)。

周りに流されずに、自分の信じた道を突き進む。ベンチャーの鑑みたいな企業です。もちろん、24時間365日仕事しています。やはり、アメリカのダイナミズムを作り出しているのは、こうした若くて勢いのある企業なんだなー、と変に感心してしまいました。日本にもこうした企業が増えてこないといけませんね。

ダイナミックプライシングが日本に根付くかは今後の頑張り次第ですが(個人的には本当に良いサービスだと思っています)、こうした勢いのある会社と一緒に事業を創り上げて行く機会を頂けて、仕事冥利に尽きる思いです。

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■米スポーツ界に革命を起こしたダイナミックプライシング(上)
 〜革新的な値付け手法の誤解と真実

今日は、スポーツ観戦チケットの値付けの話をしようと思います。突然ですが、皆さんは「ダイナミックプライシング」(Dynamic Pricing)という言葉を聞いたことはありますか? レベニューマネジメント(顧客の購入意欲に応じて商品・サービスの価格と割当量を変えることで収益の最大化を図る)の考え方をスポーツ界に応用した値付け手法です。   

これまで、スポーツ観戦チケットの値付けはシーズン開始前に行われるのが普通でした。例えば、野球なら4月から10月頃まで開催されるシーズンに備えて、開幕前にホームゲーム全試合(MLBなら81試合)の値段を決めていました。多くは、座る座席の場所(席種)に応じて価格帯を変えて値付けを行います。フィールドに近い席ほど値段が高くなり、この値付けが全試合一律に適用されることになります。   

恐らく、これが一般的にイメージされるチケットの値付け方法でしょう。しかし、半年以上も前に試合の「本当の価値」を正確に予測するのは簡単ではありません。いや、事実上不可能と言ってもいいくらいです。なぜなら、「本当の価値」を決める要素は多岐にわたる上、事前予測が困難なものが多いからです。   

「自チームの成績」や「対戦相手の成績」は、試合の価値を決める代表的な要素の1つです。消化試合なのか、優勝を決める試合なのかで、その試合の持つ重みは大きく異なってしまいます。でも、これはシーズンが深まるまで誰にも予想できません。また、野球なら、「誰が先発するのか」(エースが投げるのかどうか)、「天気はどうなのか」(暖かいのか、寒いのか)、「何か大きな記録がかかっているのか」(通算200勝や2000本安打など)などによって、チケット購入者が実際に感じる価値は変動します。   

つまり、「価格は一律」がこれまでの業界スタンダードだったのに対して、「その価値は変動する」のが現実に起こっていたことでした。要は、価値が変動するものをずっと同じ値段で売っていたわけです。いや、同じ値段で売らざるを得なかった、と言った方が正確かもしれません。理由は2つあります。

(続きはこちら
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残された命の使い方

日本でも報じられていたかもしれませんが、アメリカでは「残された命の使い方」に関して、ここ1週間で対照的にも見える2つの大きなニュースに接する機会がありました。

1つ目は、末期の脳腫瘍を患ったカリフォルニア州在住だった29歳の女性が、尊厳死の認められているオレゴン州に移住し、10月31日に予告通り、医師から処方された薬を飲んで家族に見守られながら死去したというニュースです。


この女性は、今年前半に悪性の脳腫瘍との診断を受け、余命半年の告知を受けていたそうです。彼女は結婚したばかりで、これから夫と共に新たな人生の門出に期待に胸を膨らませていた時でした。その失意たるや、常人では計り知れないでしょう。

これは、アメリカでも大きな議論を呼んでいました。尊厳死はどこまで認められるべきなのか。人は神に与えられた命にどこまで手を加えることが許されるのか。これは答えのない議論かもしれません。実際、州により対応は分かれ、オレゴン州のように尊厳死を認める州も米国には複数存在します。

もう1つのニュースは、こちらも脳腫瘍を患い、余命数か月の宣告を受けている19歳の女子大学生が、11月2日に夢であったバスケットボールの試合に出場し、シュートを決めたというものです。


彼女は、試合の最初と最後に合計2本のレイアップシュートを決め、1万人を超える観客からスタンディングオベーションを受けました。


きっと立っているだけでもフラフラだったに違いありません。彼女の命に向き合う力強さに多くの人が勇気をもらったに違いありません。  

一方は静かに自ら命を終える選択をし、もう一方は試練に立ち向かう。そのように対照的に見えてしまったかもしれません。アメリカのニュースでも、明らさまな比較は行っていませんでしたが、言外にそのようなニュアンスを匂わせて扱っているニュース番組もありました。  

もちろん、現実はそんな単純なものではないと思います。どちらが良い悪いという判断はできない。それは本人にしか分からないものでしょう。命とは比較するべきものではありません。  

ただ、僕にはこのいずれのニュースも他人事とは思えませんでした。「2度目の311に際して思うこと」でも書いたように、僕は19歳の時に中高6年間を共にした義兄弟を亡くしたのですが、実は彼も脳腫瘍でした。まさに、レイアップシュートを決めた彼女と同じ歳の時です。  

命ある限り生きていたいのが人間の本能です。しかし、残酷なことに人の命の長さは平等ではありません。29歳の女性のケースでは、その命の終え方が大きなニュースになりましたが、彼女だってできれば自ら命を絶ちたくはなかったでしょう。    

私たちが考えるべきは、彼女の様に不条理な死を受け入れざるを得ない人がいる中で、今生きている自分が、その命を目一杯生き切っているか自問自答することかもしれません。

WSも今年からテレビ放映スケジュールを変更

日本シリーズはホークス、ワールドシリーズ(WS)はジャイアンツの勝利で日米の野球界は奇しくも同じタイミングでシーズンを終えました。

日本では、パ・リーグ優勝を果たしたホークスが、セ・リーグ2位のタイガースを破って堂々の日本一に輝きました。CSファイナルステージでタイガースがジャイアンツを破った際は、リーグ優勝のジャイアンツに配慮して胴上げなどはやりませんでしたが、これは非常に日本的な配慮ですね。これはこれで文化の表れで良いのではないかと思います。

一方、MLBはWSに進出したロイヤルズもジャイアンツも、共にワイルドカードからチャンスを掴んだチームでした。これについては、批判がないわけではないようです(例えば、これとかこれ)。今後、この批判が大きなうねりになるようなことがあれば、また別途レポートしたいと思います。

閑話休題。

一昨日、日米のPOのテレビ中継のオンエア方法の違いについて書きましたが、実はWSも今年からテレビ放映スケジュールに若干の変更を加えているんです。WSは

2試合
1日休み
3試合
1日休み
2試合

の7試合で、4勝先取のフォーマット(ちなみに、英語では「Best-of-seven」と言います)で実施されています。で、昨年までは初戦が水曜日に開催されていたのですが、今年からこれが火曜日に1日繰り上げになりました。なぜだと思いますか?

実はこれ、NFLとの放映スケジュールの重複を避けるためなんです。何で今更?と思う方もいるかと思いますが、実は近年、NFLは自ら保有するNFL Networkでの試合中継を強化していて、これを木曜日に充てるようになってきています(つまり、今ではNFLは木・日・月と週3日間テレビ中継している)。

Business Insider誌の図が分かりやすいので、ちょっと拝借します。


 出所:Business Insider

ご覧のように、水曜日から始める放映日程(図の右側)だと、最大で7試合中4試合がNFLと重複するリスクがあるわけです(黄色の網掛け部分)。火曜日開始にすれば(図の左側)、このリスクを1試合に軽減できるというわけです。

まあ、そもそもアメリカではフットボールのコンテンツ力が強すぎるのですが。MLBでは、公式戦の試合中継なら視聴率は数%(一桁前半)程度(全国放送の場合)、WSでも10%前後です。一方、NFLは公式戦でも10%を超えてきますし、スーパーボウルに至っては50%弱という怪物コンテンツです。

ともあれ、MLB最高のコンテンツであるWSですら、競合コンテンツとの食い合いを避けてその露出効果を最大化しようとしているわけですね。

【参考】

日米のPOオンエア時間の違いについて

本当に久しぶりの投稿になってしまいました。この春先から多忙を極めていて、このブログや日経ビジネスオンラインへの寄稿など、どうしても執筆活動に費やす時間を減らさざるを得ない状況になっていました。

ここにきて、ようやく仕事量も落ち着いてきたので、執筆活動も再開しようと思っています。今回は、日米野球界のプレーオフフォーマットの違いについて書いてみようと思います。

日米の野球界では決勝シリーズ真っ盛りですね。ちょうど数週間前に日本からクライアントが米国視察に来ていたのですが、運よくMLBのプレーオフを観戦する機会に恵まれました。観戦したのは、10月3日のサンフランシスコ・ジャイアンツ@ワシントン・ナショナルズ戦。


もともとワシントンDCを訪問する予定が先にあり、その後ナショナルズがPO進出を決めたので、急遽チケットを手配したのですが、購入時(約1週間前)には試合開始時間が「TBA」(To Be Announced)となっていて、まだ決まっていませんでした。

で、試合時間が決まったのがいつだったかというと、何と試合前日でした(苦笑)。しかも、午後3時開始という時間を知って二度びっくり。10月3日は金曜日だったのですが、平日の午後3時から開始するというアナウンスを前日に決めたわけです。

なぜこんなことが起こるかと言うと、テレビ放映の時間を調整するためなんです。実は10月3日には、ナショナルズの試合も含めて4試合のPOがあったのですが、以下のように全ての放映時間が重複しないように調整されています(時間は全て米国東部標準時)。

 午後12時〜  タイガース@オリオールズ
 午後3時〜     ジャイアンツ@ナショナルズ
 午後6時半〜 カージナルス@ドジャース
 午後9時半〜 ロイヤルズ@エンゼルス

試合開始時間の発表が試合前日までずれ込んだのは、テレビ放映局との調整に時間がかかったものだと思われます。まあ、前日に試合時間が決まっても、それが平日の日中帯でも、観客席は超満員なんですけどね(笑)。

日本で同じことをやっても、きっと空席が目立つことでしょう。それ以上に、ファンからの苦情が殺到するに違いありません。「試合時間を前日に決めるなんて非常識だ!」と。以前、「スポーツと民主主義の成熟度は比例する?」などでも書きましたが、この辺りは、スポーツに対する文化的な受容度の差なんだと思います。

で、実は先々週は日本への出張が入っていて、日本でクライマックス・シリーズ(ファイナルステージ)をテレビで観る機会があったのですが、米国での感覚にすっかり馴染んでしまった自分としては、セ・パのCSが同じ日の同じ時間に開催していることに大きな違和感を覚えずにはいられませんでした。

そもそも米国スポーツ界では、異なるスポーツ間ですら、プレーオフのようなプレミアコンテンツの放映時間が重複することは余程の事情がない限りありません。視聴率を喰い合うのが目に見えているからです。

これはひとえに、権利の所在の問題です。MLBでは、PO(WSを含む)のテレビ放映権はリーグ機構が保有しているのに対して、日本のプロ野球界では球団が保有しています(ただし、日本シリーズはNPBが保有)。

リーグが保有していれば、当然オンエアの時間帯はリーグ全体のマーケティングメリットを勘案して露出を最大にするために時間をずらすという形になりますが、球団が保有していれば、一球団にとって最大のメリットとなる時間帯=ゴールデンタイムが選択されるため、結果的にオンエア時間が重複することになります。

しかし、これは本当にもったいないことです(ランチとディナーを一緒に食べろを言われているようなものです)。よりによって、シーズンの中で最も価値のある試合の1つなのに、その価値を落とす方向で自らが首を絞めてしまうからです。

ここは、米国のようにPO全試合の開始時間をずらせとまでは言いませんが、せめて例えばシリーズ勝者が決まる第4戦以降だけでも重複をさけて別の日、もしくは時間差開催するなどはできないものでしょうかね??

ただでさえファンの野球離れが叫ばれて久しい野球界です。テレビ放送は最大のマーケティングツールですから、球界全体の利益を考えるなら、合計露出が最大になるようにオンエア時間に配慮があってしかるべきだと思います。

今年のCSも白熱した試合が目白押しでした。こうした最高の野球コンテンツを、一人でも多くのファンに見てもらうことこそが、今の日本球界にとって必要とされていることではないでしょうか。普段野球に接点の少ない人に「あ、野球って結構面白いんだね」と思ってもらい、顧客基盤を広げるまたとないチャンスですから。

もったいないついでに言うと、リーグ優勝した球団にファイナルステージで1勝のアドバンテージを与えるというのも、再考の余地があるのではないかと思います。以前、MLB関係者とこの話をした時に、「あれは金をドブに捨てるようなものだ」と言っていました。一番高く売れるコンテンツを1試合分減らすという判断は、MLBの感覚では信じられなかったようです。

これは、「公式シーズンの重み」をどう考えるかという議論になると思います。この点については、以前「プレーオフ方式は必要か?」でも書きましたが、米国でも同じような議論がないわけではありませんでした。ただ、最近はあまり聞かなくなったように思います。

米国では、公式シーズンはマラソン、プレーオフは短距離走で、チャンピオンは長距離も短距離も強くなければならないというコンセンサスがあるように思います。ルールで決めた以上、敗者が「公式シーズンの重み」を持ち出すのは言い訳ですし、文句があるならルールを決める時に言うべき、というのが米国流です。

奇しくも、今年日本シリーズに出場した阪神タイガースと、ワールドシリーズに出場したカンザスシティ・ロイヤルズは、いずれもワイルドカードから29年ぶりの優勝を狙っています。アップセットはスポーツ最大の醍醐味とも言いますし、今年も日米の野球界から目が離せません。
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