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MLBテキサス・レンジャーズがチャプター11を申請

日本では東京ヴェルディの資金繰りが悪化して、Jリーグが経営権取得の準備に入ったというニュースが結構大きく報じられていますね。今年2月に、ヴェルディとJリーグで「深刻な経営難に陥った場合はチームの全株式を取得できる」という合意書を交わしていたとのこと。

このように、経営難に陥ったチームの経営をリーグが一時的に行い、チームを立て直した上で売却するということはアメリカでは珍しくありません。最近では、日経ビジネスオンラインの「破綻したアイスホッケーチームなら強奪できるのか」などで解説した、昨年5月に連邦破産法11条(いわゆる“チャプター11”)を申請したフェニックス・コヨーテスは現在NHLが保有しており、買い手との売却交渉を進めています。また、MLBでも経営的に行き詰まったモントリオール・エクスポズを2004年にMLBが1億2000万ドルで買い取って、2006年にワシントンDCの不動産王テッド・ラーナー率いる投資家グループに4億5000万ドルで売却しています。

ところで、昨日MLBテキサス・レンジャーズがチャプター11を申請しましたね。

レンジャーズは投資家のトム・ヒックス氏が保有しています。ヒックス氏はレンジャーズ以外にも、NHLダラス・スターズやマイナー数球団、英プレミアリーグのリバプールFCなどを保有しています。

レンジャーズの場合、正確にはHSG(Hicks Sports Group)という同氏の持ち株会社が球団を保有していたのですが、実はこのHSGは昨年3月に5億2500万ドルの債務を抱えてデフォルト(財務不履行)を起こしていました。そして、その直後にレンジャーズは売りに出されていました。

今年の頭には新たな買い手(ノーラン・ライアン氏らが率いる投資家グループ)も決まり、当事者間で基本合意に至っていたのですが、HSGの債権者がそれに待ったをかけていたんですね。で、早く球団の売却先を決めてしまいたいMLBとの間に泥仕合を展開していました。

チーム売却を早く行いたいMLBの気持ちも分かります。できれば4月のシーズン開幕までにはと考えていたのだと思います。6月にはドラフトもありますし、7月31日はトレードのデッドラインがあります。資金繰りの目途が立たない中で効果的な戦力補強などできるはずないからです。

一方、HSGの債権者の言い分はこうです。実は、買い手にはライアン氏以外にもいくつかいて、しかもそちらの方が高額のオファーを出していたというのです。債権者としては、より高額でチームを売却した方がいいに決まっています。しかし、ライアン氏からの買収提案の中には、ヒックス氏が保有するスタジアム周辺用地の買収も含まれており、しかもこれが債権者グループの抵当になっていなかったというのです。まあ、これが本当なら債権者が反対するのも無理はないですね。

で、チームを早く売ってしまいたいライアン氏とMLBは、昨年来HSGの債権者とすったもんだを繰り返していたわけです。実際、一触即発のところまで行っていました。

HSGの債権者は、HSGを強制破産(involuntary bankruptcy)させると言いだしていました。恐らく、HSGを破産裁判所の管轄下に置くことで、債権者の最大利益に資するチーム売却を進めさせよう(つまり、ライアン氏への売却をやめさせよう)と考えていたのだと思います。これに対して、MLBは2004年にエクスポズを買い取った時に作られた「野球界の最大利益条項」に則ってレンジャーズを強制的に買収してしまおうと考えていました。

この「野球界の最大利益条項」とは、「野球界の最大利益のためにコミッショナーが強権発動できる」というもので、今回の場合はHSGの債権者の有無を言わせずにレンジャーズを接収してしまうという強引なものです。こうして両者が一歩も譲らないまま、バド・セリグは債権者に対して「4月30日までにレンジャーズのライアン氏への売却を認めるかどうか最終判断せよ」という最終通牒を突きつけていました。この対応にはかなりの批判もあったのですが。

で、昨日のレンジャーズのチャプター11申請と相成ったわけです。正確には、レンジャーズの運営会社であるTexas Rangers Baseball Partnersが破産法を申請したわけですが、「事前調整型」と言われる今回の申請で、債権者がライアン氏らへの売却を認める代わりに、債権者への最大限の補償を行うことが、具体的に取り決められているということです。

この手法、「シカゴ・カブスもチャプター11申請?」でお伝えした昨年のシカゴ・カブスの売却劇と似ています。この場合も、カブスを保有する経営破綻したシカゴ・トリビューンの債権者からの横やりを排除する目的で、位置的に事前調整型のチャプター11を申請したという経緯がありました。

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アリゾナ移民法がスポーツ界に与える影響

4月23日、アリゾナ州で不法移民の摘発を目的とした、米国で最も厳しいとされる移民法が成立しました。新移民法は、外国人に常時外国人登録証(労働ビザや永住権カード)の携帯を義務付け、不法滞在が疑われる人物に対して警察官による職務質問を認めるという内容です。

観光客も対象になるため、グランドキャニオンなどアリゾナ州の観光地を訪れる外国人は、パスポートの携帯を余儀なくされることになります。

ただ、「不法滞在が疑われる人物」を特定するのは外見に頼らざるを得ないため、「人種差別につながる」と猛烈な反発を招いています。オバマ大統領も、「公平性を台無しにする見当違いの試みだ」として、同法案を批判しています。これに対し、アリゾナ州知事は「これまで移民政策に手をこまねいてきたオバマ政権に代わり行ったまで」と強気の姿勢を見せています。

現在、全米には約1100万人の不法移民がいると言われていますが、その約半数近くがメキシコと国境を接するアリゾナ、テキサス、ニューメキシコ、カリフォルニアの4つの州にいると言われています。米国経済は、安価な労働力である不法移民がいないと事実上回らなくなっていますが、不法移民の多いこれらの州では麻薬密輸事件などの犯罪も多発しているようです。

要は、総論としては必要なのだけれど、各論になると負担が課せられる地域が反発するという構図です。今話題の普天間基地問題や、原子力発電所などもこの類の議論でしょう。

で、一見スポーツと関係ないようなこのアリゾナ移民法問題なのですが、実はそうでもないんです。

今年のMLBの開幕時点で外国人比率は約25%でした(つまり、4分の1が移民)。MLB選手会は直ちに移民法反対の立場を表明した上で、「選手会は移民選手を守る立場にあり、移民法が適切に修正されることを望む」との声明を発表しています。アリゾナ州に本拠地を置くダイヤモンドバックスも「MLB選手会と同じ懸念を抱いている。移民法がMLB選手に与える影響を憂慮している」とのコメントを発表しています。

実は、米国スポーツの中でもMLBがいち早くアリゾナ移民法に反応しているのには訳があります。来年(2011年)のオールスターゲーム開催地がアリゾナだからです。

選手の中には、メキシコ移民のエイドリアン・ゴンザレス選手(サンディエゴ・パドレス)のように「移民法が成立したらオールスターゲームへの出場を辞退する」ことを公言している選手もいます。アリゾナ州の共和党議員の中には、2011年のアリゾナでのオールスターゲーム開催を中止するようにMLBに勧告する者も出てきています。MLBにとっては、この問題のハンドリングを間違えると、来年のオールスターゲームに水を差されることになりかねない、非常にセンシティブな問題なわけです。

また、CBAが2011年に失効するのも労使のポリティクスに微妙な影響を与えているでしょう。オールスターゲームの放映権などはリーグ収入になりますから、選手会としては、万が一開催中止となっても直接的に懐は痛まないわけです。選手会が選手の出場辞退を扇動しているとは思えませんが、ゴンザレス選手のような選手がいることは、MLB機構にとってみると頭の痛い問題なはずです。選手会は、これをいかようにでもハンドリングできるわけで、開催中止は何とでも避けたいMLBに対して交渉のカードを持つことになるわけですね。

Heritage Field

突然ですが、ここはどこでしょう?


実はここ、旧ヤンキースタジアムがあった跡地です(ちょうどセンターからホームベースを臨む角度)。昨日、ヤンキースタジアムに行く用があったので、ついでに写真を撮ってみました。

隣にある新スタジアムが2シーズン目に突入するというのに、まだ完全に取り壊されていないんですね。理由はよく分かりませんが、WTCも911から9年が経とうとしているのに、跡地はまだほとんど更地なので、こうした再開発計画には時間がかかるのかもしれません。

ちなみに、今年2月末にはまだなんとなく原型を留めていました。


ちなみに、ここは最終的には「Heritage Field」という公園になる予定です。


MLB開幕。平均年俸は1パーセントアップ

昨日MLBが開幕しました。開幕戦はニューヨーク・ヤンキース対ボストン・レッドソックスの1試合のみで、最近はMLBもNFLの開幕手法に習ってプレミアカード1試合だけをその他のチームの開幕に先駆けて実施する方法を採用しています。

もちろんこうしたプレミアカードはESPNかFOXが全国放送でオンエアすることになるのですが(昨日はESPNが中継していた)、残念ながら僕の住んでいるところはヤンキースのフランチャイズ内ということで、「MLBのブラックアウトルール」でも書いたように全国放送はブラックアウトされ、ヤンキースのローカル放送の放映権を持つYESの中継が優先されてしまうのです(YESの放送の何が嫌かって、当然ですが思いっきりヤンキース贔屓の放送になっているからです)。

ところで、いよいよ開幕したMLBですが、USA Todayの調査によると、今年のシーズン開幕時点の平均年俸は約327万ドルと、昨年に比べて1パーセントアップしました。今年は全30チーム中14チームが昨年を下回る年俸総額だったそうです。

ちなみに、チーム別の年俸総額トップは御馴染みヤンキースで、2億630万ドルと、2位のレッドソックス(1億6240万ドル)に約4400万ドルの大差をつけています。ヤンキースは内野手の年俸総額だけで8520万ドルもあるんだそうですが、これだけで下位16チームを超えてしまっています。

さあ、今年もどんなドラマが生まれるのか、楽しみです。

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マグワイア氏薬物使用告白のインパクト

日本でも大きく報じられているようですが、元セントルイス・カージナルスのマーク・マグワイア選手が過去の薬物利用を認めました。このニュースはアメリカでも大きく報じられています。
 
まずメディアの反応ですが、「よくぞ過ちを認めた。偉い!」というような肯定的な報道はほとんどありません。

理由はいくつか考えられますが、まず告白したのが公の記者会見ではなく、MLB Networkによる独占インタビューだった点。MLBNはMLBが保有しているケーブルチャンネルですから、身内みたいなものです。インタビューはマグワイア氏の“告白”を一方的に聞く形で終始しており、薬物使用に関する厳しい突っ込みは当然ありませんでした。
 
タイガー・ウッズ」でも書きましたが、こういう逃げの姿勢を取ることをアメリカ人は嫌います。

2005年3月に議会の公聴会で過去の薬物使用を問いただされた同氏は、「私は過去を語るためでなく、未来を話すためにここに来た」と発言しています。まあこれは黙秘みたいなもので、この時点で薬物を使っていたことはバレバレだったわけです。しかも、同氏は公聴会に出席するに際して、事前に刑事免責(公聴会の発言を元に刑事訴追されない)を求めていたということもあり(この要求は却下された)、ファンからの心証はあまり良くなかったわけです。

また、告白のタイミングについても、カージナルスの打撃コーチに就任するにあたり、シーズン開始時のメディアによる混乱を回避したいチーム側が、コーチ就任の条件としてマグワイア氏側に求めていたという見方がアメリカでは一般的で、これがさらに心証を悪くしています。

さらに、“告白”では、「故障からの回復を早めるために使っただけで、パフォーマンス向上のためではない」ことを強調しています。ラルーサ監督もこれを擁護している発言をしていますが、こんな発言を信じているファンは皆無でしょう。むしろ、チームと仕組んだ“出来レース”のような印象を与えてしまっています。

こんな背景もあって、アメリカのメディアは結構辛辣に批判記事を書いているところが多い印象を受けます。「ようやく過去を話す気になったのね」とか「最初から薬物使用を認めていたカンセコ選手の方がよっぽど偉い」といった、マグワイア氏を揶揄する記事も多く見かけます。

ファンの反応も、「過ちを認めたのは偉いが、彼の過去の実績が汚された」というのが一般的な反応のようです。USA Todayが「マグワイア氏の告白で、殿堂入りへの道が開けたと思うか?」という投票を行っています。告白から一夜明けた12日午前11時現在で、4000以上の投票がありましたが、以下の通り「彼を殿堂に入れるべきでない」という意見が6割以上を占めています。



マグワイア氏は、2005年の公聴会では実質的に黙秘していたために、今回の告白で偽証罪に問われることはないのですが、薬物の入手先などによってはアナボリック・ステロイド管理法(Anabolic Steroid Control Act )に違反する可能性があり、連邦政府が捜査に乗り出す可能性も指摘されています(同氏の告白では薬物の入手先などについてはもちろん言及されていない)。

ただ、同法違反の可能性という意味では、A・ロッドやアンディ・ペティット選手も過去の薬物使用を認めているため、立場はマグワイア選手と同じわけですが、2人に対して捜査が開始されたという話はありませんが。

しかし、これはMLBにとっては本当に頭の痛い問題ですね。

薬物問題で、今MLBとMLB選手会が一番気にしているのが、バリー・ボンズ選手らを巻き込んだ栄養食品会社=バルコ社違法薬剤供与事件の捜査資料の扱いです。同捜査では、MLBが2003年に罰則と氏名公表なしの条件で実施した薬物テストで陽性反応を示した104選手のリストが押収されました。

この件で捜査対象となったのは10選手だったため、選手会は司法省を相手取って「104名のリストの押収は捜査の行き過ぎで違法」と訴訟を起こしています。現在、控訴審で選手会勝訴の判決が下されているのですが、これに対して司法省は昨年11月に法務次官が直々に再審を請求するという異例の措置を取って対決姿勢を鮮明にしています。

この104名のリストに名を連ねた選手の一人がA・ロッドだったわけですが、MLBは“匿名の関係者”からのリークによって第2、第3のA・ロッドが出ることを最も恐れています。小出しにされる選手会側としては、たまったものではないですよね。だったら潔く公表しろよと思う人もいると思いますが、もともと氏名非公表が前提で行った薬物テストなので、これを破ると選手からの信頼が地に落ちてしまいます。MLBの労使協定は2012年に失効しますから、今のタイミングで結束を緩めるヘマは打てないわけです。

【関連情報】
Eye-opener: Will confession get McGwire in Hall of Fame?(USA Today)

GWS続報

昨日、GWS構想のアメリカでの報道のされかた(ほとんどスルーされている事実)を書きましたが、これは意外だったらしく、何名かの日本の知り合いから連絡をもらいました。皆さん、日米での温度差に一様にびっくりしていました。そこで、続報というわけではないですが、この日米の温度差の理由を探るヒントになりそうな話をご紹介しようと思います。

実は、昨日ブログを書いたあとにオフィスの廊下で「野球なぞなぞ」でも紹介したJerryとばったり出会いました。彼はもう80過ぎのおじいちゃんですが、往年のヤンキースファンであり、旧ヤンキースタジアムが今のリグレーフィールドのように、球場外のアパートの屋上から試合が見られたという時代(ということは、少なくとも改修が行われた1974年より前)からのファンです。

彼とトイレで会うと良く同じ話を聞かされます。「あの頃は、アパートの大家に2ドル払えば屋上から試合を見ることができた。いい時代だった。今のヤンキースタジアムのチケットは高すぎて球場に足を運ぼうとは思わない」というものです。

そんな筋金入りのヤンキースファンである彼に、GWSのことを聞いてみました。

僕: 「昨日、セリグがNPBのコミッショナーとGWSの構想を発表したんだけど、知ってた?」

Jerry: 「いや、知らない」

僕: 「WSの勝者と日本シリーズの勝者が戦って、真の世界一を決めるというものなんだけど、開催されたら見てみたい?」

Jerry: 「多分、見ないと思う」

僕: 「なんで??」

Jerry: 「だって、日本のチームのこと全然知らないから興味がわかないよ。確かに、今MLBにはたくさんの日本人選手がいるけど、彼らが日本でどのチームにいたなんて誰も知らないだろ」

僕: 「えー、ゴジラ松井がどのチームにいたかも知らないの?」

Jerry: 「知らないよ。何ていうチームだ?」

僕: 「ヨミウリ・ジャイアンツっていうチームなんだけど」

Jerry: 「聞いたことないなぁ」

僕: (絶句)

Jerry: 「日本のファンは日本のスター選手がMLBで活躍しているからMLBのことを良く知っているだろ。だから、GWSへの関心も高まるんだと思うよ。両チームのことを知っているからね。でも、MLBファンは日本のプロ野球のことは全く知らないから、GWSやっても関心もてないよ」

僕: 「!」

彼と話してピンと来たのは、多くのMLBファンが日本野球を格下に見ているのは、悪意があってそうしているのではなく、単に日本野球のことを知らないだけなんじゃないか、ということです。アメリカ人は、あまり自国外のことに興味を持たず、基本的に「アメリカ=世界一」と思っている人が多いです。だから、野球についても、恐らくは海外のことをあまり知らないために、「MLB=世界一」と思っている人が意外に多いのではないかと。

しかし、アメリカ人の面白いところは、評価したものについては手のひらを返したと思うくらいあっさりと価値を認めるという点です。こうしたアメリカ人の特性を考えると、やりようによってはアメリカ人の興味をGWSに向かせることも可能ではないかと感じます。

例えば、英プレミアリーグがプレシーズンにアジアや北米でオープン戦を行っているように、NPBもアメリカで春季キャンプをはってMLBチームとガチンコで対戦するとか、アメリカの野球ファンの間でプレゼンスを高めていけば、日本野球に対する目も変わってくるかもしれません。

グローバル・ワールドシリーズ所感

NPBの加藤良三コミッショナーがMLBのセリグコミッショナーと会談し、“真の世界一” を決定する「グローバル・ワールドシリーズ」(GWS)の創設で合意したとのこと。

【プロ野球】「真の世界一」決定戦実現へ意欲 加藤コミッショナー

 米大リーグ機構(MLB)幹部との会談を終えたプロ野球の加藤良三コミッショナーが7日、米国から帰国し、MLB側から日米王者による「グローバル・ワールドシリーズ」の開催を提案されたと明らかにした。

 就任のあいさつを兼ね、MLBのセリグ・コミッショナー、デュパイ最高執行責任者と米国内で会談した加藤コミッショナーは「セリグ氏は任期中に(グローバル・ワールドシリーズを)実現させたいと熱意を示し、真のワールドシリーズが日米だけでなく、世界にとっても重要だと強調された」と会談内容を説明した。 

 そのうえで、「クリアすべき課題は多いけれど、わたしもセリグ氏と同じ意見です。単に夢ではなく、現実の課題として検討を進めていきたい」と実現に強い意欲を示した。19日の実行委員会で12球団に報告し、具現化に向けて検討を始める。(産経ニュース)

しかし、このニュース、実はアメリカではほとんど報道されていません。かろうじて、ESPNとMLB.comが日本の報道をそのままオウム返しに「・・・と日本では報じられている」と報じている程度です。

大きな理由は3つあると思います。まず、タイミングが悪い。アメリカでは今夜大学フットボールのチャンピオンが決まるBCS(アラバマ大対テキサス大)がある上、NFLもレギュラーシーズンが終わり、今週末から開始されるプレーオフに向けた報道が過熱しています。NBAでも、ロッカールームに拳銃を持ち込んだワシントン・ウィザーズのギルバート・アリーナス選手が無期限出場停止処分になるなどの騒ぎが起こっています。シーズンオフのMLBどころではない、といった感じでしょうか。

第2に、セリグは2012年に退任を控えているためです。これはコミッショナーだけでなく、政治家なども常だと思いますが、自分の任期の最後には、必ず何か自分の功績が形になったものを残そうとします。だから、スポーツファンとしても、「ああ、セリグがまた自分の都合の良いように何か言ってるな」くらいにしか思っていないのです。

第3に、これは日本人としては悔しいのですが、アメリカのMLBファンは日本野球を格下に見ているためです。個人的には、フィールド上のパフォーマンスでは、MLBとNPBはいい勝負をすると思っています。WS優勝チームと日本シリーズ優勝チームが100回戦ったら、50勝50敗に近い数字がでるのではないかと思います。しかし、アメリカのMLBファンレベルでは、「MLB=世界一」と思っている人が多く、WBCについても「グローバル・オールスターゲーム」位にしか思っていませんから、負けても何とも思ってません。だから、GWSにしても、日米親善野球の延長くらいにしか捉えていないのかもしれません。

だいたいこんな理由から、アメリカではほとんどスルーされているGWSなのですが、個人的には非常に面白い試みだと思います。少なくとも、NPBがマーケットを広げて売り上げを伸ばすためには、国内だけでなく海外にも打って出なければならないと思いますが、その際に「日本野球は世界一」というグローバル・スタンダートを獲得しなければなりません。そのためには、MLBに“喧嘩を売る”という姿勢は必要になってくると思います。

僕は前からMLBがGWSなど受け入れるはずがないと思っていたので、今回の報道は意外でした。なぜなら、もし本気で戦ってMLBが負ければ、NPBにグローバル・スタンダードを奪われるからです。だから、報道に接した僕の第一印象も「ああ、またセリグが何か言ってるな」位のものでした。会談を行った場所もミルウォーキーということで、恐らく彼の自宅かブリュワーズの球団事務所かどこかだったのかもしれません(セリグはウィスコンシン州出身で、もともとブリュワーズのオーナーだった)。だから、この会談もMLBとしてオフィシャルなものではなく、プライベートに近いものなのではないかという印象を持っています。

逆に、仮にMLBがWGSにGOサインを出すとしたら、その理由は1つしかないと思います。金儲けです。もう少し上品に言いなおせば、市場拡大。米国プロスポーツのコミッショナーは、究極的にはファンだけでなく、法人企業や個人投資家へのリターンを最大化するためにそのスポーツのブランド価値を高める責務を負っていますから、基本的にはビジネスの論理でモノを考えます。これはWBCを見ても明らかだと思います。

ビジネスの論理でGWSの開催を目指す場合、MLBとしては当然収益を最大化しつつリスクを最小化する戦略を取るでしょうから、WBC同様にGWSのステータスも「本気の戦い」「新の世界王者を争う決戦」を口では謳いながらも、ファンの認知としてそうならないように仕向けてくるはずです。これをクリアするためにNPBにはタフな交渉が求められるでしょう。

【関連情報】
【プロ野球】「真の世界一」決定戦実現へ意欲 加藤コミッショナー(産経ニュース)
Report: MLB, Japan champs could play(ESPN)

「松井MVP」はカネで買った?(下)

日経ビジネスのコラムの最新版がアップされました。今回は、MLB戦力均衡策の課徴金制度について書いています。

■「松井MVP」はカネで買った?(下) 〜うわべだけの戦力均衡策

 これまでのコラム【「松井MVP」はカネで買った?(上)(中)】で、金持ちチームがプレーオフ進出を独占するMLBの現状を解説してきました。「持てるチーム(金持ちチーム)」と「持たざるチーム(貧乏チーム)」の格差を解消するはずだった収益分配制度が、逆に格差を固定化している現実があります。リーグから受け取る分配金という「不労所得」を当てにしてしまうために、結果として球団経営に甘えの構造を生み、そのカネが選手補強に使われていないわけです。

 今回は、これまで解説してきた収益分配制度と並び、戦力均衡を実現する柱として設置された課徴金制度のメカニズムや問題点について解説してみようと思います。

 米国プロスポーツには、「サラリーキャップ制度」と呼ばれるルールがあります。これは、各球団の戦力補強のための予算を一定レベルで均衡させるために、選手年俸(サラリー)に上限(キャップ)を設けるものです。各チームの年俸予算を一定に保つためのもので、1984年に米プロバスケットボール協会(NBA)が初めて導入しました。その後は、1994年に米プロフットボールリーグ(NFL)、2005年には米プロアイスホッケーリーグ(NHL)が導入しています。後述する理由により、MLBはサラリーキャップ制度を導入していませんが、それに代わるものとして課徴金制度を1997年から試験運用して、2003年に本格的に導入しました。

(続きはこちら

「松井MVP」はカネで買った?(中)

日経ビジネスオンラインに最新記事がアップされました。2回ものの後編の予定だったのですが、今回は収益分配制度の解説に字数が多くなってしまい、書き終えられず、3回ものに変更しました。ちなみに、次回は課徴金(ぜいたく税)制度について書く予定です。

■「松井MVP」はカネで買った?(中) 〜チームを甘やかす分配金

 前回のコラムでは、今年のMLBシーズンで、プレーオフに進出したチームのほとんどがカネ持ち球団だったことを解説しました。全30球団中、唯一2億ドルを突破する年俸予算を組み、唯一3ケタの勝ち星(103勝)を挙げたニューヨーク・ヤンキースが象徴です。プレーオフ進出の8チーム中、実に6チームが年俸予算に1億ドル以上を注ぎ込んでいました。平均年俸総額は8833万ドルだったので、「カネを使わなければ勝てない」という現実が見て取れます。

 ヤンキースは、年俸総額が3681万ドルで最下位のフロリダ・マーリンズに比べ、実に約5.5倍のカネを選手年俸につぎ込んでいました。ヤンキースは特別だとしても、年俸総額上位4分の1(7チーム)の平均(約1億3382万ドル)と、下位4分の1のそれ(約5408万ドル)を比べると、約2.5倍の開きがあります。米国で戦力均衡を最も上手く達成していると言われるNFL(米プロフットボールリーグ)では、この数値が1.5倍を超えることはありません。

 年俸総額に大きな差が出るのは、チーム収入の格差が開いているからです。大きな原因は、前回も指摘したように、多額のローカルテレビ放映権料がチームの収入となるためです。1980年代に入ってテレビ放映権料が高騰していくと、大都市チームと地方都市チームの収入格差が拡大していきました。収益分配制度が導入される直前の1995年の球団別のメディア収入(ローカルテレビ放映権収入とラジオ放送権収入の合計)を見ると、ニューヨークやロサンゼルス、シカゴなど、人口の多い都市にフランチャイズを置くチームのメディア収入が大きいことが分かります(ここでもヤンキースの収入が突出しています)。
 
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今回は、ちょっとマニアックな内容になってしまったので、日経ビジネスの読者受けはあまり良くないかもしれません。

スポーツリーグ経営での収益分配制度における分配金とは、言ってみれば国家財政政策における地方交付税のようなものです。「戦力均衡」を「行政サービスの均衡」と置き換えればイメージしやすいかもしれません。つまり、アメリカのスポーツ経営では、チーム間の戦力を均衡させることがリーグ戦を盛り上げるために必須だと考えられているように、政治でも住んでいる場所に関わらず均一の行政サービスが受けられることが求められているという点で、両者は似ています。

似ているのは、その欠点も同じで、地方交付税に依存し過ぎると、地方の自立が逆に阻害されるようにに、スポーツ経営でも分配金に依存し過ぎると、チームに「甘えの構造」が生まれ、経営的な発展が阻害されてしまいます。

「松井MVP」はカネで買った?(上)

出張などが入って間が空いてしまったのですが、日経ビジネスオンラインに最新記事がアップされました。「金持ちチームが上位を独占するMLB」などでも書きましたが、今年のMLBは結果的にビッグマーケットの金持ちチームが上位を独占する傾向が露骨に表れたシーズンになりました。今回は、MLBの戦力均衡策は機能しているのかについて解説してみようと思います。まず、今回(前編)のコラムでは、今シーズンの年俸総額と勝利数の関係をデータから分析するとともに、戦力不均衡の歴史をごく簡単にですが紐解いています。

短期決戦のPOにはチームの勢いなどの経営システムとはまた別の要素が強く絡んでくると思うので、ヤンキースが優勝したこと自体だけを声高に問題視するつもりはないのですが、個人的には少なくとも数年に1回くらいのサイクルで、どのマーケットのチームにもPO進出の可能性が見えるようなレベルでの戦力均衡が望ましいのではないかと思います。

そうでないと、やはりスモールマーケットのチームのファンは気持ちが萎えてしまいますよね。パイレーツなどは、今年で17年連続負け越しという不名誉な記録を更新しています。POにはお呼びにもかからないという状態が17年も続くのは、ファンにとってはつらいところです。

■「松井MVP」はカネで買った?(上) 〜ヤンキース、札束攻勢で頂点に

 ニューヨーク・ヤンキースとフィラデルフィア・フィリーズとの間で戦われた米メジャーリーグ(MLB)のワールドシリーズは、4勝2敗でヤンキースがフィリーズを退け、9年ぶり27度目の全米チャンピオンに輝きました。優勝を決めた第6戦では、松井秀喜選手が先制の2点本塁打を含む6打点の大活躍で勝利に大きく貢献し(1試合6打点はワールドシリーズのタイ記録)、ワールドシリーズMVPに選出されました。この偉業に日本の野球ファンも大いに盛り上がったことでしょう。米国で観ていても、同じ日本人として誇らしい気持ちになりました。

 しかし、MLB球団で突出して年俸総額の高いヤンキースがプレーオフ進出を決め、MLB球団で唯一3ケタの勝ち星(103勝)を挙げてレギュラーシーズンを終えた前後から、米国では「勝利をカネで買った」「MLBの戦力均衡策は機能していない」という批判が再燃しています。果たしてこうした批判は的を射たものなのでしょうか?

(続きはこちら

若干挑戦的なタイトルになってしまったのですが(笑)、まあ松井選手がワールドシリーズという大舞台でMVPを受賞した土台には、カネにモノを言わせた大型補強によるチーム力の向上があったわけですから、これも広い意味では嘘ではなく、まあいいかと思いました。松井選手のMVP選出を批判するつもりはありませんので、念のため誤解なきよう断っておきます。
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